馬が教えること ゆっくり走るようになれるのも才能

松井今朝子(2012年4月15日付け日経新聞文化面)

2012/04/15読了、2012/04/16メモ

価値観の転換

社会という人との関係性の中で生きてゆく上で、致命的な障害を持つ身には特に今のような仕事面において努力というような範疇を越えてどうしようもない呪縛に苦しみ、また、そもそもが同じ土俵でなければ先例のない未踏のコースを歩んでいるといったことを何度か書いてきた。

まあ、それなりに最近は肩の力も抜けているのだが、昨日の日経新聞文化面コラムで直木賞作家松井今朝子氏の書かれているコラムもその点に通じるものがあって面白かった。

乗馬クラブに入会して氏が知るようになったことに、乗馬クラブに競走馬サラブレッドの子孫が多く、例えばシンボリルドルフの息子やハイセイコーの孫娘がいることがあって驚いた。すなわち子孫を残すことの許される限られたエリートの馬たちでさえ、競走馬として通用しないケースが多い(がゆえに乗馬クラブにやってくる)ということ。

さらにまた、サラブレッドはもともと速く走ることが目的の品種なので、訓練を受けても一般の乗用にはなじめず、競馬界を引退した多くが虚しく命を落としてしまうという。

ゆえに乗馬クラブで競馬界の落ちこぼれのごとく緩慢な動きを見せている馬たちは、実は「ゆっくり走る」ようになれたという才能を持ったエリートなのだ。インストラクターにいい聞かされたことに強く心を打たれたという。

ゆっくり走るようになれるのも才能とは、実に言い得て妙で、あらゆる物事に関しての暗喩ともなる。個人の生き方、組織の運営、さらには社会のあり方にもアナロジーが適用される。

命をつなぐ方法は、何も競走で速く走って勝ち残るのみではないのだ。そうした価値観の転換は人を生きやすくさせるかもしれない。また地球の未来にとっても必要なことではないか、と思ったりする。

満足度:★★★★


 

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