ジョゼと虎と魚たち

関西弁、ええなぁ

劇場で上映されていたときから気になっていた、観たかった作品。歩けないジョゼが海を見たかったように、僕ももっと邦画を観たい。DVDディスクでは、邦画にも日本語の字幕キャプションも表示できるようになっている(ただし、全作品でないところがまだ残念なところ)。僕は内容云々よりもまず、日常生活を脱した映画館の暗闇に身を沈めて雰囲気に浸る気分が好きなので、自宅の小さなTVで見るのはあまり好むところでないのだが、ともあれ、こうして邦画を楽しめるようになった、デジタル化の進展で選択の幅が広がったことは素直に喜びたい。

もう一本、韓流ブームで話題の「ラブ・ストーリー」も借りていて、こちらが何とも美しいメルヘン的世界を作り上げていただけに、この「ジョゼ虎」のにじみでてくる生活観が良かった。映画だからといって、世間離れしていない、特別でない、気取っていないところがいい。ジョゼの存在が特殊で、〈普通〉でない、といえば確かにそうなのだが、違和感は決してなく、どこかにありそうな、どこにあってもおかしくない設定になっている。

僕がいうまでもなく、この映画の成功の要因は大阪弁(関西弁)によっているところが大だろう。田辺聖子原作の、気取らない庶民感覚が観客の心をすっととらえる。関西弁ならではの妙味。僕は実際には、この映画の関西弁の声の響き、抑揚、イントネーション・・・といったものを聴覚で感じ取ることはできないが、それでも画面に流れる字幕を、視覚情報の文字を、目で追ってゆくことで充分に味わえた。楽しめた。

「関西弁ええなぁ」と思えてくる。感情をストレートに表出できる。本音が出せる。関西弁にふれた直後だと、僕がこのホームページにこうして書いていることが「何や、ぐだぐだもったいぶって、おもろないなあ」と自分でも思えてくる。

ひるんで逃げたけど

・・・で、ここから、にわか関西弁モード。

障害者を登場させて、憐れみを誘わんで、美談に終わらせんで、ごっうう笑わせてくれて、そんでお笑いだけに終始せんで、映画らしくカラッと仕上げとる。うまいもんやなあ、ホンマ。妻夫木の演技力も見事。順序が逆になったが、TVドラマ「オレンジ・デイズ」の時から、こいつは、さりげない表情がわざとらしくなく自然に出せるところがうまいなあ、と思うてた。これだけやと、あんまり好青年ぶりになってしまうのを打ち消すためなんかどうか、この映画の中では、ちょっとエッチ、ヤりすぎやないんか! とも思えたが。

ラストもハッピーエンドにせんところが映画らしく終わらせたなあ。「何や、結局ひるんで逃げたんかいな」「この意気地なし」「じゃあ、この先、どうな るんや」と思わせるところがにくい。ちょっと好奇心でのぞいてみて最初はおもろかったけど、最初は気にならんかったけど、やっぱり、障害の重さには耐えられそうにない・・・ちゅうのは珍しくない。世の中、そんなケースはごろごろあふれとる。まあ、そんなもんやろうなあ、とうなずける。お婆が「壊れもんは壊れもんにふさわしく」させようとしたのも、善意のやさしさがいつかは消えるなら、深い傷を負う前に遠ざけようとしたことで、それも充分、当然の考えやと思う。

けど、まあ、この映画が見せてくれたように、お互い、傷を負うことになっても、束の間の幸せでも、ないよりかはあった方がええわなあ。やってみらんと分からへん。男と女、恋とか愛とか、この先がどうなるかと考えてやるもんやない。計算して始めるもんやない。「将来が分からんからやっぱ、やめとく」ゆうもんやない。踏み出してみんと何が見えてくるのか分からんし、思い切って踏み込んでみるから、これまで知らんかった楽しさを知る。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ともゆうやろ。それで虎見にいったんちゃうか? 前後の区別がつかんくらい、のめり込む。それができるのも若さの特権やし。

乳母車に乗せられて、こっそり、ひっそり、人目につかんように隠されて出かけてたジョゼが、電動車椅子で一人、周囲にひるまず街を走るようになった、それを障害者の自立とか、もっともな言葉をつけて喜ぶんやなくて、一人の人生を変えてゆくのは、やっぱり、人との出会いでしかないんや、ゆうことを思い出すだけでええんやろ。まあ、「ひるまんで、逃げんで、こらえて踏みとどまってみいや」ちゅうのがあってもいいし、お婆のいうように「壊れもんらしく」ゆうのも、あれはあれで否定し切れん、きれいごとで世の中済ませられん事実のあることも確かで、考え方は人それぞれあってええけどな。

それはええんやけど、ラスト、恒夫が突然、泣き出しての独白のシーン、あれはいらんかったんちゃうか? 気持ちは嘘やなかった、ゆうことを強調したかったんかもしれんが、そんなん、いちいち説明せんでも分かる思うけどな。泣かんでも、恒夫の純粋な、一途な、真っ直ぐな気持ちは十二分に見て取れてた。まあ、でも、若いから大目に見てやったらんとな。


満足度:★★★★
2003年日本
2005/05/13 レンタルDVDで鑑賞


 

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