ハイキング〜ユングフラウ編2

大きな峠と小さな峠

2日目──

駅前のバス乗り場から、村内バスでグローセ・シャイデックへ。一般車進入禁止の細い道を大きく蛇行しながら上ってゆくと、秋吉台のカルスト高原のように、緑の中に白い岩がぽつんぽつんと現れてくる。バスはぴったり満員。切符売場で人数分の発券しかしない、乗れなかったら次発を待てということだろうか。僕らの後ろの席に座っていた若い外人男性2人がひどく興奮してうるさかった(らしい)。バスはリフトやゴンドラよりも、列車よりも、同じ目的を持った人々を箱の中に詰め込んで運んでくれる分、なぜか楽しい気分にさせてくれる。

黄色い車体にエーデルワイスの村内バスでグローセ・シャイデックに到着
黄色い車体にエーデルワイスの村内バスでグローセ・シャイデックに到着

終点のグローセ・シャイデックまで乗る人よりも、途中で降りる客が意外に多く、各人、思い思いの予定コースがあるようである。グローセ・シャイデックはクライネ・シャイデックと違って、ひっそりとした佇まい。ヴェッターホルンを目の前に眺めてから、歩いて行くコースは、標高200m近くにあって、平地に近いような広々とした草原に色とりどりの花が咲き乱れる。途中、放し飼いの牛の群れの中も通り過ぎる。スイスのお土産としても有名なカウベルが首に取り付けられている(きこえなが、カランカランと鳴っている?)。

グローセ・シャイデックからの眺望
グローセ・シャイデックからの眺望

ここからフィルスト展望台までを歩く。結構な距離で、前後に人もいなかった(僕らの歩行速度が遅いのであっという間に追い抜かれ、見えなくなってしまう)が、時間の制約があるわけでもなし、ゆっくりとただ、歩いた。ちなみにクライネ・シャイデックとは「小さな峠」、グローセ・シャイデックが「大きな峠」の意。

メンリッヘン、クライネ・シャイデック、フィルスト、グローセ・シャイデック・・・と、主だったところには足を運ぶことができた。グリンデルワルトはリピーターが長期滞在する地のようで、出発前には、僕もグリンデルワルトだけの滞在も考えたくらいだったが、あっけなく1日半で考えていたポイントは訪れることができた。もう1カ所、是非、行きたいのはシーニゲ・プラッテ。午後からここに行くことも考えたが、往復の移動だけで結構な時間がかかりそう。明日のツェルマットへの移動中に寄ることにして、午後は、昨日、感激したクライネ・シャイデックへ再び。今度は登山列車で直接。

遠くに見ると模型のような山岳列車
遠くに見ると模型のような山岳列車
クライネ・シャイデックにて

ユングフラウヨッホに行かずとも、何か、ここは居るだけでも静かに感動できる場所だ。四つ星ホテルも建っているくらいで、目の前にアイガーがそびえていながら威圧感はなく、ぐるっと周囲が変化に富んでいて、幸せな気分にさせられる。ここからヴェンゲンに抜けるハイキングコースをほんの少しだけ、ハイキングというほどでもなく、草むらの中を逍遥するように楽しんだ。縦に並んで小道を行くグループのやがて小さくなる背中や、駅にゆっくりと到着する列車の光景がとてものどかで、草の上に寝そべっていつまでも時を過ごしたい地である。

シーニゲ・プラッテへ

3日目、グリンデルワルトの最終日。心残りは特になく、むしろ次なる地、ツェルマットへの期待感が高まっている。移動の途中、シーニゲ・プラッテへ寄るために、荷物(スーツケース)をヴィルダースビル駅で預けられるかどうか。昨夕、グリンデルワルト駅で念のため、きいて「OK」との返事をもらっておいた。・・・が、観光客の押し寄せるグリンデルワルト駅のような主要駅にある荷物預かりとは違って、ヴィルダースビル駅のは、ただのコインロッカーだった。一見、入らなそうに見える。「キャリーケースくらいならともかく、大型のスーツケースは無理では・・・」と思えたが、意外にもすっぽり入った。やはり、場所柄、そういう風にできているのだろうし、駅員も気さくに腰を上げてくれた親切が嬉しかった。

小さな駅だがホームには既に多くの観光客が並んでいる。ここで有名なのはテディ・ベアの描かれた列車だが、僕らの乗ったのは進行方向に垂直に座席が置かれるベンチシートタイプ。急勾配をものすごくゆっくりとコトコトと進む。車内にはテディ・ベアがぶらさがっている。

シーニゲプラッテ山頂
シーニゲプラッテ山頂

このあたりは、後日、鉄道事情編でも触れられたらと思うのだが、速く進むだけが脳じゃない、スローな速度での長い時間が、車内で乗り合わせた見知らぬ人とのつかの間の親しみをももたらしてくれる。僕らは夫婦ともスモールサイズなので、5人掛けと思われるシートに6人が詰め込まれる。対して、向かいは犬を連れたおじさんがいるので4人が悠然と座っている。なんか不平等・・・。でも、犬が伏せていることで何かなごめる雰囲気になってくれる。おじさんも愛犬をこのボックスのメンバーに認めてもらおうと、芸を見せてくれる。隣の女性は、僕がきこえないことを見て取ったのか、手話のような手振りで「暑いね」などと話しかけてきた。

到着したシーニゲ・プラッテは、グリンデルワルトを後にしつつ、グリンデルワルト(近郊)で最も感動した場所となった。駅を降りてすぐの植物園よりも、やはり歩いての眺望を楽しむ。山頂までのハイクはおおよそ30分。最初、分岐点を左に進んだら見通しがなくこの先がどれくらいか分からずに引き返して、右の道を進んだ(帰りはこの、左を通ったが、右のコースが眺望の開けたコースでおすすめ)。山の斜面には明るい花が咲き乱れていて、ここはハイキングもいいが、ピクニックという言葉がふさわしい、気持ちの楽しくなれるコースである。山頂から見下ろせるのはインターラーケンの街並とブリエンツ、トゥーンの両湖。

最初はちょっと雰囲気だけ味わうだけのつもりだったが、ツェルマットへの便を1本ずらして、展望台レストランでビールと昼食をとりながら、ゆっくりと眺めを堪能してから後にした。


 

  Related Entries


Message

メールアドレスが公開されることはありません。