夏は浴衣で

男も浴衣で

山口七夕ちょうちん祭り

ここ数年、花火大会や祭りにゆかたで出かけている。女性の浴衣姿は絵になっても、男のそれはどうか・・・。世のおおかたの男性はそう思うだろう。

僕も、妻だけが着ていれば充分に思っていたのだが、浴衣好きの昂じた妻が僕の分まで仕立て上げてしまった。妻は裁縫類が好きのようで、年中、何かを作っている。服とか鞄とか、その他身の回りのものなど・・・。他のこと(特に家事)にはマメというには程遠いが、こうした手作業類では非常な情熱で飽きずに向かう。僕もこの点は尊敬させられる。同じ趣味でも、僕が毎日走ったり、こうしてホームページを更新することは、あまり役にも立っていない。それに比べて、時間をかけて何か形あるものを残す、モノづくりは素晴らしい、と常々、思う。

浴衣も一時期、先生に師事して教わりながら、並行して僕のをおまけに作ってくれた。──くれた、とはいっても、僕も最初は固辞していた。いざ出来上がっても、気恥ずかしく、最初は着るのにちょっと勇気がいった。側で見ていて、あれだけ一生懸命に時間をかけたのだから、一年に一度くらいは着てやらないと、という義務のような、渋々の気持ちが大きかった。

けれども、一度、着ると、この古来の衣装の快適さ、心地よさを知る。ひとたび袖を通すと日本人の心を取り戻す、といっても過言ではない。また、浴衣をまとうことで、祭りや花火を見るときの愉しみ方、心の持ち方も変わってくる。浴衣が与える印象の通り、着ている者にも心の余裕が生まれる。浴衣自身も案外、涼しいのだが、夏という季節の中で、祭りや花火で涼を得ようとした先人の知恵というか、日本の伝統の力というものにあらためて気付かされる。感嘆させられる。

今年は近場で夏を満喫

今年、出かけたのは山口七夕ちょうちん祭りと、駐屯地花火大会。ここ数年、岩国、萩、防府、下関、長門・・・といった県内各地の花火大会に出かけていたが、今年はともに市内の、自転車(本当はいけない2人乗り)で出かけられる場所である。

ちょうちん祭りの方は、室町時代に起源する、数万個のちょうちんが山口の夜の街を彩るというもの。祭りといっても動的な部分は少ない。幻想的な空間と時間に酔いしれる、という感じの、男衆の荒々しさというものは全くない点が、いかにも山口らしい。

花火大会は続けて3日後に。陸上自衛隊山口駐屯地という、市内中心部で行われる小さな規模の大会なのだが、ここにも市民は大勢、押し寄せる。花火も今更、珍しいものではない、毎年、どこかで見るものだとはいえ、日常生活では得られない爽快さに胸がすく。アパートからも見える距離なのだが、やはり間近で見上げると、大輪の花に見入ってしまう。考えてみると、花火は、説明とか音楽とかがどうしても必要なわけでなく、聾者も(聴者も)ただ無心に夜空を見上げていればいい。その単純さがいい。

ハレの日

昔、日本の生活には「ハレとケ」の違いがはっきりとあった。厳然たる区別があった。今ではあまり意識することもない。全てが普段の生活で、本来、ハレの行事でさえもケの延長として埋没してしまったのか、あるいはその逆に、以前は特別だったことが日常化し、毎日が「ハレ」化してきているのか。そんな中でも、祭りは他でもない「ハレ」の舞台。こんなときくらいは、ハレの時間を堪能するために、今一度、伝統や季節を思い起こすためにも、日常を脱する意味で浴衣をまとうのも悪くない。

冒頭で、男の浴衣姿はどうか、と述べた。「女、子どもであるまいし」という声もありそうだが、僕は強くおすすめする。女性のみならず、大の男が着ても浴衣姿はサマになる。浴衣は、男も女も、老いも若きも誰にでも似合う。試みに、自分でも家族でも、周囲の誰かが着ている様子を思い描いてみるといい。誰が着てもいい案配である。女性はしとやかに見えるし、男は凛々しさが増す。特に男は普段の装いが単調なだけに、驚くくらいの変化が意外さをもたらしてくれる。

ここ数年のゆかたブームは皆、感じておられると思うが、ゆかた市場は1964年度をさかいに縮小の一途をたどり、つい4年前の2001年度は、ピーク時の8分の1まで市場規模が落ち込んでいたという。それがここ数年でまた急速に復活してきている(*)。女性が浴衣なのに、男が普段着ではちぐはぐさが残る。女性のせっかくの浴衣姿が生かし切れていない。ともに浴衣姿でこそ、サマになるのに、もったいない。それに世間も気付き始めたのだろう、男物も昨年今年は急な伸び。もちろん、男女に限らず、家族総勢が浴衣だったら、もっといい。祭りや花火も本来の姿を取り戻して、一層、華やぐだろう。

今年の夏は、全然、計画的に休めていないせいもあり、どこかに出かけることも全くないまま過ぎている(治療院通いのせいでもあるが・・・)。でも、遠くに出かけるでもなく、花火にしろ祭りにしろ、こうして身近なところにふっと出かけられる気軽さの中で、少々の非日常性を味わうのも悪くない。

* 2005/08/07日経新聞エコノ探偵団
「ゆかたブームを仕掛けたのは?」


ホームページも時には華やかに25連発花火


 

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