続々・壁の向こうに 熱血取材録 3

職場シーンまで公開

前回の事情でディレクターさんとも話が通じやすかった、障害のことについても共感していただけたのだけれど、特に「職場」のシーンまで取り上げられた、踏み込まれたこと。ごく一部分の姿ではあったけれど、ディレクターさんも満足されていたし、企画としても有意義だったと思う。

今回、僕も職場での検討会シーンを取り上げてもらう中であらためて考えさせられることが多かった。

放映シーンの僕の右側に座っていた彼が今回の筆記通訳役(みんなが交替してくれる)。その後、向かいの彼が身を乗り出して説明し、筆記を一部、替わってくれたシーンがあった。実はこの直前こそがある意味、キモとなる部分だった。

もちろん筆記は発言のスピードに追いつかないから、全てを伝えきれるものでないし、テンポよく発言の飛び交う会議ではタイミングよくその中に加われない。あのとき僕は「(向かいの彼が)何か言っていたのが気になる・・・」と言ってみた。そこは隣の彼が書き切れていなかった部分で、それで発言者としての彼自身が説明し直してくれた、というシーンだった。

実際にはなかなかこうはゆかない。僕のために巻き戻す訳にはゆかないし、きこえないこと自体、「何が書かれなかったのか」「カバーしきれなかったのか」を普通、知ることはできないから。「きこえないことは(話されていても)知りようがない」という事実。

できうれば全てを知ってタイミング良く話の輪に加わりたい、という願いは強いし、同時にそれは難しいと分かっているがゆえに、葛藤はある。それでも、どこまでも完全とはゆかない、ありえないことを承知しているから、僕にはいつもやっていただけるだけでありがたい。

放映では割愛されたけれど、自宅インタビューの中でいったこと。「きこえない僕が会議の多い仕事についていることは、ある意味、異例」「普通、きこえないと黙々とこなすだけの単純作業が与えられがち」。それが分かっているだけに「周囲の理解と支えとに助けられて話し合いの中に加われていることは有り難い」と。周囲もまたそうした僕の心情を理解してくれている。

壁の向こうに

今回、ディレクターさんが僕のこのブログ(なり以前のホームページ)に気付かれたのは、最後の自宅取材前日だったらしい。「教えてくれないから」といわれてしまった(笑)。僕としては知ってても知らなくても、どっちでも良かったけれど、知らなかったということで、僕についての先入観や前知識のない状態で取材してもらえた点は結果的によかった。

気付かれた後に、たったひとつ言われたのが「遥かなる甲子園」に描かれた球児らのその後を追った「壁の向こうに」のこと。「分かります」と・・・。

僕のこのブログももう相当なエントリ数になっている中で、つい昨日知ったばかりなのに「わあ! よく肝(キモ)となるページを探り当てられたな!」と、驚かされた。TV編成というのは、相当量の材料からエッセンスを取り出す編集が要になるだろうけれど、職業柄、さすがだなと感服。

今回も同じテレビということでディレクターさんには特に意識させられる点があったはずだけれど、振り返るに、あらためてあの番組も聴覚障害者の実情に踏み込んだ極めて濃密な内容だった。

壁の向こうに 2/音のない世界で

問題提起だけで終わってしまっている。問題提起にも意義はあるが、全国ネットで流れる番組なら、元ナインの意見をきいて、多少は企画した聴者の側の、制作者側なりの考えも示してほしかった。

読み返してみると、最後にこう僕は辛い評価をしてしまっている。今にしてみると申し訳ない気持ちになる。ブログやホームページにとどめる思いは刻々と変わってゆくものでやむを得ないものあるのだけれど、今回、自分自身がTV取材を受けてみてやはり、局の方々の立場、思いも充分に分かったので。

聴覚障害者の姿を取り上げてもらえるだけでも意義有ること。制作者側なりの考え方、というのも既に番組を編集し、放映したことで充分、伝わっていることだ。

僕自身、いざ、こうして記してゆくと、やはり、この問題はあまりにヘビーである。ナインが卒業後23年経っても苦しんでいる現実。さらにこの先、何十年、ある日、突然、「壁」がなくなるわけでもないこと。「きこえない」者にとって、Aさんに「仕方ない」と言わせる無力感。そもそも「壁の向こう」があるのかどうか・・・。

僕が今回の放映の中で

よく「障害を乗り越える」というけれど、私にとっては障害は乗り越えるものでなく、一生、共に生きてゆくもの・・・

ということを語った。ディレクターさんもここが一番、心に残ったということで前面に出してもらえた。

インタビューはとっさの受け答えで自分でもうまくは応えられないことが多かったのだけれど、あらためて乗り越えるものでも克服するものでもなく、この先もずっとその都度、格闘──ぶつかることもあれば逃げることもかわすこともあり──してゆくものである。完全な解はない。ベストはなくともその状況でのベターを選びとってゆく連続だ。



 

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 comment
  1. 26kame より:

    再度、希望しますっ。
    だれか、youtubeにアップしてください、まし。

  2. より:

    ゆく河の流れは絶えずして・・・
    よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
    ムニャムニャ・・・

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