鉄道の旅

スイスだけに・・・

グリンデルワルトとツェルマットでのハイキング他、主な行動を記したのが前回まで。ここからはいくつかのテーマごとに書いてみたい。

まず、移動手段である鉄道事情に関して。

チューリヒ中央駅
7/13 空港駅を16:39発 チューリヒ中央駅を過ぎる頃

スイスは世界で最も優れた鉄道システム、交通ネットワークをもっているといわれる。恐ろしく過密なダイヤでさえ、分刻みできっちり発着時刻が守られる日本の列車システムこそ技術的には世界一、であることも確かに事実だろう。ただ、日本の場合、それが都市間を結ぶ場合がほとんどで、一方、スイスでは、これまで度々、触れたように、景勝地、観光地への移動さえも非常にスムーズである点が大きな特色である。

"スイスだけにすいすい──"。

おやじギャグでもダジャレでもなく、その利便性の良さには感動させられる。

車窓からの景色も全然、違う。日本でももちろん、ローカル線で景色のいいポイントはあるけれど、やはり「人(や貨物)の移送」が最大目的で、手段を選ばず、の醜い開発路線であることが大半である。スイスではまず、最大限、自然環境を活かそうとする。列車内から、乗客にどう景色を堪能させるか。一方では、素晴らしい風景の中を走る列車をどう、景色に溶け込ませるか。どう見えるか、と、どう見せるか──。内からと外からの両面のデザイン。双方を意識してつくっているに違いないと思わせるだけのものがある。

例えば、草原の広がる平地を走るときでも、道路と並行して走らせるのではなく、鉄道は山の中腹の斜面を走っている。平地に敷設する方がコストも安かろうのに、と不思議な気持ちになる。あえてそうしているのだろう、と思えてくるのは、その方が景観も壊さないし、乗っている側としても、車窓から眼下に街並みを見下ろす眺めとなって、胸のすくような満足感、充足感を味わえるからである。利便性の良さは出発前から話しにきいていたが、現地に滞在して実感し、こうした新たな発見にも気付かされる。

空港からの乗り継ぎもスムーズ

スイス到着初日──。チューリヒ空港から最初の滞在地グリンデルワルトまで。これも計画段階で大いに悩み、考えた。その日中に果たして着けるかどうか。日本からスイスへ直行便で行くか乗り継ぎか、の航路事情とも関わってくることだが、パターンとして多い例は、初日はまず空港駅からチューリヒ中央駅までだけ移動してその界隈のホテルに泊まるというもの。ただ今回、僕らはお金より時間を買ったつもりで、スイスまでは直行便の日航を選んだ。どうせなら初日の内にグリンデルワルトまで行ってしまいたい。着けなかったら宿もふいになるし、現地で探し直さないといけないな、とツアーなら何も悩まないことでも、こうした些細なことからあれこれ考えるのも、それはそれで旅の楽しみである。

熊の車掌がお出迎え~チューリヒ空港駅~
熊の車掌がお出迎え~チューリヒ空港駅~
(スイスは至る所にテディベア、の熊大好き国民)

チューリッヒ空港着が15:55。空港からグリンデルワルトまでが乗り換え2回を含めて3時間強。僕の数少ない経験からしても、国際便が予定通りに発着することはまれだし、世界一不便な(?)成田空港を持つ日本人の感覚からすると、空港からの乗り換えは結構、時間がかかるものと覚悟させられている。そのあたりのリスクも考えて、また、移動疲れもあるから、ツアーの多くがまずはチューリヒかせいぜい、ベルンでの泊まりとしている。

ところがこれがあっさりクリアされた。JALの便が30分早く着いてくれ上に、心配していた列車への乗り継ぎもあっけなく通過。割引切符のスイスカードのバリデーション(手続き開始)に窓口に並ぶ時間が長いんじゃないかとか、みんな同じ事を心配する(=旅行サイトのクチコミ掲示板)のだが、日航便の到着するドックからシャトルで少し移動し、エスカレーターを降りたところがそのまま空港駅になっている。バリデーションも並ぶことなく一番乗りで済ませ、余裕で1時間早い便に乗ることができた。嬉しい誤算であった。

スイス移動行程図
2006スイス移動行程図

ただ、逆に復路の便はチューリッヒ空港発がかなり遅れてしまった・・・(この点はまた別途)。それにグリンデルワルトに早く着いてしまった分、予定になかった街をぶらついてひどいにわか雨に襲われたのと空腹でもないのに食事をしたら、おまけに不味かった・・・のが第4回で書いたとおりである。

便利で親切なスイス国鉄

チューリヒ~グリンデルワルト~ツェルマットといった、主要都市間はスイス国鉄(SBB)で。グリンデルワルトやツェルマットといったリゾート地、観光地での登山鉄道、山頂への移動等は主に私鉄となるが、ノートパソコンを持参したかった理由の一つが、SBBのサイトをはじめとして私鉄でも時刻表の充実している点。日本でもJRサイトは無論、乗換案内や駅すぱあと、駅から時刻表・・・等で列車時刻は調べられるが、これらサイトの親切さ、分かりやすさが格別のもの。

SBBのサイトでは出発地、目的地を頭文字から数文字(かつ、多少、スペルはいい加減でも)入れれば簡単に候補が出て調べられる。トップページはグーグルに劣らず極めてシンプルだが奥は深い。特に感心させられたのが、発着番線(プラットホーム)までもが分かること。日本では降りる直前のアナウンスまで分からない。列車のどちら側のドアが開くのか、次の乗り換えのために何番線に向かえばいいのか、急いでいるときなどこれらは非常に大切な情報なのだが、当然、僕はアナウンスがきこえないので、落ち着かない。その他、食堂車から、ミニバーがついているかどうか、といったこと等も分かる。

SBB(スイス国鉄/English表記)

timetable
言えば発券してくれるtimetable

パソコンを持って行かないことにした分、移動区間のおおよその時刻をプリントして用意した(簡単にMy timetable(オリジナル時刻表)が出来上がるシステムになっている)が、このおかげで旅の移動もスムーズに行えた。また、窓口で申し出れば、目的地までの便、時間や乗り換えが一目で分かるタイムテーブルも発券してもらえる。空港駅では、客が一番、不安な状態を分かっているせいだろうか、何も言わずにそうしてもらえたことに気をよくして、グリンデルワルトからツェルマットへの移動日(当日朝に慌てないよう前日夕方)には、8時半発と9時半発の2通り出してくれ、と遠慮せずにお願いできた。シーニゲプラッテで1本ずらしてすんなりと対応できたのも、このあたりのサービスのおかげである。さすがは観光立国。何かと無愛想で不機嫌なJRにも見習ってほしい。

日本同様、時刻の正確さが売りのはずでも、時には小さな遅れもある珍しいケースにも遭遇させられた。ツェルマットへの移動中、シュピーツ(Spiez)での乗り換え便が10分遅れたため、ブリーク(Brig)での乗り換えに間に合わなかった。時刻表で、Brig駅の表示が、<Brig>と<Brig MGB-fo/bvz>の2通りあるのに気になっていたのだが、Brig駅はSpiezからのプラットホームとZermatt行きのそれとがかなり離れている。JRや私鉄、地下鉄の多数、乗り入れる東京で珍しくない、同じ駅名でも別の路線になるように、Brig駅もいったん改札を通り出て道路をわたったところにツェルマット行きの乗り場がある。時刻表をよくみると確かに親切に「walk 7min」とある。

MGB路線となるブリーク駅
MGB路線となるブリーク駅
駅名表示板もSBB(国鉄)は青だがここでは赤

スーツケースを押しながら懸命に走ったが、Spiezで10分遅れていたのが響いて寸前で間に合わず。僕らだけでなく、乗り換え組は皆、まさに列車が去って行く姿を呆然と眺めるしかなかった。スイスでは、乗り込もうとする人がいる限り、必ず待ってくれるときいていた、実際にどの列車でも車掌は本当に人が良くて親切であることを実感したのだが、ここではSpiezからの遅れに合わせてくれず、無情に発車したのが意外だった。後発は14分後でツェルマット着も30分後れで済む程度なのだが、他のあらゆる路線がきっちり、本当にスイスイと移動できただけに、逆にこの程度でも目立つくらいであった。


参考:帰国後のお勉強

  • MGB(=Matterhorn Gotthard Bahn) マッターホルン・ゴッタルド鉄道
  • BVZ(=Brig Visp Zermatt) ブリーク・フィスプ・ツェルマット鉄道
  • FO(=Furka Overalp Bahn) フルカ・オーバーアルプ鉄道

それぞれに私鉄で、FOとBVZが統合してMGBになったよう。今回は氷河急行にも乗っていないのでぴんと来ないが、FOといって分かるのは、事情通の鉄道マニアくらいのようで、スイス鉄道がファンに愛される所以でもある。

BrigからZermattへの路線も私鉄だった訳で、シーニゲプラッテ鉄道はさすがに分かっていたけれど、こんな風に国鉄との乗り入れがある私鉄路線でも全く意識せずに(知らないまま)双方の駅で切符が買えてしまう。乗れてしまう。


 

  Related Entries


Message

メールアドレスが公開されることはありません。