リンダーホフ城 人間嫌い王の隠れ家
天気も好転してくれた日帰りバスツアー
date | journey |
---|---|
7月25日(日)
![]() |
8:30 München --![]() ![]() -- ![]() ![]() -- ![]() ![]() |
出発前、日本語ガイド付きにするかどうか迷ったノイシュヴァンシュタイン城ツアー*。だいぶ料金の高くなる上、運行日が僕らの滞在中は日曜しかなく、滞在中の天気によって出発を決められないリスクを抱えつつ、祈るようにして申し込んだ。
天気ばかりはどうしようもないが、今回の旅行は結局、滞在5日間中の毎日、傘が必要だったほどに不安定な天気に見舞われた。特に前日のザルツブルクは冬かと思えるくらいの激しく冷たい雨が不運だったといえばそうなのだが、それだけにこの日朝、目覚めてトイレの窓から見えた青空には「おい、晴れてるよ!」と興奮して叫んでしまうほどの嬉しさだった。
人間嫌いの王の隠れ家、夢の世界
ツアー名は代表的なノイシュヴァンシュタイン城を冠しているけれど、このツアーはルートヴィヒ2世の建てた3つの城のうち、方向の逸れるヘレンキームゼー城以外の2つと、幼少期を過ごしたホーエンシュヴァンガウ城を見ることができる。
最初に訪れたのがオーバーアマガウの手前にあるリンダーホフ城。太陽王ルイ14世を崇拝したルートヴィヒ2世が、ヴェルサイユ宮殿のトリアノン宮に範をとって造らせた。王が手がけた3つの城の内、唯一、完成した城であり、最もよく滞在した。

バスを降りて5分歩いた森の中に現れるこの城は、もとは王の父が狩りのために使っていた別荘のあった場所で、ミュンヘンに失望した王が世事を離れ引きこもるのに格好の場であったわけだ。城というには小さい規模で城塞としての機能はない。あくまで王一人のための優雅な城館であり、客が招かれることもなかった。
食事中、召使いにさえ会わずに済むよう1階から2階へ料理のせり上がってくる「魔法の食卓」、館内においたルイ14世、15世、マリー・アントワネットらの像に語りかけて時を過ごすなど、外界と遮断して王の夢の世界を実現する空間であった。
個人的にはノイシュヴァンシュタイン城よりも感動
小ぶりな庭園も見事で城の周囲がパートによってイギリス式、フランス式などに分かれており、窓からの眺望も計算し尽くして造られていることがよく分かる。

バロック様式の外観に内部は絢爛豪華なロココ調の装飾で埋められている。紫、バラ、青の部屋と各部屋ごとにムードの変わる調度、王のファンタジー趣味がうかがわれる鏡の間など、小さな城ながら内部は飽きることのないつくりとなっている。「ドイツものしり紀行」の著者は「時間がなければ、この城は庭から眺めるだけが華かも」と書いているが、山に溶け込んだ美しい構図の城と庭園はもちろん、内部の造りにも目を見張るものがある。写真撮影不可なだけに、是非とも見ておきたい。
僕はノイシュヴァンシュタイン城よりもむしろ、こちらのリンダーホフ城の方にずっと魅かれた。スケールの大きさから歴史的、建築的な価値はノイシュバンシュタイン城に到底かなわないだろうが、ここを見た後ではノイシュヴァンシュタイン城の(外観も内部も)雑さが見て取れてしまった感じだ。王がここを最もよく利用したろう訳も、山の中に見事に調和した作品としての出来映え、その完成度の高さを王自身が非常に気に入っていたからだろうことがよく分かる。

スポンサーリンク