アイデンティティを常に模索

香川照之も大ファン

(C) 2007 Good Prayers, LLC
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「千年の祈り」── 3ヶ月以上経つ今も映画のことが忘れられないので、小説に続いて映画の方も追記。

昨年から今年にかけて今、日本で一番、勢いのある役者? 香川照之もウェイン・ワン監督の大ファンとのこと。



『スモーク』から『千年の祈り』へ 香川照之がウェイン・ワン監督を直撃

このページは4者による監督の映画一般にかけての話題が多く、「千年の祈り」はちょっとだけ触れられているくらいなのだけれど、香川氏は冒頭の空港で荷物が出てくるのシーンがとてもお気に入りで繰り返し見たとか。

そういわれると実際、ここも本当に荷物が出てくる「だけ」なのにインパクトの強いシーンでよく覚えている。役者の目の付け所も面白い。

脚本は原作者

原作は表題作を含む十編の短編集で、分量自体は短い。長編をカットして作品にするより、短編を膨らませて映画にする方が観る方には楽しみが多くていいのもあるし、原作より先に映画の方を観てしまったせいかもしれないが、映像の印象がとても強い。

ちょうど1年前、日本での映画公開前のキャンペーンとして監督へのインタビューや対談や、のページが掲載されていたのを今頃にネットで見ている。機内で全く予備知識なく(期待もせず)観た映画だったので、余計に後から知る事情が面白い。

最新映画ナビ: 『千年の祈り』ウェイン・ワン監督インタビュー

映画の方は原作にない部分が結構、多いのだけれど、脚本を原作者のイーユン・リーが手がけていることを初めて知った。

アイディアを彼女と分かちあう事によって原作よりさらに面白いストーリーになると思いお願いしました。彼女に脚本をお願いして一番の収穫は、予測が付かない物語になった事だね

どおりで(原作の短編もいいが)さらに映画が素晴らしいと思えるわけだ。原作にない流れも、取って付けた挿話ではなく、とても自然に原作が膨らんでいる。膨らませたというより最初から陰に隠れていたかのような現れ方。「読まれる」小説と「観られる」映画をそれぞれに上手くさばける原作者ならではの力量だ。

うち、面白いシーンの一つに、家にやって来たモルモン教徒と父の対面シーンがあるのだけれど、これも原作にない部分でイーユン・リーの実体験がベースだとか。かつまた、演じたのが実際の教徒なのだという。役者では決して演技できない雰囲気を出すための、監督のそのこだわりも見事で、知ると益々、映画の良さが納得できる。

ちなみに、ハ・ジンの「自由生活」でも感じさせられた。

葛藤とアイデンティティ

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僕はこのブログでもよく述べているし、前身のホームページの頃から「生きる哲学」なんて云っていたくらいなのだけれど、きこえない自分の生きる葛藤やアイデンティティというのに、とても考えさせられる。それがホームページの頃から今のブログにかけて、ずっと一番のコンセプト。

お気楽なブログに今時、アイデンティティなんて十代の人間が口にするような・・・ということも承知で、でも、名監督もそうなのだと知ってとても安心した。嬉しかった。

僕自身がこの映画のコミュニケーションの苦労(苦痛)や、ことばと母国の関係などに泣けるほどにとても深く感情移入できた、心に染みいったのはやはり、自分のアイデンティティや生きる葛藤や、がシンクロしたから。監督がそういう意図で撮った映画ということ、そして監督の映画にかけるエネルギーになっていることが分かって、一層、作品も監督も好きになれた。

人は自分自身のアイデンティティを常に模索している。本作は正にそんな作品で、そういった作品に仕上がったのは、私もまだアイデンティティを模索しているからなんです。

同じように、先日の東京国際映画祭で自身最後の作品が次点として審査員特別賞となった98歳の新藤兼人監督も一生をかけて「私とは何か」を追求し続けられた方。アイデンティティなんて考える必要がないに越したことはないけれど、暗さや重さや難しさや・・・を正面から見据え続けるのも悪くないこと。


 

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