トロイ

ブラピ新作

トロイ

この映画のために6ヶ月かけて逞しいボディに変身したという、40歳ブラピの新作。公開初日(の1本目)に観るなんて僕も初めての経験。ブラピの新作を待ちに待った・・・訳ではなく、『シービスケット』を最後にここ3ヶ月、劇場映画館から遠ざかっていた、映画に飢えていたから。

ブラピ主演なら、まあ悪い映画ではなかろうと思い、世間の評判も内容も全く知らないまま、何も考えずに行ったのだが、結果は大満足であった。ブラピ様のかっこよさ・・・は女性ファンの弁に譲るとして、タイトル『トロイ』が示すとおり、この映画は遙か昔の伝説、トロイ(トロイア)戦争を題材としたものである。僕達を3000年前の古代世界に連れて行き、壮大な歴史劇の中で息詰まる興奮をもたらしてくれる。

歴史、想像力、シュリーマン

映画が始まるや、テッサリア、アガメムノン、アルカディア、メッセニア、アキレス、ペレウス、オデッセウス・・・等々の言葉が出てきて、高校時代、世界史と地理を選択した僕は、「おお、その地名、人名だけは知ってる。勉強した記憶があるぞ」と懐かしい思いがよみがえってきた。もちろん、それでなくとも複雑なギリシア世界の章、単語として知っているだけなのであるが・・・。

それでも、好奇心を刺激するには充分であった。ギリシア文明は、ギリシア神話がからんでくるように、どこまでが実証されたもので、どこまでが神話や伝説か、という区分が難しい。けれども、それゆえにこそ魅力的である。想像力をかきたてる。歴史の中でも一番、好奇心をくすぐってくれる時代だ。先にトロイ戦争は伝説と記したが、伝説でなく現実だと証明したのが御存じ、シュリーマンである。シュリーマンはホメロスの叙事詩に記されたこの物語を子どもの頃に読んでからずっと胸に抱き続け、40歳を過ぎてから、見事、トロイアの遺跡を発掘した。

山川出版「世界史」
山川出版「世界史」(1983年)
中央公論社「世界の歴史」
中央公論社「世界の歴史」(1997年)

──と、僕も映画を観終わってから21年前に勉強した教科書を取り出して読んでみた。ボストン・マラソンのときもそうだったけれど、後でもう一度見たくなるのが面白くて、世界史の教科書だけは今も本棚に置いている。実際には教科書では1頁に数百年分の出来事とポイントが凝縮されているので(これでは、理解できようはずもない)、中央公論社の『世界の歴史 5~ギリシアとローマ~』も引っ張り出して、紀元前の時代に思いをはせてみる。

ただ、映画の方は、そんな難しい歴史的背景や事情を知っていなくても、充分、愉しめる。要はアキレス役ブラピの活躍と、男達の勇敢さ、そして恋、である。それでも後から本を読むなど自分なりに勉強してみると、この映画がかなり史実に忠実に作られていることも分かって、再び面白く思える。

叙事詩と映像の力

それから、どうしても学校の授業は勉強のための勉強になってしまいがちである。特に歴史など、教科書の記述がイメージとして浮かべにくく、無味乾燥なものとして通り過ぎるのだが、百聞は一見に如かず、で映像があると面白いように飲み込める。理解できる。

例えば、教科書でいう

ギリシア人も商業がさらにさかんになり、富裕な平民があらわれた。また工業も発達して武具の価格が安くなった。そのため平民でもそれを買えるようになり、かれらの密集戦法による重装歩兵部隊が軍隊の主力となった。

という箇所の「重装歩兵の密集戦術」というのが、試験(受験)勉強においては重要なポイントなのだが、映画でも、兵士の姿が冑、胸当て、すね当て、盾に剣、といういでたちで亀の甲のごとく寄り合って前進するシーンなどがあったり、また、舞台がエーゲ海を隔てたトロイ──ギリシア間の戦争なだけに、軍船もキーとなってくる。この軍船の漕ぎ手というのがやはり、歴史学上、大きなポイントになることなど、映画を観ながら、20年前の、何となく頭に残っていた「記述」と、「映像」とが結び付いて、「そうそう」と観ながら、うなずけたりもしていた。

その他にも、ゼウス、アポロンといったギリシア主要神や、ブラピ演ずる今回主役のアキレスなど、ギリシア神話についてもっと知りたくなる。アキレスの弱点はもちろん・・・、トロイの木馬など、想像力、好奇心を強く刺激してくれる。3時間近くの長い作品であるが、ストーリーがシンプルにできあがっていることもあり、「愛と戦い」という人間の根源的なテーマを観る者の心に突き刺して、退屈さを感じさせない。

『イリアス』、『オデュッセイア』に記されたトロイア戦争の物語は、ヨーロッパ最古の文学という位置づけとなっている。これらホメロスの叙事詩が、紀元前から人間の夢を紡ぎ続けてきた。シュリーマンの情熱に結実したように、この映画を観る僕たちも、眠っていた想像力が呼び覚まされ、かきたてられる。


満足度:★★★
2004年アメリカ
2004/05/22 ワーナー・マイカルシネマズ防府にて鑑賞


 

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