あとがき


目次ページに記したように、この旅行記はある団体機関誌に計14回、毎月、寄稿していたものを掲載したものとなっている。今回、webページに掲載するにあたり、最後2回分は特に長かったので、それぞれを2回に分けて掲載した。その頃から、いつかホームページに掲載することを念頭においていたし、実際にホームページを開設した後も、テキストはあるからいつでもその気になれば掲載できると思っていた。けれども、世の常がそうであるように、「いつでも掲載できる」安心感は「いつになっても掲載しない」怠惰をもたらしたまま、時が過ぎていった。

そんなとき、Nさんとのメールのやりとりの中で、僕のきこえないという障害のことに話が及んだ。最終回にも登場するNさんとは、その後もずっとメールを交わし続けて今に至っている。何度目かのメールで僕のホームページを紹介した(今なお、誰に対して紹介する時も非常に恥ずかしい)のだが、Nさんは本当に親切な方で、「ボストンでのツアー中、ゴール後に話しかけて初めて金子さんの耳がきこえないことを知ったけれども、他の人の話が分からないと困ったのではないですか?」ということをその後にメールで言っていただけた。そして、「きこえない」という障害がどのようなものなのかを、非常な興味を持って理解してくれようとする姿勢をみせてくれた。

旅行記12で「宴の中にいて酔えないろう者」について述べたけれど、僕がお願いしたわけでない、この旅行記をまだ掲載しようとする前に、Nさんはそうした僕の事情を察してか、レース後のあの打ち上げの時にメンバーの一人一人が述べたスピーチの内容を、覚えておられる限り全て僕に教えてくれるという好意をいただけた。メンバーそれぞれのユニークな、また感動的なエピソードというものがあったことなど、Nさんからメールできかされるまで僕は全く知らずにいた。「へえ、そうだったの!」と1年半後にNさんから知らされて、僕はまさに目からうろこの落ちる思いであった。僕にとってこうしたことは毎日のことで、別に今では何ともないものと思っている。それでも後になって知らされるとやはり、その場にいて知ることができない、きこえない自分というのはものすごい損なのだなあ、という思いを強くさせられた。

ボストンスナップ~ゴール前
ボストンスナップ~ゴール前

Nさんにきかれたボストン滞在中の僕の思いを説明するには、同障者に読んでもらっていたこの旅行記がまさにうってつけのもの。それでようやく僕もこの旅行記をwebにアップすべく重い腰を上げることができた。そうしていざ、始めてみると、紙媒体の機関誌とは異なり、webページではスナップ写真の画像を美しく再現できることの喜びもあって、楽しい旅のことを再び思い出すことができるという恩恵も得られることとなった。僕にそのきっかけを与えてくれたNさんには、ここにあらためてお礼の意を表したい。Nさんはその後も全国各地を、また、海を越えて楽しく走られており、最近では盲人ランナーの伴走練習、そしてレース出場にも関わられるようになってさらに忙しくなっておられるようである。僕もまたお会いできることを楽しみにしている。


 

  Related Entries


Message

メールアドレスが公開されることはありません。