アクシデント

旅の余韻に浸って

一日中雨が降り続いて冷え込んだ昨日とはうってかわって、旅の最終日は皮肉なくらいに朝から気持ちのよい青空が広がっている。

昨夜はレース後、ツアー会社による、このバンクーバーマラソンレース10周年を記念してのディナークルーズが行われた。ディナークルーズというほど、立派な船でもないけれど、バンクーバー市街の夜景を眺めながらの会食は、レース後の疲労感と心地よく揺れる船上でのアルコールとで、僕も気持ちよく酔うことができた。

充分過ぎるほどに観光もできた。レースも完走を果たした。ツアーメンバーの人たちと、また、現地の人との会話を楽しむこともできた。何もかも全てがうまくいったというほどではないけれど、大きな失敗や後悔や困惑といったもののない、順当な海外旅行として終えられそうだった。

ホテルの部屋からの光景
早朝、ホテルの部屋からの光景

クルーズを終えてから、なお、静かに旅の余韻を感じようと、冷たい風の中の夜のバンクーバーを歩いてみた。今朝もあまりに青空がきれいだったから、早朝のストリートを一周してみた。この季節のバンクーバーの街の景色が、冬の空っ風のような冷たい風のせいで、空気が澄んで透明な光に包まれることがよく分かる。

アクシデント

現在、0時40分。日本時間午後4時40分。

ツアーメンバーは成田に到着後、それぞれの帰路についている頃だ。僕らは福岡空港行きの便に乗るために羽田に向かっているはずの頃だった。

でも僕は今まだ、こうしてバンクバーの新たなホテルの一室で、帰国後に入力するはずだった5月5日のトラブェル・ログを打ちこんでいる。ツアーメンバーの中で僕と妻との2人だけ、そして他にもう一人、個人旅行を楽しんだという若い男性が、東京行きのエア・カナダ003便に乗り込むことができず、帰国を一日延期させられることとなった。

乗り込めなかったエア・カナダ
乗り込めなかったエア・カナダ

出発ゲートをくぐって今やってきた通路を、ゴルフ場にあるような電動カートに乗せられて逆向きに戻ってゆく。不思議な感覚だった。最後に乗り込もうとしたから、ツアーメンバーも僕と妻とがなぜいつまでも機内にやって来れないでいるのか理由が分からず心配しているに違いない。僕らもメンバーに説明さえできず、彼らの乗り込んだエア・カナダ機に黙って別れを告げることとなってしまった。

有無を言わさずに延期

よくあることなのかどうか、そしてその理由が何であるのかも皆目、見当はつかない。どうもエア・カナダ社側のミスによるオーバーブッキングということらしい。往路は空席の多かったバンクーバー行きエア・カナダも、帰国のこの便はGW明けということもあって満席で、予約の重複されてしまったシートには、先に乗り込んだ者の方が優先されるということだ。

「そういう状況なので、明日の同じ便に振り替えさせていただきます」という内容が(日本人通訳者によって)一方的に告げられる。困ったことになったものだけれど、「それは困るよ」という言葉は特には出てこない。「一つや二つの席くらい、空いているものじゃないの?」「2、3人くらい定員を超過して詰め込むことくらいできるのでは・・・」という根拠のない期待があった。バスじゃないけど、「補助席とか、乗務員の座る席という訳にはいかないの?」という冗談さえも。

それでも、どうしようもないらしい事情は3人ともにすぐに飲み込める。そして、まだ出発できずにいるエア・カナダ機の前で、僕らの明日のことが淡々と事務的に説明されてゆく。まあ、それはそうだ。世界中の空を、それこそ無数に飛び交っている航空ラインを、既に2時間近く出発が遅れそうになっている便を僕らのためにこれ以上、狂わせるわけにはいかない。僕らが困るといっても、事態は変わらない。


First Baptist Church
First Baptist Church

バンクーバーは治安のいいところで、日本人・日系人が驚くほどに非常に多い。街を歩けば、日本語を頻繁に目にすることもできる。北米圏の滞在には僕も慣れてきた。そういう意味で、今回、海外旅行に期待する刺激というものに欠けていたことは確かだった。

「これまで味わった経験に比べると、随分ともの足りない」と妻にも話していた。「あんなことを言っていたから、最後にこんなことになるのよ」と、指摘されてしまう。

僕もまあ、困ったことではあるけれど、今さらどうしようもないし、平凡な僕の人生でこの先そうたびたびあることではないだろうから、この降りかかったアクシデントをちょっと楽しませてもらうことにする。


 

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