第36回防府読売マラソン 3

2005/12/18 防府市陸上競技場発着

弱気は最大の敵

中間点、集団の中で
中間点、集団の中で

走り出してしまえば、あとはいい意味での「惰性」で走ることができる。氷点下に近い気温、強風の、一人では絶対に走らない条件下でも、ここでは一斉にスタートした同じ仲間がいる。周りが走っているのに、自分が走らないわけにはゆかない。仮に皆がそれぞれに弱気な気持ちを抱えていても、その胸の内は見えない。スタートラインに並び、そして走り出す──。胸の内は推測しがたいが、誰の目にも映る「走っている」という事実は、これ以上なく選手を鼓舞してくれる。同じように、僕が気持ちの上ではまいっていても走る姿は他の選手にも何らかの影響を及ぼしている。選手間のその連鎖が皆の背中を強く押す。強風に負けないほどに。追い風に匹敵するくらいに。

レース中の長い時間に頭をよぎるのも似たようなことである。走り出した後もやはり、長い道のり、ずっと強気でいられる訳ではない。何度も気持ちがへこみそうになる。特に今回の僕はそれが顕著だった。

まだ10km過ぎたばかりの地点でかなり気持ちが切れかかった。体調が悪いわけでない。ペースが速過ぎるわけでもない。それなのに苦しい。この分だと走り切れそうにないように思えてショックだった。「マラソンはやはりきつい──」と一気にまた弱気の方に大きく揺れる。レースそのものをいつ、あきらめることになるのかと思った。「自分はマラソンに向いてない」と泣きたくもなった。「もう、こんなにきついマラソンなんてこれでやめよう」と本気で思った。30km以降で思ったことは以前にもあったが、まだ10kmである。「今日が最後のつもりで走ろう」──本気でそう思った。そこまで思わないと、この先を走り続けられる自信がなかった。

「弱気は最大の敵」とは、炎のストッパー、亡き津田恒美投手の好んだ言葉だが、マラソンではとめどなく何度も襲いかかってくる。

走りながら感動

苦しみながらも何とか集団に位置したまま、中間点を過ぎる。折り返し後、25kmまでの強い北風で一気に集団のペースが落ちる頃、2人、3人・・・と抜け出す選手が現れる。段々、僕も苦しくなってくるが、当然、皆も苦しんでいるはず。苦しいときゆえに考えられることは尋常のものでない。それゆえに自分の普段、気付いていないことに気付かされる。心の奥深くに突き刺さってくる。深層心理とでもいうべきものが呼び覚まされる。

集団のメンバーは若い俊足ランナーばかりである。彼らが今回は風で自重したせいもあったのだろう、何度か遅れかけながら僕でもぎりぎりついてゆけたが、本来、持っているスピードは全然、違うレベルのランナー達である。5km、10km、ハーフまでの距離なら逆立ちしても、100回やっても勝てない(1度やれば充分だが・・・)。

その実力の差を認めつつも、走りながら気付かされたのは、彼らとて、ただ能力があって早いのではなく、当たり前ながら努力しているから速いのである。速いランナーをみるとき、単に「あの人はすごい、才能がある」と思ってしまう、それで自分(の弱さ)を納得させようとするが、やはり、才能以上に本人の不断の努力と練習のたまものである。誰しも苦しい中、耐えてゆける肉体を生まれつき備えているのではなく、苦しさに耐える練習を誰よりも積んできているに過ぎない。

これまでの僕は、そうした俊足ランナー達をただ「すごい」としか思っていなかった、レベル(世界)の違う相手と思っていたが、同じ集団の中にいると、自分が彼らに追いついた、というのでは決してないのだが、なぜか身近に感じられた。その速さ、強さの基になるものが見えたような気がしたからだ。年下でもうんと若くても、彼らのその努力、競技に対する姿勢には強い尊敬の念を覚える。

そんなことが考えられて、走りながら僕はしびれた。感動した。これまで自分より速いランナーを応援する、という機会はなかった。速さ、強さは羨望と同時に嫉妬ややっかみの対象にもなりうる。けれども、今度、自分が応援にまわったときは彼らを心の底から応援したいと思った。こんなに苦しい中を耐えてゆける人一倍のトレーニングをしているのだ。その努力に惜しみない声援を送りたい。

僕だけでなく、テレビに映る先頭集団でないところに、それぞれの集団に、それぞれのランナーの胸中に感動があったろう。この最悪の条件下で走っている、風に立ち向かっている姿だけでも感動的である。沿道の応援者に、市民ランナー達はどう映ったろうか。また、多少なりとも選手と知己があり、レースに関心のあった全国の人達が結果を知ってどう思ったろうか。僕は、走っている当事者でありながら、今一斉に走っている全選手を思ってひたすら感動していた。

(なお続く)・・・多分、年明けに

余録
今日は陸上部恒例の走り納め&タイムトライアル。マラソン組はまだきつかったと思う。僕もここでのT.Tはいつもケガだったり体調を崩していたりする。99%1人で練習している僕だが(決して陸上部の合同練習が嫌いなわけではなく(^^;)、たまたま自分の計画したメニューや体調が合わないゆえである)、年の最後にやっと合流できた感じ。部長、監督、その他いつもの献身的なサポートに感謝し、最後に集まるのは何か、いいものだなと思えた。
それにしても、最近の寒さ続きの中で今日は比較的、暖かいのが何とも皮肉。正月に向けての買い物客もどっと街に押し寄せたろう(と、おかげでまだ仕事の妻も多忙だったとか)。
僕はマラソンを一本、力を込めて走ると、どうしても貧血になりやすいのだが、その兆候もやはり、出てきた感じ。そう寒くない中、今日もブレーカー2枚着込んでアップし、15kmをトライアルしても一滴も汗が出ない。昨夜~アップ~走る最中~今、とずっと同じシャツのままである。洗濯は少なくて済むが、人並みに汗をかけるようになりたいものである。

追記
力を入れて走ったせいもあり、経験のない激痛があらわれる。3年前の悪夢が・・・。やはり、マラソン後はあんまり無理をしない方がいいね。

黄色い軍団、県庁陸上部選手の力走(撮影:斎藤部長)

真っ白な雪に覆われたフィールドを横目にスタート
真っ白な雪に覆われたフィールドを横目にスタート
今津選手
今津選手
山村選手
山村選手
十河選手
十河選手
盛重選手
盛重選手
那須選手
那須選手
綿谷選手
綿谷選手
横沼選手
横沼選手(10km)
弘重選手
弘重選手(10km)

 

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