供給過剰のホテルでも

憧れの職業?

今回の旅行でホテルやペンションの壁画の美しいことに感銘を受けたのだが、それにも関連して宿の数の実に多いことも印象に残った。

いわゆる景勝地、ホテルやペンションの集まるリゾート地一帯だけのことでない。拠点地、ポイント地だけでも明らかに供給過剰と思えるのに、それから駅一つ、二つ、三つ・・・いくら離れても宿が絶えない。列車の車窓から見ているとよく分かる。ちょっとした集落でも、山の中腹に立つ数件の家々が、皆、花を飾った、客を受け入れられる建物然としている。

積極的に広告看板を出すでもない。そもそも看板などという醜いものは見受けられない、宿の名前も定かでない、ただの民家であると同時に、いつでも宿泊客を受け入れられる、といった様相。

Gästehaus Anneliese
2つ星ホテルでも立派な Gästehaus Anneliese in Sölden

経営は成り立っているのだろうか? (明らかに供給過剰と思える中で)人々はどうやって生計を立てているのだろうか? とずっと心配に思っていたのだが、それはそれで一般の(一見の)観光客でなく、リピーターや通の客、登山客が長期に滞在するためのニーズがあるのだろう。

チロルのような山岳リゾート地ではハルプペンシオンという、朝・夕食付き料金設定の1週間単位で長期滞在する客が多いとのことである。

ガイドブックやトラベルサイトからでなくとも宿の選択肢は無数に、といっていいくらいにありそうである。ポイント地を外して、あえてこうした小さな集落地の宿を取るのも気兼ねのいらないフレンドリーさを楽しめそうだ。ただ、ネット上にも出てこないだろうので余程、現地事情に通じてからでないと難しいかもしれない。

Landhaus Carla
マイヤーホーフェン駅前に建つLandhaus Carla in Mayrhofen

僕らがゼーフェルトで泊まった宿も家族経営のホテルで、経営者の住む一体型の宿だった。リーフレットに写真が掲載された時には赤ん坊だった子が今、小学生くらいになっていた。懸命に努力を注いできたのだろう、4つ星評価を得たのが数年前のことのようで、フロントの壁にも証明書が誇らしげに飾ってあった。家族経営としては感心するくらいの大きさであり、非常に立派な設備であった。

勝手な推測であるけれど、こうしたチロル一帯のペンションの多さは、人々の憧れの生き方、スタイルを表しているのかもしれない。僕らの泊まった宿もゼーフェルトの町の、メーン・ストリートから一本、山側に離れた地に新しく建ったものだった。いわゆる街ナカに対する郊外のように、建設中の宿もいくつか見られ、昔からの宿に加え新参組も増え続けている様相だった。

Avita Viktoria
ゼーフェルトで泊まったHotel Avita Viktoria Seefeld Tirol

チロルの美しさと郷土愛と

さらに感心するのは、こうした多くの宿が決して商業的に張り合っているのでもないような落ち着いた様子。これだけ林立すると、他を出し抜いてでも・・・という強いアピール度が商売上は求められるのに、そういった様子が全くない。

余裕というか、どこも静かに待っている。決して自らしゃしゃり出ない。商売のがめつさが見えてきては、せっかくのチロルの牧歌的な良さも消えてしまうから。

hotel-arnold
窓辺に花を絶やさず

商売に徹するのでなく、それでも窓辺に花は絶やさず美しく。人も建物も、自らが美しい景観を作っているのだという自覚と責任感が伝わってくるのに感嘆しきりであった。


 

  Related Entries


Message

メールアドレスが公開されることはありません。