あゆ、突発性の難聴

片耳ならまだ

歌手の浜崎あゆみさんが自身のブログで「左耳はもう機能していない」と告白したこと。朝日新聞にもこの病気(突発性内耳障害)のことが掲載されていた。

あゆ、突発性の難聴 内耳障害ってどんな病気?/asahi.com


記事にあるとおり、片耳(左耳)がきこえなくても、もう一方の右耳が正常ならば、日常生活にはほとんど支障はない。

聴者の方で試されると分かると思う。両耳のヘッドホンできくか、片耳のイヤホンできくか、で「音声情報の本質」が変わってくることはない。

「目」も大体、同じことがいえて、片目を閉じると分かるように、片方の機能を失っても視野が少し狭くなるくらいで、見える世界が「違ってくる」ということはない。おすぎだったかピーコだったか、片目の視力を失ったくらいではさほどのことでないと思う。

これが両耳、両目になると「違う世界」になってしまう。全聾、全盲は無論、聴力、視力がいくらかでも両側ともに欠けると、日常生活にも大きな支障を伴うようになる。近視の人にとっては、両眼でぼんやりとしか見えない状態より、片目だけでもメガネなりコンタクトなりで矯正できた方がいいのと同じ。

目と耳は二つずつ付いているけれど、必ずしも二つが絶対必要でないというのは医学的にとても良くできている、不思議な部位だと思う。ワークシェアリングという考え方があるように、聾者と盲者が、耳と目とを一つずつ交換できるなら、身体機能のシェアリングができれば、どんなにか世界は変わってくるだろう。

今後にもリスク

「突発性難聴」は誰にも起こりうる、特にストレスが誘因しやすいものだけれど、早期に治療すれば回復が期待できる。片耳で終われば救われるが、同じ環境が続くならもう片耳もなる可能性を有している。彼女が片耳をゼロにしてしまうほどの悪化を招いたということは、残された片方を悪くするリスクも高い。

彼女が宣言しているように「歌い続ける」ことは片耳だけでも問題なくできるだろうけれど、聴力(聴覚)の高度に要求される職業であるからこれまでのようにはいかないかもしれない。所属会社が強調する「日常生活にも音楽活動にも支障はない」ほどには甘くないだろう。

下世話ながら、大音響となるスタジオやコンサート会場での活動を避けて、極力、静かな場所で歌うこと、表に出るライブよりも、レコーディングだけで作品を発表するという形にすれば、残された側の聴力まで失う最悪の事態を避けられる。能力も活かし続けられるのではないか。

今回は人気スターの告白ゆえに大きな関心を集めているが、片方の耳がきこえない、という人は僕の知る範囲では案外、多い。積極的に明かさなければ人に知られることもないし、周囲が気付きにくいという意味でも両耳がきこえない人よりずっと多い。音楽関係者にも多い症例のはず。

けれども、こうして自ら「カミング・アウト」しない限り、周囲も分からない。きこえない、きこえにくいことはまず本人に「知られたくない(隠そう)」という心理が働くから。そして、「見えない障害」ゆえに社会の理解や対応が遅れる障害だから。

耳の障害について多少なりとも社会の理解が進む契機になれば。



 

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