洞爺湖マラソン2009 - 9

きこえないこと

閑話休題、ついでに述べてみます。

今回は知ったランナーの誰もいない遠い地へ、かつ一人で出向いた、走るためだけの単独ツアーだった(傍目にはちょっとさみしい・・・)のだけれど、もちろん最近は若い女性でも単身で出向くし、チームなどなくても大会会場に集まればランナー同士、すぐに打ち解け合える、レースがきっかけで親しくなれる、友人が増えてゆくもの。それがランニングの良さ、楽しさ。いつものことではあるけれど、今回、久しぶりのマラソンであり、北海道という旅行気分も味わえる遠征だったせいか、余計に話せない、コミュニケーションがとれない残念さを感じさせられて帰ることともなった。

何もしなくても人は誰かに話しかけられるもの。今回も道中の列車を待つ駅で、泊まった宿で、ゴール直後に、表彰式を待つ間に、帰りのバスで・・・と色んなところで話しかけられた。「どこから来たの?」「何度目?」「調子は?」「タイムはどうだった?」「暑くてきつかったよね」(・・・といってるのかどうかは定かでない、まあ、きっと最初の糸口はそんな他愛もない話からのはずだろう)。でも、全部、ダメ。せっかくの好意が全て素通りして消えてしまう。話しかけられたことに気付けず、無視してしまっている(ような)ことさえ多いだろうと思う。

人間関係を築けない

せっかく投げられたチャンスを活かせないのも残念なら、自分から話しかけられないのもまたつらい。僕も同じようにやはり、ちょっと話しかけてみたいものだ。関心は山ほどにある。

でも、僕の場合、話す方は問題ないのだけれど、返される言葉をききとれない身という自分が分かっていて話しかけることは余計に虚しい。切ない。相手がそうと知らずに投げてみたら、僕が受け止められない立場だということを気付かされた、それならまだしも、僕が自分で投げかけておいて、次に投げ返される言葉を受け止められないのは、相手に失礼でしかない。

Coffee break
Coffee break

必然的に消極的な性格になってしまう。レースの前夜祭や打ち上げや・・・にも(本当は参加したいのに)、まず加わらない。いや、座っているだけなら問題ないし、食べることはできる。でも、周囲が和やかに談笑して大いに盛り上がって・・・という中で自分は全くその内容を知り得ずにポツンと佇んでいるしかない、みんなが笑い、楽しんでいる情景が目に入るだけは入ってくるというのは、当人には残酷なこと。そんな状況で飲んでも食べても、どんな豪華な料理も美味しいとは思えない。涙の味のしょっぱさが残るだけ。

以前、学生に講義して寄せられたレポートの中にも、仲間といてシカトされることほど辛いことはない、というのがあった。それと同じ。無論、悪意はなく、結果的にそうなってしまう状況。

「きこえない」障害は目に見えないから、足が悪いとか目が見えないとかに比べて軽く見られやすい。でも、二本の足を交互に出すだけのマラソンを走るのは問題なくても、肉体的な条件は同じでも、心の中は寂寞として荒みがち。見えないことはヒトをモノから切り離すが、きこえないことはヒトをヒトから切り離す。

人間性を蝕むし、精神的に病まないでいられない。孤独感と疎外感がうつ病の発症要因というなら、きこえない者は、常にその状況に身を置いて解放されない。もちろん周囲にも本人にも責はないことで、だから「バリアフリー」という言葉では片付けられない難しさのある障害でもある。

走っている時はそんな余計なことを考えないで済むのがいい。

──と、ちょっと寄り道して、また次回から本編のレース概況(いつ終わるの?)に戻ります。


 

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 comment
  1. peachtree より:

    はじめまして。東京出身、30代、左110db、右70dbのワーキングマザーです。私もランニング大好きで、このHPに辿りつきました。
    >話しかけられても答えることができないから・・・
    で諦めてしまうのはもったいないと思います。常に小さいメモ帳とペンを持ち歩き「お手数ですが、私聞き取りにくいので、こちらへ書いていただけますか?」と聞いてみるのはどうでしょう?
    イヤな顔をする人もいるかもしれませんが、さっと対応してくださる方もいますよ。
    人生は限りがあり、寂しい顔をしていても時間は過ぎていきます。どうせなら、楽しい顔で過ごす時間が多い方が良いですよね。初めは勇気がいるかもしれませんが、少しずつ、がんばってくださいね。

  2. より:

    peachtree さん、コメントをありがとうございます。
    そうですね、僕ももちろん、いい年をしてますから(^^;) 勇気がないわけでなく、長い間、そうしてきていますが、何分、いつもメモがあるわけでなく、例えば、ジョグしている最中やレース会場でスタート前、ゴール後・・・等々、手に何も持てない状況の時、peachtree さんも話しかけられることっていっぱいありませんか?
    そういうとき、本当にもったいなくて残念ですよね。
    大事な話はメモを欠かしませんが、些細な雑談ほどメモに書くほどじゃないから・・・というのが普通の人の対応で、経験的にもさっと対応できる人というのは数パーセントくらいでしょうか(ボランティアに女性が多いように、男性ほど、また年を取るほど書くのが苦手という人が多いですね)。
    でもpeachtree さんのいわれるとおり、そういう気持ちを持っておくことは大切ですね!
    忘れないようにしたいと思います。
    peachtree さんは70dbなら補聴器もかなり有効と思いますが、それでも難聴なりの苦労のあることは僕自身の経験でも分かります。
    お互い、がんばりましょう。
    peachtree さんもランニング大好きとのこと、いいですね。次のデフリンピックを目指してみませんか?

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