聴覚障害者マラソン新記録

一気にレベルアップし始めた聾者マラソン界

日曜の福岡国際マラソンで、これまで僕が持っていた日本ろう者記録が更新されたよう。まだ面識はない(僕が出場できていれば会えた)のだけれど、東京の有名どころのクラブでめきめきと力を付けた若い27歳の選手らしい。

6年前に当時、タイ記録で僕が並んだのが19年ぶり。その後、4年おいて一昨年、今年と更新して今回また、と3シーズン連続での更新。厚い壁が瓦解したかのように聾陸上、聾者マラソンが一気にレベルアップしてきたことをまず嬉しく思う。

ちょっと不愉快

一方で、大会翌日の新聞を読んでちょっと不快に感じられたこと。小さな記事の中に、今回の記録更新に加え、1万mもハーフも9月、11月に更新していた、とあった。でも、それは今回のレースと関係ないのでは。そんなに自分の全記録を顕示したいのかな、と取れてしまった。

というのも、実は1万mもハーフも破られた方の従来の記録は僕だった。そんなことまで報道されるほどのものではないだろうと思っていたから、知らない人が大半だろうけれど。何だか今回、まとめて3つ、全てを蹴落とされて、コケにされた感じだ。

僕の場合、このブログの完走記でマラソンと1万mはちょっと触れているけれど、記録室などで殊更に飾り立てるようなことはしていない。前記録保持者はとかく「障害者日本一」を吹聴する強烈な自己顕示欲の方だったけれど、僕はそれほどの強い思いはなかった。たまたま自己ベストを追う過程で結果がろう者記録だったに過ぎない。

別大マラソンを走って帰って調べてみたらろう者記録(タイ記録)だった、自分が知らないくらいだったから、ゆえにどこに報道されることもなかった。その後、4年の長い時間、遠回りの時間を要して記録更新したときも、ろう者記録の更新でなく、自分のランニング・ライフで「サブ30(2時間30分切り)」を達成したい思いが全てだった。

でも、今回の彼が「1万mもハーフもフルも」と誇示するなら、3つ更新された側の僕が目標にされていたことを嬉しく思う。

老兵は静かに去りゆく・・・か

若い選手だからまださらに伸びるだろう。僕は35歳の時に「1万mとハーフとフル」のろう者記録を達成した。その後、39歳と40歳でフルの記録を再更新した。ちなみに、僕の前の保持者も1万mとフルの記録を出したのが今回の彼と同じ27歳のときだ。

一方、僕の場合は、随分、遅れてやって来たランナー。27歳というと「記録室」にあるとおり、僕が初めて駅伝以外のレースを走った年。1万mを初めて走ったのが29歳、当時は40分台だったし、ハーフに至っては1時間39分かかっていた(苦)。

27歳からロードに挑戦~My running history

今回の彼の新記録が2時間28分00秒。僕のが2時間28分49秒。「記録」を狙うなら若いときの方が可能性があるのは自明で、けれども同じ28分台、その差わずかに49秒の、僕の方は40歳(10ヶ月)で達成したタイムということを自分で大いに誇りに思っている。今回の無風という絶好のコンディションでも40歳超のサブ30は常連の1名(こちらも彼と同じ東京の有名どころクラブの選手)だったくらいなのだから。

年齢も違えば、練習はいつも独りの僕と練習環境もタイプも全く違う。今、空前のマラソンブームという時代も、とりわけ熱狂的らしい東京での、市民ランナーでもしのぎをけずり合うクラブと、競争相手はイタチか狸かというカントリーロードがホームコースなのも。

僕は前の記録保持者と並び、更新した際に言及する際も「そこまで自分を謙遜して、相手を持ち上げなくても・・・」と人にいわれるくらいに自分の記録は控えめに伝えてきた。追い抜いてゆくときほど相手の気持ちを慮り、敬意を表すことを忘れずに務めてきた。

勝者ほど敗者を思いやり、決して自分の記録に得意満面せぬよう律するのもスポーツマンシップだろうと思っているが、そのあたりは感覚の違う世代の差なのかもしれない。勝負の世界では甘いのかもしれない。

引退はまだ先

ともあれ、記事を読んだときは正直「この野郎」という気持ちになった。もちろん、書いたのは朝日の記者であり、本人の意ではないのかもしれないが。

僕は常々、自分より年上の選手には負けたくないと云って(書いて)きている。若い選手にはまあ、負けてもそれが当たり前だと思っていた。でも今回、火をつけられた。今年は「引退」の気持ちが大きくかすめていた、実際、今もケガが癒えずに選手生命の危機、瀬戸際にいるのだけれど、今は「負けてたまるか」という気持ちだ。

その意味では、今回の新記録は僕にはいい機会をもらえた。目を覚まされた。今のところ、聾陸上にマスターズはないが、あくまで若い選手と同じフィールドで互してゆくつもりで今後も自己ベストを狙う。

40代オヤジの根性を見せてやる! と年甲斐もなく燃えてきた。


(このページが逆に不快にさせていたら・・・でも心配無用、一気に書き上げた)続編、続々編を3日連続で。



 

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 comment
  1. いくお より:

    頑張ってください!!同じ山口県出身として、応援します!!
    話は逸れますが、うちも朝日を購読しているのですが記事が見当たらないです。版によるのかな。

  2. より:

    ありがとう。
    今回、つらかったのは自分の記録としてもさることながら、山口県勢としての記録が消えてしまったことでした。
    ・・・が、奪還しにゆきます。マラソンは。

  3. U本 より:

    聴覚障害がレースに及ぼす影響…情報が耳から入ってこない不安、スタートの出遅れ、応援の声が聞こえない、選手の息づかいや足音が聞こえない…他にも私には分からない不利や苦労があると思います。
    しかし、私はろう者だからではなく、ランナーとして常に前を向いている羊さん(と呼んでいいのかな)の姿に感銘し、尊敬しているし、目標にしています。
    私も40歳に近づいてきましたが、羊さんが頑張っている限り年齢を言い訳にできません(苦笑)。
    これからも年齢に逆らってお互いに頑張りましょう。

  4. より:

    ありがとう。
    見た目に障害がないので周囲はその深刻さに気付けない、どういう不便があるのだろうかと想像する、察することがこの障害の周囲に一番、求められる、でも相手にそこまで要求はできないのも事実で難しいことだろうと思っています。
    U本君のお気遣いに感謝します。
    走ることそのものより、その周囲で確かに不利、残念なこと(=コミュニケーションとれない、交友が増えない)が多いのですが、いざ走り出せば障害は全く関係なく不利にもなりません。
    聴覚障害者が声を出して話さないから肺活量が少ないとか、そういうことも無いです。
    それはさておき──
    今回のU本君の成績、素晴らしいです!
    自己ベストですよね。おめでとう!
    久しぶりの好結果も6年ぶりのはずですよね。40歳が近付いての復活も見事です!
    若い俊足ランナー、実力ランナーを抑えての堂々の県勢トップも!
    県勢唯一のサブ30も!
    ・・・二重、三重のお見事さ、素晴らしい限りです。
    メールしようかと思ったのですが、会ったときに伝えるつもりでした。
    4年前の福岡で、予定していた途中棄権とはいえゴールしてくる選手を見るのはつらかったです。その時にひときわ胸に来たのがU本君の力走でした。
    今回の好走ぶりも目にうかびます。さすがです。
    僕も4年前のU本君の送別会で「サブ30を果たすまでは死んでも死にきれない」といったことがきっかけですからね。
    U本君を目標に持てたことを感謝しています。もちろん、今もです。
    今後もお互い頑張りましょう!

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