自動販売機

お母さんにもリセットの場

アパート敷地のすぐ先にある清涼飲料水の自販機。近くに住む人に便利というものではないが、塾帰りの子どもや通勤路のドライバーなんかに結構よく利用されていて、最近、違うメーカーの2台目が設置された。

年度替わりのアパートは、出てゆかれる世帯あり、新しく入ってくる人あり、で思い出したのが、かつて住んでおられた4人家族のお母さん、と、この自販機。

就学前後のお子さん2人を抱えていつも大変そうな日々の、夜、ここでコーラを立ち飲みされる姿をよく目にしていた。「何で(家でなく)ここで?」とか、「なんで20mの距離を自転車で?」というような、「あたしん家」のお母さんみたいな普段から超・天然系なところが可笑しく何とも和ませてくれて僕は好きだったのだ。

一方、ご主人は性格のかなり荒い方だったようで、一週間でもの凄い量のビールの空き缶が出ていた酒量からもうなずけたが、毎晩、それは頻繁な怒鳴り声が響いていたという。夜のコーラはそんなお母さんのせめての息抜きであり、自転車は唯一の相棒だったか。

半分、表情を失くした目をして、でもコーラ一本飲むことで感情も飲み込んで、また家族の元に戻られていた。あのたくましさというか、強さが立派だった。

今の時代にクルマでなく、自転車の後ろの荷台に子どもを乗せて市内のだいぶ遠いところへも出かけていた、苦労が伝わってきたが、こぎれいに生きてゆける人よりうんと人間味のあるいい人だった。


 

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