アビエイター

豪華でもウトウト・・・

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アカデミー賞最多5部門受賞ということで、期待して行ったのだが、感動や爽快感は今ひとつ。僕は「タイタニック」のときも最初はウトウトしたくらいで、ディカプリオものだから、ではないけれど、3時間もの長編ということもあり、今回も途中、何度か眠ってしまった。退屈、というほどではないが、僕には耳からの刺激が入らないせいもあるのだろう。アクション系で、どんどん引っ張っていってくれないと、簡単に寝てしまう。わざわざ金払って観に来ているのに、と分かってはいても、暗闇の中で心地よい座席に腰を下ろすと、強烈な眠気に誘われる。いい気で映画評みたいなことを書いているが、それよりもまず、映画館では「このまま深い眠りに落ちてしまいたい」という思いと必死で闘っている。

それはさておき、本編は映画と航空業界の制覇を狙った米国の大富豪ハワード・ヒューズを描いたもの。彼のその人生ゆえに、3時間の大作に見合うだけのスケールはある。アカデミー賞衣装部門受賞等だけあって、映画は良くできている。豪華である。

でも、ストーリーが今ひとつ。難解というほどではないが、芯は何なんだ? ということが分からないまま、散漫に流れるように思えた。アカデミー賞ノミネート時から話題になっていたことと、ディカプリオの出演ということしか知らずに全く予備知識ないままに観たのがまずかったか。こと最近の映画を観るなら、おおよそのストーリーがどういったものか、チラシに書かれていることを読むくらいの事前準備は必要なのだろう。

空を翔る夢、ロマン

映画で成功を収めたヒューズが次に狙ったのは航空業界。パンナムとTWAの双方が、アメリカ航空界の覇権を得ようと試みる。上院議員をも巻き込んでの賄賂や裏工作・・・等の果ての公聴会のシーンは一番の見所。迫力あって、ようやくストーリーが少し分かってくる。タイムリーにちょうど今、日本でも、ようやく資本主義の根付くきっかけになったとさえいわれるライブドアの買収劇のことも頭をかすめた。

人間、誰しも、空を飛びたい、飛べれば・・・、との思いはあるはずで、その延長に、才能にも財力にも恵まれた男が、事業欲として「空」の世界を制覇したい、との思いには強く共感できる。金にも名誉にも女にも不自由せず、なお際限ない欲望は、まさに果てしない、無限の空に向かったといえよう。

ただ、それには、大きな組織、人を率いる類い希な人間的魅力、カリスマ性が必要になってこよう。映画を観てゆくうち、どうして無茶苦茶なヒューズのやり方に部下がついてゆけるのか、精神を病んでいることも明らかなヒューズに周囲がついてゆけるのか、疑問に思えていた。けれども、それは、終盤の公聴会での丁々発止のやりとりやラストシーンで納得できる。ヒューズは自らが操縦桿を握って航空機最高速度記録を樹立したように、誰よりも速く飛びたい純粋な気持ちを有している。賄賂だろうが何だろうが自分の金を使うことは大きな喜びだと言い切るヒューズには、真っ直ぐな魂があった。カネが目当てではなく、空のロマンや夢を追っている男だからこその人間的魅力である。これも良し悪しはともかく、コクドグループを率いた堤義明という男もそんな部分があったのかな、と思わせた。

あと、ヒューズは幼少時に煩った病気のせいで難聴だったという。この映画でもそれは何度か説明されている。でも、「耳がきこえにくい」という事実を一応説明しただけにとどまっている。重度ではなかったのだろうが、恋人との会話や食卓を囲んでの団欒時に不自由を感じるくらいなら、軽度の障害であっても内面の苦悩は相当に大きかったはずである。今回はそれが主題でなかったとはいえ、軽く触れられただけなのがとても残念だった。


満足度:★★★★
2005/03/27 ワーナー・マイカル・シネマズ防府にて鑑賞

<余録>
予告編では、GW公開のリチャード・ギア版『Shall we Dance?』の映像が流れた。周防正行監督の日本版が傑作なだけに、最初、リメークされることを知ったときは、大いに関心が持てて「絶対に観に行こう」と思ったのだが、この予告編を観るとがっかり。ストーリー等を勝手に改変できない条件があったのだろうとは思うが、脚本、コマ割り等そっくりそのままで俳優を入れ替えただけ、では、ギアを起用したものであっても何と野暮ったく見えることか。アメリカではそれなりに受けるかもしれないが、やはり、あの映画は草刈民代、役所広司、竹中直人等の絶妙な演技ゆえの傑作であって、日本ならでは──郊外のマイホーム、長い通勤電車、幸せだが平凡な日常・・・をもったしがないサラリーマンの悲哀を浮き彫りにした──の映画だと思う。


 

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