アイ・ラヴ・ピース

今度は極めて現実的な映画

Dearフランキー

ろう女優、忍足亜紀子さん3作目の主演映画。『アイ・ラヴ・──シリーズの第3弾となる。

この2週前、字幕付きの『世界の中心で~』にSさんを誘ったのは、職場旅行でマレーシアに出かけたSさんがお土産をくれるというから、ならば旅の土産話ついでに久しぶりに一緒に映画でも、となった次第である。

『世界の──』は僕が期待を上回る感動を得られたのに対し、Sさんには今イチに感じられたらしく、その夜、FAXで、今度は逆にSさんから誘われたのがこの映画である。これもまた、ちょうど僕が香港を訪れた今度はお返しの土産もあったから、また時間を合わせて出かけてみた。

本当のことをいうと、僕はこの映画のことは知っていたが、観てみたいと思うほどの興味はなかった。最近は観たいと思う映画が多かった(ないときは、本当に、困るくらいにないものだ)。デビュー作では山口をも訪れてくれた忍足さんを、夜、居酒屋で囲んで談笑し、記念写真にも収まる幸運を得ておきながら申し訳ないが、第1作の『アイ・ラヴ・ユー』が、あまりにハッピーエンド過ぎて、少し、甘ったるい印象が残っていたせいである。

華やかさはないが

今回のは格段によくなっていた。映画として訴えるべき硬派なメッセージがあった。その分、人によっては面白味が減ってしまったと感じる人も多いだろうと思う。

特に今回は、「聾」や「手話」が前面に出るのではなく、義足(義肢)製作士という役柄を通して、肢体障害という別の障害に視点のおかれていたことが良かった。また、その障害を生み出している、地雷の残るアフガンと、実際の中沢ブレイス株式会社のある島根県という田舎の地の二つが結び付く、意外な組み合わせのストーリーが面白い。

隣の県である、舞台となった島根県のよく知る光景がスクリーンに映し出されたことにも親近感が持て、以前よく中国四国各県を訪れていた懐かしさがよみがえってきた。

また、島根県大田市という田舎にあって全国的、国際的にも評価されている中沢ブレイス(実名は「中村ブレイス(株)」)については、僕もよく経済新聞の記事(これも中国版ゆえ)になるのを見かけていたが、この会社の実際の社屋、製造現場を知ることができたのも新しい発見である。

映画の冒頭、いきなり、この会社の、義肢だけでなく、手や指や乳房や・・・といったリアルな製品が映し出されたのに、まず面食らった。息づいていない肉体とでもいおうか、本来、切り離されては存在しないはずのものが、パーツとして並んでいる様を静かにカメラが追うシーンは、新しい物語の始まる興奮に観客を引きずり込むエンタメ系とはまるで違って、すぐにはその意味するところが理解できない不思議な感覚をもたらす。けれども、この映画のストーリーが進んでゆくうちに、それは、この会社同様に、パーツを欠かすことのできない人が社会には多数、存在し、そして、地味でマイナーであっても、それを支えてゆくのだ、という静かではあるけれど強固な意志を示すメッセージであることが分かってゆく。

甘い恋心の方は、あくまで控えめに織り込まれている。これも相手の男性が、かっこよくてハンサムというのではなく、義肢製作に打ち込む真面目な青年、という設定がいい。


満足度:★★★
2003年日本
2004/06/27 宇部市文化会館にて鑑賞


 

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