笑い三年、泣き三月。

外れ者達の悲喜劇が痛快な傑作長編

笑い三年、泣き三月。

笑い三年、泣き三月。
著者:木内昇
価格:1,728円(税込、送料込)
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戦後の下町を舞台に、ふとしたことから「好きでそうしたわけじゃねぇ」が身を寄せあって暮らすこととなった芸人、孤児、復員兵、踊り子ら── 戦争でもなけりゃ、すれ違いもしねぇ奴ら ──を描いた物語。

戦後の東京を舞台にしているところで作者の連作短編集「茗荷谷の猫」(の特に中盤~後編)に通じるところがあり、また、登場人物それぞれに主役の妙味がたっぷり備わっているという点で「新選組 幕末の青嵐」のような群像劇の面白さもある。それから、これは作者が意図したのかどうか、チャップリンの「キッド」や「ライムライト」を思わせるところもあり。

白米が「一大事」なほど食うに困る一時期にあって、さらに登場人物らはいわゆる全うな人間とは大きく逸れた(外れた)、それぞれに何かが欠けて(失って)いる面々、といってその弱さで憐れみを誘おうとするものではなく、それぞれの意思には見事に真実を言い当てているところがあり、といって真面目な説教物語でもなく、インチキがまかり通る中それぞれに勝手な大嘘をついてもいるが嘘の真実論も展開されて、と、希望や夢やという言葉が素直に口に出せる様な状況で無い中でもしぶとくたくましく生き抜く姿が痛快。

変な紹介だが、例えば入院中のような気の晴れにくい中で読むのに勧めたい本。登場人物らは皆、同情させ泣かせるには簡単な身の上ばかりなのだが、タイトルどおり芸の世界では泣かせるより笑わせる方がずっと難しいという、それを懸命に見出そうとしている姿が爽快で明るい。

この作者には本当にいつもいつも唸らされる。ただのお伽話でない、常に膨大な史料を調べ上げた上での創作。傍流を歩く者に注ぐ作者ならではの視点。

「早く小屋を開けようぜ。これからは笑いよりエロだ、エロ」

「そんなことはなかよ、みっちゃん! 笑いに勝るものはなかっ!」

★★★★★

木内 昇(文春文庫)

2015/06/13読了、2015/06/14メモ


 

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