社会的機会を決める身体的属性、達成属性

勤続年数が同じでも昇格に大きな差

前回、「障害者の経済学」で書いたように今後、時々、触れてみたい経済学、労働環境関連の論文について。

今日の日経「経済教室」は最近、世間にかまびすしい女性活用がテーマ。ポイントは

  • 勤続年数が同じでも男女の昇格に大きな差
  • 大卒女性より高卒男性の方が課長割合高い
  • 女性のみ長時間労働が昇進率に大きな影響

として、我が国の法・意識・規範・通念の諸外国に比べた遅れを指摘し、企業の差別慣行廃止と法改正を望んでいる(具体的な改正提案はない)。

内容はまさにその通りで読みやすい論旨。それで、いつも思う、女性の活躍推進同様、障害者もそうあってほしいこと。以下、男性を健常者に、女性を障害者に置き換えてみても同じことがかなりいえるのではないか。

  • 障害者正社員が31年以上その企業に勤めて達成できる課長以上割合(20%)を、健常者正社員は11~15年目に達している
  • また係長以上では、障害者正社員が31年以上その企業に勤めて達成できる割合(50%)を、健常者正社員は6~10年目に達してしまう。
  • 高卒健常者の方が、大卒障害者よりはるかに課長以上割合が高い
  • 高い人事考課が健常者では昇進率を高めるのに、障害者では高めないという事実
  • これは、障害者には人事考課の結果によらず昇進率の低い職に配置するという「間接差別」の結果と考えられる
  • 正規雇用が新卒者優先のわが国で、障害者たちの再就職の大半はキャリアの進展性のない非正規雇用になる
  • 離職を理由に企業が障害者を健常者と同等に扱わない慣行が障害者の継続就業意欲を奪い、結果として離職率を高めるという「予言の自己成就」ともなっている
  • 管理職登用への大きな障害として「組織内の伝統的な性別役割分業」がある
  • 「健常者はリーダー役に、障害者は補佐役に適任」という固定観念である
  • 健常者は管理職への昇進率の高いラインポジションに、障害者は有能でも管理職率の低いスタッフポジションに配置というような慣行がはびこる
  • そして障害者の管理職昇進や企業内の意思決定参加を阻んできたと考えられる
  • その結果、障害者は人事考課が優れていても昇進せず、高卒健常者の方が大卒障害者よりも管理職昇進率が高いという世界的にみて異常な状態を生み出してきた

もちろん、障害者といっても一概にはくくれない、仕事をする分には支障の無い障害もあれば、決定的なハンデになるものもある、もっとえいば生活の困難な重度障害者もいる・・・なので、男女差を健常・障害に言い換えるのは簡単なことではない。それは承知の上での、上記はあくまで乱暴な置き換え。このくらい思い切ったことをいわないと、目を向けられない、関心の向きもない、ということ。最近よく脚光を浴びる女性に対して、障害者もそうであってほしい、と常々、希求するという意味で。

なお、論中では学歴の差が(あくまで研究上、期待されるものとして)述べられているが、僕自身は特には高卒/大卒に差は無いと思う。仕事の現実の場面で高卒者が大卒者より優れているケースは珍しくない、高卒・大卒という学歴で昇進が異なるのはおかしいと思う。

上の置き換えが全て成り立つとは僕自身、思っていないが、少なくとも社会に障害者を阻害する向きが強く残ること、無意識のうちにすりこまれた「固定観念」として障害者にはリーダーになることも昇進の場からもあり得ないものとして排除する、「障害者の職務には○○」といった思い込みの強いこと、生まれによる属性(身体的属性)で社会的機会が制限されること── といったあたりは感じさせられる。

企業の間接差別、法規制を 山口一男 シカゴ大学教授 :日本経済新聞

社会学では生まれによる属性で社会的機会が定まるのが前近代社会、教育など達成の属性で定まるのを近代社会というが、わが国はこの点で近代社会とはいえない。


経済教室

 

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