ボストンという町

建国の地、ボストン

ボストンは、レンガ造りの建物、石畳など昔の面影を残す、風情ある町である。 ニューヨークからおおよそ240キロ北に位置しているが、世界一の大都会であるニューヨークとは一転した味わいを見せてくれる。

ボストンスケッチ~寺院
ボストンスケッチ~寺院

クラシックな町並みといおうか、アメリカでありながらアメリカ的でない、ヨーロッパ的な光景がここかしこにみえる。街の中に古い教会が多く、空に突き刺すかのように尖った先の塔があちこちにそびえたっている。時代の新旧と、文化とが混在している。

それもそのはず、ボストンはアメリカ建国の舞台となった地である。

アメリカ発祥の地として知られるプリマスは、ボストンから南西65kmに位置している。ここに1620年、メイフラワーII世号に乗って渡ってきた清教徒(ピルグリム・ファーザーズ)たちが移民してきた・・・・・・といえば、世界史の授業を思い出せる人もいるだろう。本国イギリスは彼らに植民地としての自治を認めつつも、度重なる重税が植民地人の不満を募らせた。住民の怒りが頂点に達して引き起こされたのが、1773年の"ボストン茶会事件"であり、この事件を契機に、1776年のアメリカ独立へとなだれこんでゆく。

7月4日がアメリカ独立記念日であることはよく知られた事実であるが、実は、ボストン・マラソンもこのアメリカ独立に由来している(詳細は後述)。 ニューイングランドと呼ばれるアメリカ北東部の6州が、アメリカ初期のおもかげを色濃く残しているのもこの訳で、その中心都市マサチューセッツ州ボストンが、同じく歴史という共通点を持つ京都と姉妹都市を結んでいるわけもうなずける。

──旅に出ると、こんな具合に賢く(・・・なったような気に)させてくれるのがいい。

学術都市ボストン

当然ながら、歴史豊かな町並みには多くの大学が集まっている。ボストン・ユニバーサティ、ボストン・カレッジ、また、チャールズ・リバーを挟んだボストンの対岸に位置するケンブリッジにはハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)もある。自然に、学生が多く、アカデミックな雰囲気の漂う町となっている。

日本人学生も多いし、企業、官庁から留学して来ている者が学ぶ大学院など、世界中からトップレベルのエリートらが集まっている。自分のレベルは差し置いて、夢みたいなことを言わせてもらえば、こんなところで僕も学びたかったなと思う。

大西洋に注ぎ込む、町を流れるチャールズ・リバーのゆるやかな景色がまたいい。日本はその国土ゆえに急流が多いのだと、教科書で教えられたとおりのことが、広くおだやかなこの河の流れを見ているとよく理解できる。一日中、河の流れを見ていても飽きないようなのどかさがあり、それは、穏やかな夕暮れの海岸に沈む太陽のように、見ているだけで心の休まる光景となっている。河の流れ同様、ここでは、ときもゆるやかに流れてゆくようだ。

ボストンスケッチ~チャールズリバー
ボストンスケッチ~チャールズリバー

アメリカという国土はいたるところが緑に覆われているけれど、このチャールズ・リバーももちろん、河川敷は見事に整備された、見ていて胸のすく風景であり、市民の憩いの場所となっている。

川の上でボートを漕いでいる姿がとても絵になる。

"レガッタ"という競技をご存知であろうか? 縦に長く、息を合わせてオールを漕ぐ、フォア(4人)やエイト(8人)というやつである。ハーバードをはじめとする学生達であろうか、川の上を進むレガッタが、これまた遠目にはゆっくりと流れてゆくのが見える。映画に出てくるそのもののシーンで、ため息のもれるほど美しい。

今回の旅の良さは、このボストンの町並みと雰囲気とに負うところが大きかった。

レッドソックス

ボストンで今、有名なのは、何より野茂の所属するボストン・レッドソックスであろう。

ボストン・レッドソックス
ボストン・レッドソックス

野茂は、今回の僕のツアー直前に、メジャーで史上4人目の両リーグを通じてのノーヒット・ノーランを成し遂げたばかりであった。また、レッドソックスには野茂の他にも大家投手がこれも今期は活躍している。さらに、今年の大リーグは、イチローや新庄や佐々木の活躍がすごい。日本人の能力も間違いなく見直されたろうと思うが、野茂と大家を抱えるだけに、今回のボストン・マラソンも日本人選手が歓迎された・・・、とまではさすがになかったけれど。

マラソン前日の日曜日も、レッドソックスVSニューヨーク・ヤンキースという超スペシャル黄金カードが本拠地フェンウェイ球場(これもアメリカ最古の球場)であったのだが、このときに何と野茂が先発した。本拠地での日曜日のデーゲームで宿敵ヤンキース相手に先発することでわかるように、このときの野茂はチームのエースの座を不動のものにしていた。

残念ながら、今回ばかりはその予定もなかったし、レースを翌日に控えていたから観に行けなかったが、すぐそこで開催されているゲームをTV観戦するのもつらいものであった。ツアーの中には、見に行った猛者もいたらしく、ダフ屋から買う入場券もかなり高かったという。

今、特にイチローの活躍するシアトルでは、大リーグ観戦ツアーによる日本人観光客が急増し、町の経済を潤しているというが、少なくとも、このとき、ボストンを訪れていた人にとっては、野茂の登板と、翌日のボストン・マラソンとを続けて観戦できて、かなり幸運だったはずである。

ボストン美術館

その他にボストンで有名なのは、小澤征爾氏で有名なボストン交響楽団と美術館。きこえない自分には縁がないので前者は省略するが、<Museum of Fine Arts>(ボストン美術館)には行って来た。

「世界有数のコレクションを誇る」「ボストンを訪れる一番の楽しみ」、というふれこみに偽りはなかった。美術にそう興味のない人間でも間違いなく感動するだろうと思う。自国のアメリカという範疇にとどまらない、ヨーロッパ、アジア、エジプトまで網羅する、世界各地のものすごい量の、そして、質の高い作品が惜しげもなく展示されている。

各階で東洋、日本、エジプト、ギリシャ・ローマ・・・、と100以上のギャラリーが「○○の部屋」と区分けされていて、迷子になりそうなほどである。各部屋はもちろん、世界各地の建築様式を取り入れたつくりになっていて、当然といえば当然過ぎるが、美術館の建物それ自体が立派な芸術作品となっている。

尾形光琳、狩野永徳らの教科書で見た作品の実物を初めてこの目で見る機会を持てた。また、歌麿、北斎、広重といった浮世絵は日本でも見られない、日本以上の収蔵品だという。日本画の部屋はもちろん、日本建築の静かなたたずまいとなっているし、その部屋に続く階段も日本の欄干に付いている、あれは何といったか? 烏帽子の形をしたものもきっちりとついていた。

エジプト美術のコーナーでは、いわゆるツタンカーメン系統の彫像を見て、ふと、よく似たTさんを思い出してしまった。一部に複製もあるのだけれど、彫像に限らず、本物が、手を伸ばせば触れられる位置に置いてあるのも日本にはないことだ。

圧巻なのはやはり、印象派を中心としたヨーロッパ絵画の部屋。ルノアール、モネ、ピカソ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホの大作がずらりと並ぶ。人類の生んだ、天才画家達の競演である。日本で開催される著名な美術展は、たいてい、決まった順路を人込みに押し流されてしまうものだが、ここでは、朝一番に出かけたおかげで、偶然、他に誰も居ない1人の時間を持てた。

たった一人で、人類の芸術の集積とも呼べる大作に取り囲まれていると、めまいがして卒倒してしまいそうなほどであった。一度ではとてもではないが全てを見尽くせない分、せめて、印象派の名画のエネルギーを浴びようと、ここでしばらく立ちすくんだ。

しばらくすると、ツアーの団体客も入ってきて、なにやらガイドの説明もなされている。こんなところにまで添乗員付きで回りたくはない(もっともガイドがいたって、きこえないんだけど)、独りの行動でよかったな、と、マラソン前日の午前中はこの美術館でぼうっとしていた。


 

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