続・鉄道の旅

鉄路を快適にしてくれるスイスのシステム

スイスを個人旅行するとき、誰もが悩む割引切符。スイスパス、スイスフレキシーパス、スイス半額カード、スイストランスファーチケット、スイスカード、リージョナルパス・・・。それぞれに利点があって理解するだけで一苦労。さらにはそれらの1等か2等か。かなり悩んだ末、今回は空港〜目的地(往復)が無料とその他路線が半額となる「スイスカード」の1等を利用。

スイスカード
スイスカード 1st Class
バリデーション(手続き開始)は往路がSBB(スイス国鉄)チューリヒ空港駅で7/13に、復路がMGBツェルマット駅で7/19にスタンプ。
中央にパスポートNO.とサイン
スイス人の書く数字(左側)は独特のクセがあって、7に必ず横棒が入る。
1は逆さVの字

ほぼ全線がフリーとなる「スイスパス」と違って、スイスカードの場合、窓口で毎回、切符を買う手間はかかる。不慣れな外国で窓口に並ぶ面倒を思うと、多少、高くてもスイスパスを買ってしまおうかとも思える。それで迷ったのだが、実際には心配していたほどの手間(混雑等)はなかった。それに窓口でやりとりできる面白さも味わえた。

車両内座席の1等、2等の差はわずかなもので2等でも充分、快適で問題ない。それゆえに2等客室が混みがちになる分、1等だと空いていて余裕を持って乗り込める。1等客車はガラガラの時も多いので、グリンデルワルトやツェルマットが近付いて興奮させられる時、他の乗客を気にせず、右に左に子どものように動いてカメラを向けるのには好都合だった。

スイスの鉄道路線は改札がないことでも有名。但し、車内で車掌による検札があって不正乗車が見つかれば即、罰金。検札は時々程度かと思っていたら、今回の旅程の限りでは、必ず検札があった。でも車掌はいたって親切で、「この車両は切り離されて分岐されるから、グリンデルワルトに行くなら前の車両に移らないとダメだよ」などと優しく教えてくれる。

それから、スイスでの鉄道の旅をさらに快適にしてくれるシステムのひとつがバゲージシステム(荷物別送システム)、ドイツ語で「ライゼゲペック」。日本でのスキーやゴルフの宅配便同様、乗客とは別に荷物だけを運んでくれて、低料金で旅を身軽にしてくれる。ただ今回は、あえてライゼゲペックは使わず。ツェルマットへの移動日のシーニゲプラッテと、最終日のチューリヒで途中下車した際も、駅で荷物を預かってもらった。

途中下車の旅

これは鉄道事情とは直接、関係ないのだが、少し面白かったシステム。

シーニゲプラッテ観光を終えてツェルマットに向かう途中、インターラーケン・オストで乗り換えるときのこと。

*インターラーケンは東西両駅があって、オスト(ost)が東、ヴェスト(west)が西


インターラーケン・オスト駅
インターラーケン・オスト駅

僕らのスイスカードは1等なのに、前日、グリンデルワルト駅で買った切符がどうも2等になっている。切符を買うのも大したことではなく、行き先(for Zermatt)、片道(single)、2人分(twe persons)を言うだけのことなのだが、2人分のつもりの"two"が、"second" class(2等)と勘違いされたのか、あるいはわざわざ1等を買うまでもないと駅員が勝手に判断してくれたのか、でも、せっかく1等のスイスカードを買ったんだし、時間もあるので替えてもらおうと窓口に並んだ。

窓口に並ぶ順番制は、銀行や病院受付、はたまたローカルなJTB山口支店でさえもそうであるように、先に自動でプリントアウトされる番号札(紙)を持って待つことになる。それを知らずに空いた窓口に行くと「ダメダメ・・・(違うのよ)」と駅員にも並んでいる他の乗客にも指摘されて、初めて事情に気付く。

もちろん、僕だけでなく、インターラーケンは観光地に向かう一見の通りすがりの客ばかりだから、そんなシステムがあるとは知らずに誰もが最初は間違えてしまう。もうひとつ、さらに番号が電光表示されたら、1番から7番(5番)の窓口が分かれることになるのだが、1、2は手前にあるものの、3から先は見えにくい奥側にある。自分の番号の順になって嬉々として一番近い手前の1番窓口に行くと、「ダメ、違う」とまた指摘される。もちろん、説明もきこえず、「なんで?」と戸惑う。事情が飲み込めた頃には順番も飛ばされている。もう一度、発券番号をとって再度、並んだ。

表示は

インターラーケンオスト駅の窓口
手前が発券機、上が電光表示
3〜7の窓口が左奥にあるとは気付きにくい
  • No.83 1>
  • No.84<5
  • No.85<4

とあって、つまり、それは83番札は「右」の1番窓口、84番札は左(奥)の5番窓口に行きなさい・・・という意味なのである。いわれてみれば、考えてみれば「なるほど」と納得できることでも、ぱっと見ただけでは何の数字遊びかと虚を突かれる。僕も2度の失敗を意義あるものとすべく、新しい客には親切に教えてあげた。

インターラーケン(Intrelaken)はその名の通り「湖の間」。ツゥーン、ブリエンツ湖にはさまれた地。交通面で例えるなら、山口でいうところの旧:小郡駅(現:新山口駅)である。つまり、とりたてて見所のある地ではなく、奥座敷の山口(グリンデルワルト)に行くための基点地である。交通の要所地である。それだけに近代的なシステムだなあ、ということも実感する。何ということのない、珍しくもないシステムではあるが、絵ハガキを出すために寄ったツェルマットの郵便局も同じような事情で、このときはスマートに並べて少しだけ得意になることができた。

スイスで「鉄道の旅」を満喫したいのに有名なのが、氷河急行やベルニナ急行といった豪華急行列車の旅。今回の僕らも何とか組み入れられぬかと考え抜いたが、今回はハイキングを主目的とする1週間の滞在で、あれもこれも通り一遍、詰め込むツアーでもなかったので果たせなかった。

名高いループ橋をぐるりと廻るシーンなど、今度行くことがあったら、次は必ず、と思う。今回の旅程では、移動として主要幹線の国鉄を利用したにとどまるが、その中では、グリンデルワルトからツェルマットへの5時間の移動中、特に後半、ローヌ渓谷やマッターフィスパ峡谷を見ながら標高差400mを越えてゆく路線がスイスらしさを味わえた一番の見所であった。ベルン州からスイスアルプスの心臓部、ヴァリス州に続く路線。「ヴァリスに行かずしてスイスを語るなかれ」というのがうなずける瞬間である。

フラット化する世界、スイスも例外でなく

移動中では一番の見所、というのも、ここまで書いてきたのは、グリンデルワルトとツェルマットのスイスの2大山岳リゾート地での滞在中の観光行動。スイス国内の全てがハイジやマッターホルンの世界であったりするわけではない。

スイス入りした初日。空港に降り立って旅の始まりの興奮を覚えたのも一時。チューリヒからインターラーケンに向かう列車で、初めて外の景色を目にしたときは感動というより、かなり興醒めなものであった。スイス=アルプスの山並みと、勝手に膨らませたイメージがすぐにあ現れてくれるわけではなかった。

ベルン駅界隈
車窓からの光景
〜世界遺産のベルンでも落書きは多い〜

当然、チューリヒのような国際都市は、他の世界中の都市同様、ただの都市である。「グローバリゼーション」とか「フラット化する世界」だとかいう、まさにそのとおりである。世界中の人の移動が頻繁になればなるほど、都市は均質化してゆく。どこも似たり寄ったりになる。日本以上の金融国家だけに、男女を問わずビジネスパーソンが車中でもノートパソコンを開いて仕事に余念がない。

車窓からの風景もどんより曇っている。鉄道沿線の倉庫などには落書きもとても多い。日本でも国外でもどこにいってもよく目にする、例のスプレーアートである。チューリヒからしばらくは、目を覆いたくなるような落書き路線といっていいくらい。ベルン近辺さえひどかった。ベルンは旧市街の街並みが世界遺産に指定されている都市であるというのに、教会にもおかまいなしにスプレーが吹き付けられている。これには驚いた。意外だった。憧れのはずのスイスが・・・と、この先の旅が不安にもなった。

トゥーン湖を過ぎてインターラーケンに入る頃からようやく花や緑が美しくなっていったが、そこまでが長かっただけに、グリンデルワルト駅に降り立ったとき、「これこそスイス!」と山奥の冷涼感に包まれた感動がひとしおだったわけである。

各種乗車券
各種乗車券

グリンデルワルトやツェルマットでの観光路線、私鉄やケーブルカー、ロープウェーの乗車券はテレホンカードのような大きさ。急峻な地形に敷設された路線であるから、いずれも料金は高いが、それだけの価値はあるし、デザインもそれぞれに趣向が凝らされていて捨て難く、気が付くと財布にたまっている。



 

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