第66回中国山口駅伝

2003/1/26 宇部市役所~阿知須~小郡~山口~防府~新南陽~徳山市役所(7区間 84.4km)
(第2区 阿知須中学校前~小郡町文化史料館前 11.3km)

高まる緊張

初出場となった一昨年、そして椿峠を越える最長区間の6区を任された昨年以上に、今年は大会が近付くにつれて緊張感が高まっていた。果たしてまともな走りができるのだろうか。緊張というより、不安が大きくなってゆく。この不安がどこから来るかというと、やはり、自信の無さであることを認めないわけにゆかない。

先週の市駅伝を走ったとはいえ、シーズン中の3ヶ月間、実戦から遠ざかっていたこと、頻発するケガで思うように練習できなかったこと、僕にとって高過ぎる最高レベルの大会に出場すること。チームの流れを決めてしまいかねない2区にまわったこと、疲労を抜いてきたつもりが、前日の軽い調整走でさえも足がとても重く感じられたこと・・・。そんな前夜、古林主将よりメールがやってくる。「リラックスして、余裕を持って・・・」と。それでなくても僕のケガや翌週のことまで色々と気をもませているところに、嬉しい気遣いを示してくれる。おかげで随分と緊張感が解けた。素晴らしい主将だ。

夜、緊張を鎮めようと寝床にだけは早くつく。尋常でないせいか、普段、就寝前にはしない読書をしようという気になる。こんな時に限って読みかけのまま放っている、また、あらためて読み直したいと思えるたくさんの本が読めそう。これ以上気持ちが昂ぶってもいけないし、とあれこれ迷った末、選んだのは神谷美恵子さんの『生きがいについて』。こんなときに・・・と自分でも笑えるが、少し目を通すと心を落ち着かせて眠りにつくことができた。

翌週に別大を控え

当初は昨年に続けての6区が予定されていたのだけれど、正直、今年は足が持ちこたえるかどうか自信がなかったから2区に変えてもらった。翌週に別大も控えていることで配慮してもらった形だ。この駅伝は陸上部にとって一年で最も重点を置いているレース。別大がどうこうというのは個人的なわがままでしかない。それを承知しているだけに僕としてもはがゆい。防府と別大をともに走った過去2年と異なり、今シーズンは防府だけに絞り、別大には出ないでこの中国山口駅伝にきっちりピークを合わせようと思っていたのに・・・。

昨年一昨年は防府で充分好走し満足できていたから、別大へはまあ、おまけみたいなつもりの気持ちで臨むことができた。けれども今回は防府を欠場した無念さがある分、別大へは背水の陣を敷くつもりの覚悟を自分に課している。さらに練習不足で果たして完走できるかも正直、今、不安な状況だ。そんな中で来週の別大までは、昨年まで以上に、いやがおうでも緊張感が高まってしまう。余計にコンディショニングをうまく行わないと、自分ばかりか周囲にも迷惑をかけてしまう。区間を入れ替わることとなった山田さんには本当に申し訳ないことをしてしまった。

歴史ある大会にチーム一丸となって

山口市大内を駆ける4区松井選手
山口市大内を駆ける4区松井選手

春先~初夏、トラックで好記録が続いた頃、これも古林君から「この好調を駅伝シーズンまで維持して・・・」とメールを受ける。「そんな、ずっと先のことまで考えてないよ」と当時は思ったのだけれど、時の経つのは早い。あっというまにシーズンを迎えてしまった。その間、僕の記録は自分でも驚くほどさらに伸びを見せ、けれどもその好調を保てぬまま、貧血とケガとでせっかくの力は見る影も無く落ちていった。勢いがあり過ぎた分、頂点に上り詰めた後に急降下してゆくジェットコースターのように。

今年は地元カネボウが欠場したとはいえ、この大会には例年、中国全県から実業団、郡市体協が、さらに高校は近畿を含めた強豪校が出場チームとして名を連ねる。中国電力、全国高校駅伝優勝校の西脇工業、今回それを打ち破った京都の洛南高校・・・。県内数市町を通過するだけの大会に実業団、高校とも全国トップレベルの、どうしてこれほどの名門チームが集まるのだろう? そしてなぜ山口県で開催されているのだろう? と不思議に思う。今回が第66回の歴史を重ねているレース(九州一周駅伝でさえ前回が第51回だ)。きっと素晴らしい由緒のある大会なのだろう。

5市2町を4時間以上かけて通過する84.4kmというのも長い距離だ。偶然なのか、そう設定してあるのか、「84.4」という数字はちょうどフルマラソン(42.195km)の倍の距離だということにも今回ふと気付いた。

3年続けて出ていると、こうして、この大会の言い知れぬ重みというものが毎年、じわっと実感できるようになる。陸上部にとって「一年で最も重点を置く大会」というのが遅まきながらようやく実感できるようにもなる。昨年、郡市の部で優勝した呉市体協はこの中国山口駅伝にベストを尽くすため、選手に防府読売マラソンへの出場も禁じているとのことだった。隣の広島県チームの意気込みがこれほどのものだから、地元も地元、ど真ん中の山口県庁チームの僕が、防府がどうこう、別大がどうこうというのがいかに甘い考えなのかを思い知らされる。県庁陸上部も大会役員の方々を含め、総出でこの大会を支える。各中継所に付き添いを配し(きこえない僕には殊のほか安心できる配慮だ)、毎年の雨の中を路上に立ち、荷物を輸送し・・・と、まさにチーム一丸となって臨む。

不安の中の走りに満足

防府市勝坂峠を下る5区古林選手
防府市勝坂峠を下る5区古林選手

当日はまたまた雨。雨の多い山口、こう毎年続くと他県チームは出場を見合わせたくなるんじゃないだろうか。冷たい雨中のレースでイヤなのは、走り終えた後の筋肉痛がひどいこと、シューズが濡れて足のむれること。今のシューズのつくりは通気性をよくしている分、上からも下からも簡単に水が入り込んでくる。それと、これは僕の走りのフォームがよくないせいだが、背中に泥をはねてしまうことも。上から降ってくる雨ではなく、下から跳ね上げる泥水のせいでパンツの後ろの部分だけがどんどん重くなってゆく。走っていて何ともヘンな気分にさせられる。

1区の中村君が思ったとおりの(きっとそうだろうから緊張感が高まっていた)好順位でやって来る。先週の市駅伝が通算38回目と述べたけれど、繰り上げスタートや順位の決まった状況に慣れていたから、前後に選手が入り混じる混戦の状態でタスキを受けるなんて、もう随分と久しぶりのことだ。駅伝はこうでなくては! 100m前方まで7、8人の背中が見えると気合いの入り方も違ってくる。どこまでついて行けるか、そして、何とか追いつけないものか。最初だけでもと飛ばしてみる。30m先の選手に追いつく。大竹市陸協の石津さんだ。一昨年同じ3区を走った、翌日の新聞で親子での出場と知ってカルチャー・ショックといっていいほどの衝撃を与えてくれた方。今年も1区の息子さんから49歳の父親へのリレー(すごい!)。

さらに50m先に白ゼッケン、郡市の部の3人がすぐそこに見えるけれども、追いつけそうで追いつけない。落ちてきた一般の部(黄色ゼッケン)の選手を一人追い抜く。これで一般の部の最下位は免れそうだ。もう一人前方に見える一般チームも抜けないものかと思うが、甘くない。徐々に引き離され視界から消えてゆく。やがて後方からは別の3人に追い抜かれながら、けれども、前方50mの3人にはついてゆけている。

190号線を抜け、中間点を過ぎて県道へ折れる。2区は阿知須町から小郡町というが、その間の大半は山口市南部区域を横切る形になっている。深溝、嘉川地区を走るこの区間は、バイパスが通じてから山口市民である僕もほとんど通ることの無い路線。田んぼの広がるのどかな地域で、余計に長く感じられる。朝、中継所に向かう道を車で逆走しながら思ったとおりの、変化の無さがしんどく感じられる道だ。我慢しつつ時計には目をやらず、中間点以降は何キロ地点かも把握できぬままに走るが、この分なら悪くない走りなんじゃないかと思う。心配していたよりかはよく走れている。そしてラスト1kmの表示。あと1kmなら何とか走り切れそうだ、とこの日ほどラストの表示が嬉しかったことは無い。小郡町街に入って沿道の応援が多くなった中、振り絞る最後の力も残っていた。

県庁陸上部への愛着と誇り

今の自分には充分な好タイム。総合順位の落ち込みも最小限で抑えることができた。1区が中位で来るなら最悪、20人に抜かれること、最下位に落ちてしまうことも覚悟した。不安の大きかった分、ホッとした。安心した。ゴール地点の徳山に集合後、監督、コーチをはじめとする他メンバーからも設定タイム以上と労っていただけた。区間を変えてもらっていたことへの胸のつかえも少し降りた。出揃った記録を見ると、一般の部で一人追い抜けた分、順位もひとつ上げることができている。ただ、それでも区間順位は14チーム中12位。6区の昨年では最後にかわした広島大クラブに、今度は5秒差でかなわなかったのが悔しい。

チーム順位も一般の部で14チーム中12位(総合で48チーム中40位)。ぎりぎりの部員の中で最下位を脱し、昨年を5分強縮めることができたタイムなら充分な健闘だったのではないかと思う。ここでも10位の福山大学に1分10秒差、11位の広島大学クラブに53秒差というのが残念だった。あと一息だった。

とにかく良かった。満足している。昨年、両足に残った大きなダメージの経験から、翌週の別大への影響がどうしても気になっていたのだけれど、今年は大丈夫。なんとかなりそうだ。今日、走ることができて良かった。レース感覚と自信を取り戻せつつあることの効果の方がうんと大きい。先週の市駅伝を走っておいたのもよかった。休場明けの大相撲力士ではないけれど、百の練習よりひとつの実戦、ひとつの白星。これで来週の別大に向けて、気持ちよく気分を切り替えることができそうだ。皆からも「来週がんばれ」と励まされた。

伝統ある大会に出場できる光栄さが走り終えてから一層身にしみてくる。県庁陸上部というチーム、蛍光イエローのユニフォームにますます愛着を感じるようになったところで、あともうひとつ、頑張ってみようと思う。

チーム:山口県庁
(監督:山本 選手:中村、金子、河本、松井、古林、山田、今関)

  • 4時間45分15秒
  • 一般12位/14チーム
  • 総合40位/48チーム

中国山口駅伝(中国新聞社)



 

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