これぞ高校野球、八幡商業 VS 帝京

史上初、9回逆転満塁弾

これぞ高校野球! と唸ってしまうような試合だった。盆の土曜ということもあって帰省中にTV鑑賞を堪能することができて非常に幸運だった。

試合は3-0で帝京の楽勝ペースに見えた。まだ2回戦の、とりたてて見所があるわけでもない、このまま終われば順当な結果のTVニュースで取り上げられることもなければ、新聞記事も一番、小さな扱いだったろう。

中盤までに3点を失ったものの、八幡商のエース吉中は後半、調子を上げて強打者揃いの帝京に追加点を与えずにいた。僕は彼の小気味よくアウトコースいっぱいに投げ込む──という以上にほとんどボール側1cm、でも球審もその絶妙な制球力に思わずストライクにしてしまいたくなるような──投球の美しさに感心していた。この好投手をもう見ることができないのは残念だなと思っていた。

伏線は7回裏、帝京の攻撃。2死で四番松本はこの日、先制2点本塁打に3点目も彼による得点。1年夏から遊撃手で甲子園出場の主将。打って守って走り回る、プロ入り濃厚の好選手。4打席目に打ち上げた打球もレフトファウルゾーンへ大きく弧を描いたが、スタンドスレスレのところを八幡商業の遠藤が好捕。三塁側アルプススタンドに詰めていた八幡商業応援団を一斉に沸かせた。白い歯のこぼれる笑顔で応えた彼の表情が爽やかだった。

相手は優勝候補にも挙がる帝京、(このまま負けても)このファウルフライ好捕さえ彼の人生の想い出になるだろう。僕は、負けてゆくと決め付けて八幡商業の選手の慰めに必死になっていた。

最終回9回表、先頭打者の好投していたエース吉中に代打。1死後、1番高森の中前安打には代走が送られる。1番打者に代走、というのが普通、考えられないように、エースへの代打も1番打者への代走も、全ては控え選手へ最後にプレーさせる監督の温情だろう、そう思えて僕もぐっと胸にきていた。僕も代走代打に守備、そっちの経験はたくさんあるから・・・。いい監督だな、最後に出番を与えられた選手もワンプレーでも想い出に残る甲子園の土を味わって欲しいな、と、最後になる選手の心境を思って涙が出かけていた(すっかり負けるものと思っていた)。

── と、8回までわずかに2安打、2塁も踏めなかったところに1死から3連打。2人続けて初球を狙った積極性が光った。八幡商業はここで4番、の最高の見せ場。しかし、4番の彼はここまで3打席凡退、2三振とふるわず。僕は、内野ゴロゲッツーでゲームセットになってしまうんじゃないかな、と不安にびくついていた。

果たしてショートへぼてぼてのゴロ。思わず目を覆った・・・が、これが高校野球、名手松本がファンブルし1塁への送球も逸れて1人生還。さあ、雲行きがあやしくなる。帝京はマウンドに集まる内野手全員が180cmを越しているのではないかと思えるくらいに、大型選手ぞろい。1年生で148kmを出したエースはついに登板せずファーストを守ったままだったが、つくづく、甲子園に来るような野球部選手の体格の良さ、運動神経の並はずれて高校生とは思えない世界を思わせられる。

幸運の風

以前、エントリした記事で、最後の打球は主力選手のさばくことが多い、と書いたけれど、やはりあの凡ゴロを内野の要であり、主将でもあり、他でもない名手の松本がエラーしたのが大きかった。彼がさばいて終わりにしておかないといけなかった。終わってみれば、このエラーが試合を決めてしまったともいえる。次打者遠藤は先の松本のレフトフライを好捕していた、いわばラッキーボーイ。まさにこの時、攻守の「運」が大きく入れ代わっていた瞬間だった。

振り抜いた一打はまさかの逆転満塁ホームラン。帝京の2年生投手渡辺の浮いた一球だけを責めるのも酷だろう。失策の松本も将来の野球界を支える逸材。3回のホームランで打った瞬間に指を突き出すパフォーマンス(上の画像)はちょっとやり過ぎだが、華のある選手、これもいい経験にしてさらに大きく成長してほしい。

9回裏、八商の2番手投手も震えたろうね。エースへ代打が送られた瞬間に、登板のあることは考えられたといっても、3点差を逆転してまさか9回裏のマウンドへ行くとは本人も予想できなかったろう。2年生投手、全く制球が定まらず、これまたヒヤヒヤさせられたのだけれど、これもエースを引っ込めたのを後悔させずに良かったね。

本当に素晴らしい試合を見せてもらって楽しめた。勝っても負けても、選手のひたむきなプレーが胸を熱くさせてくれて、もうひと夏分の感動を味わわせてもらった。

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