「久しぶりにきれいな海ば見た」 大滝さん逝く

遺作は80代名優2人の競演

先日エントリした映画「あなたへ」で、「もういつ最後になるかしれない健さんの・・・」と書いていたら、順番としては先の大滝さんが逝かれた。享年87歳。

先日、2回にわたって放映された「NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」のスペシャル版で、健さんが大滝さん演じる漁師の一言に思わず涙をこぼしてしまったということが紹介されていた。まさに健さんがハンカチで涙をぬぐう姿が、映画とは別に回り続ける(NHKの)カメラによっておさめられていたという幸運。

第192回 高倉健(2012年9月8日放送)| NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

演技としてでなく一人の人間として流した健さんの涙は、おそらく番組の中でも視聴者の心を打った最たるシーンだったろう。

健さんいわく、「大滝さんの口から発せられた何気ないただの一言で、この地で暮らす漁師の生活ぶり、厳しさが伝わってきた」と。

映画を観ていてそこまで思いの回ろうはずのない僕はただ驚くばかり。番組でも説明されていたように、健さんの、常日頃から「感性を磨く」ことを怠らない、大俳優にしてそこまでの細やかな神経。

この涙は、それを知った大滝さんがまた感動して入院先から健さんにお礼が伝わり、2人の間で手紙のやり取りがなされていたという。

NHKの予期せぬ場面の録画は、健さんの意外な一面を見せてくれた。同時に、公開中の作品が遺作となった大滝さんの偉大さをあらためて伝えることになった。何という不思議な運命。大滝さんの気迫と健さんの涙と──。常人にはない強い念力を感じさせられる。

健さんを涙させた一言、「久しぶりにきれいな海ば見た」は大滝さんの映画としての最後の一言にもなった。役者魂を遺した見事な死に方。

2012年10月6日日刊スポーツ
2012年10月6日日刊スポーツ

 

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