古いボストンバッグ

村上春樹(2007年刊 文藝春秋)

2008/08/04 第8章読了、2008/09/21メモ


第8章「死ぬまで18歳」

2007年刊
文藝春秋

8月、中断したまま放置していた本書を久し振りに手にしてみる。

本章は、ニューヨーク・シティーマラソンに納得できなかった著者が、リヴェンジを期して半年後のボストン・マラソンに臨んだこと、けれどそれもダメだったこと、の負の連鎖が述べられている。そして、また今、次のトライアスロンに向けていること。

しっかり練習したはずなのに結果が出ない、満足できない──。これがマラソンの魔力。しかも膨大な練習の積み重ねによって年に1本、走れるかどうか、5kmや10kmのように何度でもリヴェンジできるものでない、という非効率なこと甚だしい種目。

それでも懲りずに走るのがランナー。やれやれ・・・。

章タイトルの「死ぬまで18歳」は、ブライアン・アダムズのタイトルを借用して著者が自転車に書いている文句らしい。

いいね、僕もずっと「19のままさ」と思っている。

僕は空を見上げたりするべきではないのだろう。視線を向けなくてはならないのは、おそらく自らの内側なのだ。僕は自分の内側に目を向けている。深い井戸の底をのぞきこむように。そこには親切心が見えるだろうか? いや、見えない。そこに見えるのは、いつもながらの僕の性格(ネイチャー)でしかない。個人的で、頑固で、協調性を欠き、しばしば身勝手で、それでも自らを常に疑い、苦しいことがあってもそこになんとかおかしみを──あるいはおかしみに似たものを──見いだそうとする、僕のネイチャーである。古いボストンバッグのようにそれを提げて、僕は長い道のりを歩んできたのだ。気に入って運んでいたというわけではない。中身のわりに重すぎるし、見かけもぱっとしない。ところどころにほつれも見える。それ以外に運ぶべきものもなかったから仕方なく運んできただけだ。しかしそれなりに愛着のようなものもある。もちろん。

第8章:★★★


 

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