自ら育つ力

渡辺康幸(2008年刊 日本能率協会)

2009/01/11読了、2009/01/11メモ


また早稲田閥から駅伝本

2008年刊
JMAM

新春の箱根駅伝前に読まれるべく刊行されたのだろうが、終わってからの休日にさっと読了。かつて高校、大学時代は無敵で学生記録を連発したスーパースターの著者が、母校、早稲田大学駅伝部の監督を引き受けてから今に至るまでの道のり、指導哲学を自ら語ったもの。

自分で成長してゆく、自己管理が大切という、もっともな内容が平易な文章で書かれている。ここ3年、「中国電力陸上部は、なぜ強くなったのか」の坂口監督(=自著ではないけれど)、「マラソンの神髄」の瀬古氏、と早大駅伝部シリーズが続く。最近は類書も多く、何だか今の熱狂的なランニング・ブームに負けじと、かつての名選手、指導者が競って本にしている感じだ。

よく「名選手、必ずしも名指導者ならず」という、学生時代の実績は今でもピカイチだけれど実業団では花を咲かせられなかったかつてのスーパースターだけに、著者自身の挫折、指導者に転じての立場の相違や気持ちの切り替えに伴う相克・・・等々を期待していたのだが、訴えてくるものはなかった。読み応えの方は今ひとつだった。そのあたりが著者の人の好さなんだろうなとも思う。

少々、違和感も

箱根駅伝を見るのは楽しいけれど、世にある批判同様、僕も行き過ぎとも思える過熱ぶりにどうかと思う点は多い。箱根を目指す選手らに非はなかろうけれど、「学生」という立場でのスポーツの度をはるかに超している弊害が過ぎてないかという点を、やはり本書にも感じる。まあ僕が心配しても始まらないのかもしれないが。

本書にはチーム内の具体的な選手名をあげてそれぞれの性格やら・・・が事細かに記されている。スポーツ新聞の延長のようで陸上好きには面白いかもしれない。僕は自分が走っていながら陸上に詳しい方でなく、本書に出てくる選手名も竹澤選手くらいしか知らないが、知名度も影響力も大きい著者が、自分のことでなく、内輪の事情、教え子のことについてここまで語る、本にして公の目にさらす必要があるのかな? という点に危惧を覚えた。

プロスポーツ選手ならいざ知らず、今まだ学生にすぎない二十歳前後の選手をチヤホヤさせ過ぎていないか。

学生の本分は学業のはずである──といった老婆心は今の厳しい大学経営の前にはもう通用しないのか。僕自身は陸上の経験はないけれど、陸上の良さは他の競技と違って練習時間や場所に都合が付けやすく学業との両立がしやすい、何より自分に打ち克とうとする精神的な鍛錬という点にあろうと思う。目指すべきは「パーフェクトマイル」のように、選手らの学業へ注ぐ情熱、卒業後の社会人としての活躍の方を知りたかった。単に陸上一色の大学であれば、高卒で働きながら走っている選手の方がよほど立派だ。

著者は早稲田といっても選手獲得には苦労すると書いているけれど、私学の半数が定員割する大学全入時代にあって、佑ちゃん、愛ちゃん、今の1、2年生の層の厚さ・・・が示すとおり、今後も一層、学生の人気は早稲田に(また慶応に)集中してゆくだろう。今後は自身がそうであったように、エリートの集まり、恵まれた才能の選手層を活かせるかどうかが課題になるのだろう。

満足度:★★★


 

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