帰路にはいつものハプニング

チューリヒ線、最後の夏

鉄道事情についても触れたついでに、機内事情についても。

まず往路、7月12日19:00発羽田行き。

JALの機内誌『SKYWARD』7月号がちょうど特集でスイスを取り上げている~「スイス チーズ王国の静かなる饒舌の旅」~。3つある中の、他の2つがハワイと沖縄であるように、夏休み入りしての関心を引くためのもの。スイスに向かう僕らにはこれ以上なく、タイムリーな記事である。

zermatt_festival
ツェルマットのちょっとしたお祭り

翌日、成田発。以前(第17回)触れたように、日航便は今夏からチューリヒ線が運休となったため、最後の夏の便。

ネットで予約した座席は右側に3つ並ぶうちの通路側2席。ちなみに真ん中の山の席はどこかのツアー団体。中高年に人気の地、ときいていたとおり、機内の乗客の年齢層は概して高い。

世間は狭いもの

僕の右隣も年配の男性。1人なのはどうしてだろうか? 荷物を足元に置こうとしてフットレストの調整に手間取っていたら、ごく自然に関心を寄せてくれるなど、人の良さがすぐに感じられた方であった。すぐに話しかてこられる。たまたま座席が隣になっただけの見ず知らずの方としては珍しく、お互い、話が進んだ。

スイス国立博物館
スイス国立博物館

きいてみると、スイスにいる友人を訪ねに行かれるのだという。手配が遅かったので、同行の友人が左翼の窓側席と、2人が両サイドに席が離れてしまったらしい。まあでも、僕のボストンからの帰り道がそうであるように、案外、連れと離れた方が、未知の人と話せる楽しさはある。特に機内では動けないから、席は運命的である。

右(窓側)の男性を見て、左(通路側)の妻の通訳を見て・・・での会話なのであるが、すぐに僕はこの男性の話しやすさを感じ取ることができた。それは人柄もあるし、口の読み取りやすさも大きかった。

読話・・・相手の唇の形で何と言っているのかをつかむこと。何十回見ても分からない相手と、読み取りやすい人とは、はっきりと分かれる。普通、男性の方がもごもご・・・と話す人が多くて、珍しいなと思っていた。もちろん、最初からずけずけと素性をあからさまにするわけではないが、打ち解けて色々な話ができてゆくうち、この方は学校の教師をされていて、聾学校にも勤務されたこともあるのだという。それで、自然と聾児向けの口の形になるわけだ。僕に関心を寄せられたのもそのせいが大きかったのだろう。

しかも、住まいはお隣(広島県)の方。広島の聾学校には、僕も岩国に住んでいたとき、一度、行ったことがある。逆にこの方は大学時代を山口で過ごされたのだという。「あの辺りに住んでいる」・・・など、お互いが山口も広島もよく知っている、僕もかつて教育委員会事務局で先生らと仕事をしたこともあるから、ちょうど幹部先生らの仕事の事情も察せられて、話は弾んだ(広島の事情は有名だし・・・)。

スイスのご友人、というのが同僚で現地日本語学校の校長に派遣されているのだという。当然、国(文科省)からの代表で派遣されているわけで、相当、優秀な方なのだろうと察せられる。話していてもこの先生の人柄からご友人のことまで充分、納得できた。

機内での映画も愉しめたし、早速、ワインやビールを飲みまくって浮かれていたが、行きの機内ではこの方のおかげで、チューリヒまでの長い道中、楽しい時間をもつことができた。

帰国はまたトラブルか・・・

帰国便は、7月19日17時55分チューリヒ発のはずだったのだが──。

前回、記したとおり、空港に到着する手前のチューリヒ中央駅で途中下車し、最後の数時間を楽しみ、いよいよスイスの全てを終えて帰国便となる空港駅へ向かう。

成田行き17:55が19:45に遅れ
成田行き17:55が19:45に遅れ

到着して、チェックインゲートに進むと、ところが、時刻ボードに変更の旨が表示されている。ごったがえす成田と違って、カウンターもガラガラで不思議に思っていたら、到着便の遅れとか機材の故障とかで、出発は1時間50分の遅れになるという。

飛行機の出発遅れは珍しいことではないし、国際便ではいつものことだから「アンラッキー」くらいにしか思わず、当然、もっとずれ込むだろうな、と思っていたとおり、結局、出発は2時間10分遅れの20:05発となった。

行きは30分早く着いたから、合わせて2時間40分、スイスでの滞在が延びたことになる。僕がフルマラソンを一走りしてこれるタイムだ。

それはともかく、遅れると分かっていたらベルンにも行けたじゃないか・・・。

「はたして成田~羽田~山口への帰り(乗り継ぎ)が大丈夫か?」という心配はもう、日本に着いてから考えることとして、バンクーバーの経験もあるし、延びた滞在時間をしっかり楽しもう、と心を決めた。補償としてもらえたのは15CHF(スイスフラン)のクーポン。ありがたく最初はBeer&軽食、もう一回はCake&Coffeeに使わせてもらった。

さらに予想外の補償

何かとトラブル続きで経営も心配されている日航。でも僕は個人的には好印象を持っている。経営陣、上層部のごたごたはともかく、少なくとも発券カウンターの職員や客室乗務員や・・・の態度は丁寧で好感が持てる。相通じるのか、機内に乗り込んで驚いた(喜ばされた)のが座席。

チェックインで発券された搭乗券の僕ら2人の席は9H、9Kとなっていた。「事前にネットで予約していた座席番号と違うが・・・」。何より、HとKでは2人の席が離れてしまうのではないか、と不審に思って尋ねたら、問題はないという。

それでなくとも空の旅など多くはない自分に、ビジネスクラスやエグゼクティブなどは、生涯、縁のない世界である。JALの便のビジネスクラスは、カプセルタイプのそれは豪華なフルフラットシートであることを(知りたくはないが)知っていた。ツアーでこの「リラックスシートプラン」を申し込むと、追加料金だけで25万円! 「どんな種類の人間が乗るのだろう?」と、まさに「格差」社会を象徴する「階層」に関心を持って、先に乗り込む乗客らを眺めていた。

リラックスシートプラン
リラックスシートプラン

エコノミーの搭乗が始まってから乗り込んで、先頭のビジネスクラス部分を通過する。エコノミーの部分で番号を確認しようとすると、20番から始まっている。「あれ?」と戻ると、9番はビジネスであった。

「何かの間違いでは・・・」と一瞬、思ったが、「(これが)出発の遅れへの配慮なんだな」ということも次の瞬間にはすぐに飲み込めた。これもありがたく、人生最初で最後に違いないビジネスクラスを堪能させてもらうことにする。

見ると、周囲も家族連れ、若い男1人、若い女性2人が同じ、おこぼれ組のようである。最初、若い男性と女性2人がエグゼクティブとして先に機内に乗り込もうとするとき、「なんであんな若い奴らが・・・」と思っていたのだが、このせいだったのである。

出発が遅れたことで、キャンセルがいくつか出たのか、あるいは最初から少し余裕があったのか。とにかく、嬉しい誤算であった。


 

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