チルソクの夏

七夕に込める願い

1970年代の山口県下関を舞台に描いた青春映画。山口県では先行上映もされた封切り当時の2年前、字幕上映もあったのだが、都合を合わせられず、観る機会を逸していた。おまけに、この作品はレンタルDVDでも字幕はない。今夏上映の『四日間の奇蹟』や、昨年の話題作『半落ち』等、観たい気持ちは非常に強いのだが、佐々部監督作品にはなぜか字幕がない。この『チルソクの夏』もそうだったが、今回、山口県字幕サークルEラインが作製しての特別上映会に足を運ぶことができた。

陸上競技を通じて知り合った主人公男女は1年後のチルソク(七夕)の夜に再会しようと約束した。若い2人には、会えないで互いを思う1年の、長く苦しくせつないところが、まさに青春なのだが、僕も2年越しにようやく願いをかなえることができた。


豪雨一転、猛暑続きの日々にはせめて花火で涼を得たい、と、この日は花火大会に行く予定であったが、映画の中でも関門海峡に咲く花火を見ることができた。ちなみに、日経新聞によると全国の花火大会は小さなものも含めて500前後というが、県内では、手元にあるフリーペーパーの大会一覧だけでも27個。その中でもこの日23日は集中日。会場近くのふしの夏祭りも含めて県内7カ所で大会が開催されていた。打ち上げられたその数、総勢2万発。もしかして、山口県は相当の花火好き?

1977年、よき時代

「チルソクの夏」
字幕「チルソクの夏」

前置きが長くなったが、評判通りのいい映画だった。高校生男女の初恋、青春を描いて自然に感情移入できる。オーソドックスな展開で共感できる。女の子4人の友情が愉快でさわやかだった。郁子役、水谷妃里の凛とした清々しさが、そのまま、この映画を表しているような、真っ直ぐな映画であった。

1977年という時代設定が絶妙。当時を再現するために、映像にもセピア色、モノクロが多用されていて、ノスタルジックな感情を喚起させる。デートで観る映画が「幸せの黄色いハンカチ」、歌は山口百恵、ピンクレディー、ツイスト、イルカ・・・、TVの中では江夏が投げている・・・と、そこまでやるかというくらいに徹底して背景を固めていた。

この映画の主人公と同年代の、今、40代半ばの人たちには、まさに「我が青春そのもの」と感激し、酔いしれることができるだろう。僕は1977年当時、10歳。主人公らとは7学年下ということになる。学校生活時代の7歳差といったら、もう、大人と子どもくらいの開きがあるのだが、それでも、この時代の懐かしさには充分、共感できる。我が家も当時はまだ、台所(「キッチン」などというハイカラな言葉を知るのはまだ後のこと)も居間も一緒になった狭い部屋での、ちゃぶ台を囲んでの食事だった。

「携帯もメールもない時代」──。もちろん、コンビニもない。学校帰りはお好み焼きか、かき氷か、くらいの、でも、それが最高にうまくて楽しくて愉快なひとときだった。

思うに、この世代は、今からするとかなり気恥ずかしいくらいにストレートな、「くさい!」路線がぎりぎり、通用していた時代だと思う。森田健作からは少し経つものの、「俺たちの旅」の中村雅俊が支持されていた時代(僕も大好きだったりする(*^_^*))。「熱中時代」や「赤い──」シリーズの頃で、割とみんなが同じ方向を向いていた頃だったんじゃないか。僕もこの映画を観ると、もう7年早く生まれても良かったかなぁ、と思えないでもない。今の若い人たち、中高生らは、自分の親の世代に当たるこの映画をどう観ているのだろう?

鮮やかなラスト

難点を挙げれば、「ロミオとジュリエット」的シーンかな。一目惚れは不思議なことでないけれど、郁子とアンの、2人が結ばれてしまう展開が早急すぎる。2人の打ち解ける迄の過程をもう少し、細やかに、いくつかのエピソードを織り交ぜたなら、観ている方も、より、後の展開に気持ちを寄り添えることができたろう。全編、その他がうまく仕上がっているだけに、最初のヤマ場が欠けているようで、ちょっと残念。

それから、音楽の多用。1977年当時の時代を再現するために、手っ取り早いという意味もあったろう。これは僕がきこえない身だから、といってしまえばそれまでだが、音楽に頼り過ぎ、音楽の比重が高過ぎなんじゃないか。「なごり雪」だけで何回、流れたのだろう? 受験勉強中のラジオから、歓迎式典で、4人が泣きながら、ラストで、ハングルバージョンで・・・(この点は次回)。

それはあるにしても、語るべきことの多い、語る内容には事欠かない映画であった。友情出演の山本譲二がはまっていたし、ラストも非常に良かった。初恋と青春を描いて、あのラストはなかなか予想できない、鮮やかなエンディングだった。

最初に記したように、今回の上映は「山口県字幕サークルEライン」の製作した特別字幕による上映会。映画後には、引き続き、意見交換会もなされた。字幕映画に興味を持たれたという参議院議員岸信夫さんも今回、一緒に鑑賞し、意見交換会にも加わっていただいた。その点について、次回に続く。


おまけ

見えにくいかもしれないですが、交換してもらった韓国チームのTシャツ

この映画でも語られているように、当時は無論、1980年代でもまだ、韓国への偏見はあったと思う。それが、この点でも時代は大きく変わり、今や、空前の韓流ブーム。折しも今年は日韓国交正常化40周年。デフリンピック出場記でも述べたように、僕も韓国の選手団らとはすぐに親しくなることができた。政治の世界ではまだ少し、緊張関係も残るけれど、市民レベルではわだかまりなく打ち解けることができる。ただ、残念(?)ながら、韓国の陸上チームは男子選手のみ。この映画のように恋が芽生えるチャンスはなかった。


満足度:★★★★
2003年日本
2005/07/23 山口県聴覚障害者情報センターにて鑑賞


字幕サークルEライン

「名もなく貧しく美しく」でも触れましたが、聴覚障害者向けに字幕製作を行っていただけている団体。ずっと紹介しようと思っていながら、しそびれていました(申し訳ありません)。いつもお世話になっています。

山口県字幕サークルEライン


 

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