ずっとあなたを愛してる

孤独と絶望からの再生

ずっとあなたを愛してる
ずっとあなたを愛してる
(C)2008 UGC YM - UGC IMAGES - FRANCE 3 CINEMA - INTEGRAL FILM

前回記したラブ・コメディRTT / Day Off から一転、今度はいかにもフランス映画らしい、シリアスな正当派作品。

千年の祈り のところで書いた、ミュンヘン便機内の復路便で見た1本目というのがこれ。旅を終えた疲れた身の帰国便の中で、2本とも全くそれと知らず、予備知識なく見てみたら大当たりだった。しんみりとした内容が2本続けて心を打った、旅の余韻をさらに深めてくれた映画である。

映画には人は優しいが

15年の刑期を終えて出所した姉の消えぬ絶望。迎え入れる妹の届かぬ思い。姉と妹の関係のみならず、姉妹それぞれの事情やいわくやをからめながら、映画は姉だけでない、姉を触媒として周囲の皆に少しずつ希望の光をみせてゆく。──そんなところだろうか。

2008年作品、アメリカで2009年、日本でも今年初めから単館系で上映されたようで、今度はブログにもレビューがたくさん。ほとんどが絶賛に近い高評価。僕も大いに見入ったし、そのことに異論はないのだが、ただ、思うのは、この映画を多くの人が絶賛するほど、一方で現実の冷たさが際立つということ。

主に映画好き、映画通の人が見て「映画としての」出来映えを誉め上げる。それはただ、ちょっとマイナーな映画を見てレビューする行為がファッションとしてかっこいいかのように。洋画だから、フランス映画だから。

映画はどこまでも「作品として」とても美しい。特にサラ役の妹は美人だ(もし彼女が十人前だったら、それ以下だったら、人はこれほど感情移入できないだろう)。映画は別世界の出来事だから批評も気楽だ。でも、レビューできれいに語られているほど、今の世の中はやさしくない。映画にはやさしいけれど、現実には全くそうでないように思えるのは僕のペシミスティック過ぎる憂いだろうか。

ちょうど僕がこの映画を見た(旅行を終えて帰国した)直後の8月1日の朝日新聞に、ルポにっぽんの特集として出所後の受刑者の現実が解説されていた。出所者が意欲を持っていても必ずしも社会に受け入れられない、社会復帰の容易でなく再犯、再入所の悪循環に陥りやすいという現実。それはこの映画とは逆に、「外」の僕らが心を閉ざしてしまっている、受け入れる気持ちを、行動を持てていないということ。記事が指摘するように、日本で支援システムが整っていないこと(映画では少し垣間見られた)もあるが、刑務所や出所や・・・というだけでアレルギー反応を示す偏見は根強い。

映画としての良さと同時に、僕にはこの映画で示されたような受刑者、また障害者、老人・・・を取り上げる映画が、それが芸術性の高いほど現実と乖離してしまうさみしさを拭いきれない。今もずっと心に引っかかったままだ。それとも、やはり映画は所詮、映画として感動の涙を流して終わる程度のものと捉える方がいいのだろうか。

映画『ずっとあなたを愛してる』公式サイト

満足度:★★★★★
2008年フランス
2010/07/26 ANA ミュンヘン便復路機内にて鑑賞


 

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