第36回防府読売マラソン 2

2005/12/18 防府市陸上競技場発着

スタートラインに立つことが大事

大会当日、早朝の雪景色
大会当日、早朝の雪景色

例年のように、つい1週間前までは「いよいよだな」と、高まる緊張感を楽しむくらいなのに、今回、まさか天候のことでこれほど気をもまされるとは考えていなかったのがレース前夜である。

天気予報は毎日、悪化していった。週間天気予報の示す日曜の気温は更新される都度、下がっていった。先日、気象庁が暖冬予報を修正して、20年ぶりの記録的大寒波だとしたが、それも振り返ってみてのこと。渦中にいる際には目の前の現実がなかなか信じられない。受け止められない。

レース前夜、降り始めた雪は瞬く間に道路を白く覆う。尋常でない事態に心が乱れかける中、何気なくTVを見ていたら、フジ系のプレミアムステージ・パラリンピック委員会推薦ヒューマンドラマ「スタートライン~涙のスプリンター~余命僅かの青年と盲目の少女は障害を越え・・・最後まで走り抜くことができるのか?」というのにぶつかった(長い長いタイトルである(^^;))。

ちょうどいいシーンに遭遇したのだと思うが、誰かの語りの部分であった。いわく「ゴールすることだけが大事なんじゃない。何よりもまずスタートラインに立つことが大切なんだ・・・」(といった内容だったと思う)。確かにそうだよな、と素直にうなずけた。ゴールできるかどうか、結果がどうなるかも大切だけれど、まずはスタートラインに立つことこそが大切。心身のコンディションを整えてケガ等なく「立てる」という面に加え、スタートしようという「勇気」が何よりも必要である。

今回のように、これだけ天候のコンディションが悪いと「記録は出そうにないな」、「ならば大事を取って回避しよう」という考えにもなってしまう。「大雪でも大寒波でも、それでも走るんだ」という自発的な意志の力が普段以上に必要となる。

それから小泉首相の言葉。次の首相候補として断トツ人気の安倍さんを温存しようとする森前首相の考えに対し、「困難から逃げてちゃダメだ。チャンスは度々あるもんじゃない」。特に目新しい言葉でもなく、けれども、今はこの人の発する言葉には反論を寄せ付けないほどの強烈なカリスマ的オーラがあって、これも全くそのとおりのメッセージを投げかける。「困難から逃げてはダメ」&「チャンスはそうない」。分かってはいても、人間、楽な方を選びたいし、「また次の機会に・・・」と思ってしまいがち。それだけに、小泉首相の言葉もタイムリーに僕の心を鼓舞してくれた。

「それでも走る」モチベーション

そうはいっても、当日までなお覚悟の定まらなかったのも事実である。寝床に入っても会場までの交通手段をどうしようかと悩まされる。わずか17kmしか離れていない隣の市でも、道路の凍結状況によっては、峠を越えずに迂回してゆく道になろうか、時間もかかりそうだ・・・等、不安は尽きない。高速道路も通行止めになるし、で、この点、前日に会場入りして宿泊していた他県、遠隔地ランナーよりも、県内、隣県選手の方が気をもんでいたろう。「実家(防府)に泊まっておけば良かったのに・・・」と妻が言うがもう遅い・・・。雪がしんしんとひたすら積もり始めていた。

果たして翌朝は一面の銀世界。まずはノーマルタイヤの愛車にチェーン付け。何年ぶりのことだろうと思いつつ、滅多なことでないから苦労する。スキーに夢中だった昔は珍しくなかったが、それだってスキー場近くで付けるかどうかのこと。まさか自宅で付けることになろうとは・・・。鉄チェーンゆえ、スタッドレスと違って徐行運転を余儀なくされるから早めに出発せねば、と焦り出す。朝食は心を落ち着けてとりたかった、スタート前最後のエネルギー補給はゆっくりかみしめたかったが、大あわてでかきこむことになった。焦りで、使うべきでないところにばかり気をとられた。

防府に向けて車を走り出させても、まだ「走る」という気になれない。道路に残る雪の状態と、恐々としか進まない運転で、レース会場に向かういつもの昂揚する気分どころでない。「果たしてこんな状況で開催されるのか?」と最後まで信じられなかった。大会の規模からして、延期や中止になることなどないと分かっていても、心のどこかで、そうなってくれないものかという思いが消えなかった。

競技場に到着して、それでもアップを開始している選手を見て、ようやく僕も目が覚めた感じだったが、他の選手の胸中も複雑だったろう。防府は記録を狙いやすいがゆえに全国からランナーが集まってくる。それはフラットなコースも大きいし、気温や風の影響の少ないコンディションの良好なことが多いからでもある。それがこれほどのひどいコンディションでは、気落ちしなかったランナーなどいなかったろう。記録は二の次、参加に意義あり、の完走目的くらいならよいが、記録を狙う気持ちが強いほど、レースにかける意気込みが強ければ強いほど、正午近くにしてなお強風が続き雪の舞う競技場を前に不安と落胆も大きくならざるを得ない。

寒さがもたらす肉体への影響も明らかだった。アップを開始するも、足先が異常に冷たく硬い。こんなことは初めてのこと。路面に無数に足を叩きつけるマラソンはそれだけで足底骨一帯を痛める競技である。後半はこの痛みとの闘いでもある。寒い冬なら尚更なのだが、それがスタート前のアップから既にだなんて。「やばい・・・」どころでなかった。多少なりともケガ、持病を抱えないランナーはいないはずで、寒さの中ではそれもこたえたろう。スタート前にして心身が揺れて乱れる。それだけに、今回のレースでは、寒さの中をいかに走ったか以前に、まずは「それでも走る」モチベーションをどう、スタートまで作り上げていったか、各選手の意識を厳しく問うてきた。

スタートラインに立ちさえすれば

「雪だろうが強風だろうが記録を狙ってゆく」。難しいけれど、それが求められる姿ではある。スタート前、いつまでも覚悟の定まらなかった僕の、今回の反省すべき点ではある。

これが一瞬の力を要求する競技であれば、スタート前に精神が乱れていたら、その時点で勝負もついてしまうところだろう。けれども、ここがまたマラソンの面白いところで、そんな直前のもやもやもスタートラインに立つ頃にはすうっと消えてゆく。号砲を前にした緊張感で、3分前にはきれいになくなる。「1分前、30秒前・・・」一気にアドレナリンが分泌されてくる。

そして、2時間以上もの集中力を持続させること(あるいはいかに集中力を使わないでやり過ごすか)が必要な、長丁場のマラソンはそうでないところがいい。スタート前に必ずしも気持ちを高めることだけが全てではない。レース前のあまりのハイテンションはむしろ、マイナスにさえなる。ドラマのいうように、まずはスタートラインに立つこと。スタートにつきさえすれば、何はどうあれ、そこで状況は大きく変わってくる。


*仕事も片付いていない、今年も大掃除の目処はない、年賀状はもちろんまだ・・・でホームページどころではないはずだが、それでも──続く

閑話休題
今週末はイブが土曜夜となる3連休の、クリスマス気分を満喫するにはこの上ない暦となった。スキーを楽しむ予定だった恋人達や家族、スキーツアーを計画していたグループも多かったはず。でも、連休入り前日、九州山口全県の高速道路が通行止めになるほどの再びの大雪。スキー場にたどりつけなかった、あるいは出発さえ出来ずに計画が中止になったケースも多かったのでは。こちらも雪が恨めしかったことだろう。


 

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