それでもボクはやってない

社会派作品

それでもボクはやってない

正月休暇の名作映画鑑賞。

評判通りかつ期待以上に良かった。さすが周防監督というべきか、前作からだいぶ間があっただけの入れ込みの分かる、社会正義という重いテーマを扱って、それでいて見させるすぐれて価値ある内容。

昨日、触れた伊丹十三も細部にまで徹底的にこだわる人だったけれど、周防監督も同じ系列に属する人だと思える。娯楽映画といえど、それでこそ20年30年後にも残る名作をつくれる人。

痴漢冤罪事件には日本の裁判の問題点が詰まっている

前回、見た「半落ち」が人間のドラマを描いていたのに対し、今度のは同じ法廷を舞台に国家の、社会の制度に鋭く踏み込んで問題点をあぶり出している。

実は僕は法学部出身なので、この映画の訴える数々の問題点についてもある程度は知ってはいた(いばれるほどのものではなく、どこまでも表面的に)。

当時の刑事訴訟法でレポートの課題が冤罪事件。学部の勉強で一番、面白かったというと失礼かもしれないが、難解なテキストを読むよりかは「事件」を読み解くのは一番に興味深かった(ただ実際の刑訴、民訴といった訴訟法種目は最も難解な種目)。

とはいえ、それらは免田事件、白鳥事件等、日本法制史上に残る冤罪裁判。一方、今回のような痴漢冤罪は世間の注目を浴びることもない。冤罪を訴えても99.9%が有罪となる、自ら濡れ衣を着て示談で済ませた方が手っ取り早い世界。

裁判官も(最高裁判所裁判官でさえ)自らの保身が働いて一般に冤罪無罪を言い渡さない、司法の独立といいながら国家を敵に回したくないといわれることも知っていたが、この映画でも、まさしくそのとおりに「真実」を究明するのではなく、「無罪」の可能性を潰すことが目的の審理過程、そしてもっともな判決理由を知ることができる。

今後、国民の関心は

今回の映画では冤罪被害者の窮状を訴えることが主題でそれがテーマでなかったのだが、学生時分のレポートで学んだもう一つの対象は、犯罪被害者の立場、感情という側面。すなわち、仮に冤罪が認められると、犯罪被害者は一体、誰を憎めばいいのか。どこにカタルシスを得ることができるのか。

冤罪被害者の救済もさることながら、世間はそれだけを取り上げがちになるが、犯罪被害者の救済も何らかの形で行われる必要がある、忘れてはならないこと。

冤罪事件というのは、第一に事件直後の杜撰な捜査に始まり、弁護士が仕事の割に合わずに避けたがること、検察や裁判官の抱える訴訟が多過ぎて手が回らないこと、法の正義という良心よりも我が身の保身と出世が働く官僚組織・・・。

タイトルがコメディーを想起させるのは、誤解される惜しい面でもあるけれど、意外に重いテーマを扱っていて関心を呼びやすいという意味では親しみやすさもあって功罪半ばするだろうか。

裁判員制度の開始が近付いてきても今ひとつ、国民に関心の起こっていない状況だけれど、実際に始まれば多少はこうした日本の裁判制度の問題点も改善されるのだろうか。

今年見たbest3 には間に合わなかったが、ベストに匹敵する。

満足度:★★★★★
2007年日本
2007/12/29 レンタルDVDにて鑑賞


 

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