狂王の遺したもの

「城」ブルクからシュロスへ

今回の旅は城をテーマにしたものではなかったが、図らずもいい勉強ができたのでメモ。

ノイシュヴァンシュタイン城やホーエンシュヴァンガウ城、リンダーホフ城というときの城はドイツ語でシュロス(Schloss)。ここに来る前の最初に訪れたローテンブルクとザルツブルクのブルク(Burg)も城を意味するドイツ語で、両者は城の性格、時代を表している。

中庭から見上げるノイシュヴァンシュタイン城
城内ツアー前、中庭から見上げるノイシュヴァンシュタイン城

古い方のブルクは要塞のような城で、ローテンブルクのように城壁に囲まれた街全体が一つの大きな城をなしている。小高い山の上や川に面した崖の上など攻撃されにくい場所にあって、あくまで戦争用、軍事拠点としての性格が強い。ザルツブルクのホーエンザルツブルク城塞然り(ザルツブルク自体が塩(Salz)の城(Burg))。

ミュンヘンからも近いアウグスブルク(Augsburg)はローマ皇帝アウグストゥスの名を冠しているとおり、紀元前にローマ人により築かれた町でドイツ最古の都市の一つである。こうした具合に街自体が城であったことからドイツ近郊にはブルクと名の付く地名が多い。

ホーエンシュヴァンガウ城
王が幼少期を過ごしたホーエンシュヴァンガウ城
Schloss Hohenschwangau

戦闘用から美の追究へ

時代が変わり、住むための城という性格の強くなったのがシュロス。シュロスはまだ戦闘設備の側面も残して山の上に立つものが多いが、さらにその後、無防備になって町中に建てられるようになったのがレジデンツ(Residenz)でありホーフ(Hof)といった宮殿である。

城 (カフカ小説全集)
城(カフカ小説全集)

ノイシュヴァンシュタイン城は既に19世紀後半でありながら、城としての機能は低く、どこまでも王の中世趣味に凝った夢を形にした作品であり、それゆえに美しい。フランツ・カフカ(1883-1924)の代表作「城」の原題も(Das Schloss)である。


ノイシュヴァンシュタイン城のそのため息の出るほどの美しさは、よく知られているように、ディズニーランドの眠れる森の美女の城のモデルとなった。シンデレラ城のモデルはまた別というが、いずれにしてもノイシュヴァンシュタイン城の面影はなお強い。

また日本アニメの最高傑作、ルパン三世・カリオストロの城も然り。

中世への憧れからロマンティックな夢幻世界の再現に17年の歳月と莫大な工費をかけたが、ノイシュヴァンシュタイン城はついに完成せず、精神を病んでいると王の座を追われて謎の水死を遂げた。

「狂王」と呼ばれた哀れな最期であったが、中世騎士道物語に憧れた築城熱は、後世、まさしく「物語」の中に幾多も再現されることとなった。影響を及ぼし続ける立派な作品を遺せて満足だったろうか。

ホーエンシュヴァンガウ城
1990年 アナハイムのディズニーランドにて

 

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