聴覚障害者と窓口業務

有意義な討論会

このところ聴公会への欠席が続いていたが、山口で西日本ブロックのミニ討論会を行うことになり、地元メンバーとしてお手伝いさせていただいた。

討論会の議題は主に2つ。ひとつは「職場でのコミュニケーションの工夫」、もうひとつは「労働組合との関係」。

職場でのコミュニケーションというのは、一つの議題というより、聴覚障害はコミュニケーション障害であるという意味で、聴覚障害者にとって永遠の課題である。

当然、半日足らずの時間で成果が得られるものでもないし、そもそも討論に適する議題でもなかろうけれど、1つの事例に対して皆はどう考えるか? それぞれの意見を交換し、アドバイスになればそれでよしという形で進められた。 取り上げたのは、職場「内」でのコミュニケーションでなく、外部とのコミュニケーションについてである。

問題提起

「聴覚障害を有する公務員が「窓口」業務を行えるか? 行うには?」ずばり言ってしまえばこうなるだろうか。

単純に考えるなら、コミュニケーションに支障のある職員は窓口業務に向かない。だから、聴覚障害者は、コミュニケーションの必要の少ない業務につく(つかされる)ケースが圧倒的である。

しかし、仕事とはそもそも相手あってこそのもので、とりわけ、市役所や郵便局やハローワークといった場所では、訪れた市民に対応すること、「窓口」の仕事がとても重要で大きな比重をもつ。

そのとき、聴覚障害者は自分が窓口業務をすることになったら、という不安を持つ。また、逆に、大切な仕事なのにそれができないでいると、自身の職務能力も向上しない。仕事というのは、何を経験するかで、その人が成長できるかどうか、大きく違ってくるのだ。他の同僚が皆できることなのに、自分だけできないことに、自信もなくしてしまう。だから、積極的に窓口をやりたい、ということもある。

業務に少し慣れれば、誰しもが後者の思いを強くしてゆく。

コミュニケーションあっての仕事

これは、僕自身も強く思うことで、県立大学での講義でも述べたのだが、仕事というのは、どこにニーズがあるのかを把握することが何より肝心なことである。ニーズを知るからこそ、適切なサービスを提供することができる。そして、そのニーズを知るのは、まさにコミュニケーションによってである。窓口で、現場で、コミュニケーションのやりとりの中で仕事がなされてゆく。相手が何を求め、何に困っているのかを知るから自分が解決方法を探るのであり、それらの経験を積み重ねることで、仕事を覚え、成長してゆける。

スキルアップの研修でも、必ず「コミュニケーション力(技術)を磨く」という項目がある。技術以前に、コミュニケーションのスタートラインにたてない僕たちは、仕事の能力にも決定的に差がついている(つけられてしまう)。

障害の理解とサービス提供

聴覚障害は有しているけれど、それでも窓口業務をやってみたい。この思いがかなえられるかどうか? コミュニケーションは、「きこえないので、筆談してください」という方法に代えて。

聴覚障害者のことを理解してもらうために、積極的に聴覚障害職員が市民と触れ合うことも大切だ、市民への啓発のためでもある、という考え方もできる。

しかし、世の中の人全員に聴覚障害のことを理解してもらえることは難しい(理解されていれば、僕たちはもう「聴覚障害者」ではない)。

「今日は、窓口がきこえない人だから、筆談で相談するのね」という思考に切り替えられる人はまず、いない。「わざわざ窓口までやってきて、どうして筆談しなきゃいけないのか」と思う人の方が多いだろう。

筆談で自分の伝えたいことをすらすらと書ける人も少ない。もし、聴者が窓口にやって来て、並んでいるのが聴覚障害者と聴者だったら、間違いなく聴者の方を選ぶだろう。これは職場に限ったことではなく、誰しも、「自分の話をきいてくれる人」を選ぶ。

聴覚障害者の代わりに、アメリカ人職員や中国人職員を置き換えて考えてみても同じだ。「今日は窓口がアメリカ人(中国人)職員だから英語(中国語)で相談するのか・・・」ラッキー、と思えてくれるかどうか。それではサービス提供者として失格である。サービスの提供側は、まず、需要者の要望に沿うことが求められる。

公務員の場合は、それでも市民への啓発も仕事のひとつだ、とその職場が(そして市民も)認めてくれるだろうか?

一方で、「聴覚障害者=コミュニケーションの不要な仕事」と決め付けられるのも気持ちのいいものではない。聴覚障害であろうがなかろうが関係ないはずの、その人自身が有している能力も発揮できないし、僕たちはますます、聴者とコミュニケーションがとれずに壁を厚くしてしまう。 前の課の人事ヒアで、はなから異動先は内部事務と決め付けられていやな思いをした経験を僕も持つ。

僕自身、その思いを持ちながら、今は直接に来室者や電話でのコミュニケーションの業務は難しいと割り切って、自分は自分のできることに特化してゆくのがよいと思っている。今の僕の考え方としては。


 

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 comment
  1. 内山武司 より:

    この春、採用された職員は聴覚障害2級です。3歳から補聴器を使用していて、話し方教室等に通い日常会話は可能ですが、採用試験を一般枠で受験したので、人事課も障害を把握していなくて、配属されました。本人は、採用試験の面接時に聴覚に障害があること説明をし、面接官たちもそのことを認識し試験を行ったのに、その情報は人事課へ伝えられずに、一般枠で合格。
    一般枠なので、採用前に人事課に提出する書類に障害について記入する項目などなく、誰も気が付くことなく、市民課へ配属。さらに、1,700以上ある自治体の中で、最も多い25の受付を同時にこなし、他の所属に電話をしないと手続きが完了しない住民記録係へ配置されました。受付のOJTで、補聴器と電話機は相性が悪く、自宅でも受話器を使用していないと、電話機の使用を拒絶されました。検索を繰り返すうちに、このサイトにたどり着きました。
    ご自身の経験から助言等があればお知らせください。
    一方的な書き込みで申し訳ありません。

    • より:

      返信が遅れて申し訳ありません。
      社会がきこえることを前提としているため、聴覚障害者には色んな面で非常に大きなハンデがあります。また、割とカバーのきく他の障害に比べても聴覚障害者は日々、四六時中が苦闘状況という一層の困難もあります。
      が、配置転換して済ませる(マイノリティを排除してマジョリティの方法に合わせる)方法でなく、別エントリにもありますが、まずは公的な職場という性格的にも、今後はむしろ障害者が主体的中心的になるよう社会が変わってゆく方向を望んでいます。

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