八日目の蝉

角田光代(2007年刊 中央公論新社)

2009/04/24読了、2009/04/24メモ

評判通り

八日目の蝉
八日目の蝉 著者:角田光代
価格:1,680円(税込、送料込)

角田光代という作家の実力の、中でも本作の評価の高いことは知っていて、かねがねいつか読みたいと思っていた、早く文庫本にならないかと待っていた。先週、図書館で借りてようやく念願を果たせた。

前半はやや退屈。どうしてこれがいいのかと疑問に思う。前評判ともう一つの理由がなければ読み止めていた。

しばしのガマンは後半で報われる。最初、桐野夏生のような、次に宮部みゆきを思わせるミステリアスな展開に今度は止められなくなる面白さがちゃんと用意されている。

もう一つの理由

精力的に作品を書き上げている著者であるから、直木賞受賞作「対岸の彼女」他、文庫になっている作品は既に多い。文庫化されると必ず平積みにされる。これまでも幾度となく書店で手にしていたのだけれど、目を通す限り嗜好に合わない気がしていた。

これは単に僕の好みの問題に過ぎないのだけれど、いかにも女性的な、女性に支持されるだろうなという作風が強過ぎるように感じられて躊躇していた。ちなみに本作も──読まれた方はご存じの通り(読んでみれば分かる通り)──、実際に作品中でも語られている、女の園的な世界が登場する。

それでもせめてこの一作だけ、と思っていた理由は、著者が同い年であるから。最初、一つ下かと思っていたらそうでなく、早生まれの僕と同じ3月生まれであった。僕は牡羊座であるけれど、著者は魚座。魚座って芸術的な才能が強い。著者と同じ誕生日の同級生もそうだったな。

と、せっかくなのでもう一回くらい続けてエントリしてみたい。

「だって瀬戸内の海だもん」私は言い、言ってから驚いた。まるで自分ではないだれかが私の口を借りて言った言葉みたいだった。自分ではないだれかは、その一言を合図のようにして話しはじめた。人の話を聞くみたいに私は自分の声を聞いた。

「あのね、千草、瀬戸内の海、すっごい静かなんだよ。ほんと、なんか、鏡みたいなんだ。その鏡にさ、何が映ってると思う? それがね、なあんにも映ってないんだよ。雲も、まわりに浮かぶ島も、不思議なくらいなんにも映ってない。なんにも映んない鏡なの。ただ、しーんと銀色なの。その銀色の上をさ、さらさらさらって撫でるようにして、陽が沈んでいくんよ。ぽこぽこ突き出た島が、ゆっくりとシルエットになっていくんよ」

満足度:★★★★


 

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