松本清張ドラマスペシャル 砂の器

約30年ぶりの清張

先週土日に放映されたテレビドラマ。録画分を就寝前の一週間かけて見終える。

2夜連続2時間超の大作、名高い原作がもつミステリアスな展開、多彩な登場人物による画面の華やぎ、と、TVドラマとしては飽きさせずに4時間見させるいい出来だった。より映画の方に向く内容であろうけれど、よく頑張って戦後昭和の色を出していた。

松本清張は高校時代に結構、夢中に読んだ。3年にもなると一応、受験勉強で忙しい身のはずであるけれど、「そういうときほど読みたくなる」と当時も自分でよく分かるほどにベッドの枕元に新潮文庫の赤い背表紙が並んでゆく、一つずつ増えてゆく、その小さな文庫の紙面に没頭するのが、今思うと、勉強疲れの癒やしだったのか、あるいは逃避行だったか、奇妙にも愉しいひとときだった。

それだけ好きだった清張作品も大学入学を機にすっかり縁が切れてしまった。新しい環境の生活が始まって希望や明るさやに満ちた時代の空気とはそぐわないところがあったせいだろう、僕には松本清張というと受験勉強とセットになったまま閉じこめられた想い出である。僕も近くに住んでよく出かけた「香椎」には思うこともあったり、その後は清張作品も評価し直され、TVドラマ化や映画化も多くなっていたが、僕の方は30年近く経つ今日まで小説も映画もTVドラマさえ、全く、清張とは遠ざかっていた。

清張の作品には多く農山漁村が舞台になり、貧しい人の、あるいは社会の陰にある人の、事件は解決しても社会のひずみというか闇というかが立ちはだかったままの、やりきれなさの残る、陰鬱な悲しみが滲み出ていた。

砂の器(上巻)改版
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今回のドラマを見て今ひとつもの足りなかったのは「清張はこんなはずじゃない」という思い。肝心のラストに今ひとつ説得力がなかった。あのラストシーンは読者の空想に委ねる小説なら有効でも、TVドラマでは難しい、不可能な場面かもしれない。今度、久しぶりにまた小説を読んでみたくなった。


満足度:★★★
2011年日本
2011/09/10,11 テレビ朝日放映


 

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