第51回別府大分毎日マラソン

ライバル

2日(土)、開会式会場ですぐにMさんと会う。昨年9月、和歌山県橋本市で初めて会った時よりも一段と精悍な顔つきになられている。豊富な練習量に裏付けられた、心身ともに充実している感じがうかがえた。

和歌山で彼に会い「次のデフリンピックには一緒に出よう」と言ってもらえどれほど勇気付けられたか。11月、大田原マラソンで2時間40分を切った彼から「別大に出るから、そこで会おう」とメールがあった。それで僕も必死になって防府で出場資格を獲得できた。約束を果たすことができた喜びが何より。

別大特有の風の中を

スタートまでものすごい寒さに凍えていた昨年と違い、今年の天気は穏やかなのだが、でも雨や寒さよりも風の方が走りに及ぼす影響は大きい。競技内にいる限りさほど風はないが、予報では今日、かなり強い風なのだという。

手のひらに書いた各地点の関門時間をみつめる。どんなペースで行けばよいのかわからない初めてのレースだけれど、覚悟を決めてスタート。前半を抑えて走ろうとしたこれ迄のレースと異なり、最初から行けるところまで行かねばならない。

事実、別大というレベルがそうさせた。最初の5kmを17:08というハイスピードで入り、10kmさえ34:27という、自己ベストをも上回るタイムで通過した。しかし、足の痛みと疲労はやはり正直で、10km過ぎで集団から落ちてしまう。この時点で既に、いつものフォームを失ってしまう。バタバタと音を立てるような、重たい走りとなる。足の回転も遅くなった。それでも、20km手前で再び小集団に追いつき、盛り返すことができた。

特に、別大は別府までの前半が強烈な向かい風というせいもあり、一人で走るのは精神的にも肉体的にもつらい。その点、数人でも集団で走れば、苦しさを皆が分かち合えるような気持ちになれる。連られて自分もペースを取り戻すことができた。実生活でもそうだが、あまり、集団についていこうとは思わない自分であるけれど、今回ばかりは集団につくことのメリットを実感させられた。

主人の到来を待ちわびるスペシャル・ドリンク(36km地点)
主人の到来を待ちわびるスペシャル・ドリンク(36km地点)

結局は後半、30km過ぎから撃沈してしまう。完全に足が棒になってしまった。前半、60位代まであった順位も、天地賞のごとくにそのまま引っくり返されてしまう。ちょうど10回目のフルマラソン、一昨年の玉造で味わった死ぬような思いを再度味わわされた。「なりふり構わず」の言葉どおり、「40kmの関門で引っかかたらどんなに惨めなことか」と自分に鞭打ち、「ここまで来たからには何が何でも完走だけは」と奮い立たせた。

ボロボロで完走

数十人が波のように追い抜いてゆく中を半分泣きながらのゴールとなった。ボロボロだったが、無事ゴールできたこと、40分台を切れたことが信じられなかった。1月以降の練習でよいタイムが出せていたから、「あるいは...」と期待もしたけれど、やはり肉体に蓄積した疲労の方が正直だった。タイムよりも完走できたことが、たまらなく嬉しい。

今回は、蓄積していた疲労と、関門を恐れるあまりに飛ばし過ぎた前半のオーバーペースとが敗因であることは、はっきりしている。それでも、向かい風の前半を中間点まで、1:14:55という、昨年3月の全日本実業団ハーフを2分弱上回る、これもベストのタイムで通過し、30kmまでは何とかこのペースで行けたのが大きな自信になった。

ゴールの大分市陸上競技場から大分駅まで、ストレッチも兼ねて歩いた昨年とうって変わり、今年は、橋まででさえ苦痛に顔をよじりながら河川敷を足を引きずった。これまでにない筋肉痛のレベルを超えた筋繊維の断裂症状は、結局、2月中ずっと、みみず腫れのように膨れ上がって残った。この足のむくみの回復にはかなりの時間を要してしまった。

感心させられたこと

15km過ぎに追いついた5人前後の小集団は、折り返しまでの前半、ずっと縦一列を崩さずにいた。つまり、先頭の選手を風よけに利用しての走り。先頭の選手が横に振れれば、後ろもつられて揺れる。ゆらゆらと縦一列の集団が蛇行する様は金魚のフンそのもので、かたくなに一列のラインは維持され続けた。体力を温存する意味では、至極まっとうな走り。こういうとき、2人でも数人でも集団の中で先頭に立つものは入れ替わる。交互に先頭に立つことでお互いを引っ張り合い、痛みを分かち合う。

しかし、この集団は、ずっと同じ配列のままだった。後ろの人間からは誰も先頭に出ようとしなかった。というより、先頭の選手は、後ろに誰がつこうがつくまいが、そんなことはおかまいなしという走りだった。一人で風を受け止めていた。力強く、風に抗して走っていた。折り返してもずっとそうだった。見事だった。

20km過ぎで追いついた僕が試しに、追い越してみても同じだった。彼は僕が並んでも前に出ても、後ろにつこうというそぶりを見せなかった。

この集団の順位はどうなったのだろうと思う。体力を温存できた後続が、後半の向かい風で一気に抜け出たかもしれない。けれども、僕は、あの先頭の選手の潔さ、男気のある走りに心を打たれた。強く印象に残った。この選手の走りには、順位とかタイムとかいう結果よりも、「風が強ければ強いで、どれだけ自分がその中を耐えられるか」という強い意志が感じられた。小さくずる賢く結果を得ようとしない、すがすがしさがあった。誰もが等しく風に苦しむ中で、この選手には「自分の走り」をするだけだという気概があった。


 5k:   17:08      通過 63位
10k:   34:27(17:19) 通過 63位
15k:   52:31(18:04) 通過 80位
20k: 1:10:58(18:27) 通過 84位
25k: 1:29:14(18:06) 通過 76位
30k: 1:47:22(18:08) 通過 68位
35k: 2:07:00(19:38) 通過 64位
40k: 2:29:03(22:03) 通過 98位
FIN: 2:39:47(10:44) 通過 122位

  • 出走者275名 完走者144名
  • 天候:晴れ  北北西の風3.8m  気温11.8度

 

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