トゥルー・ストーリーズ 2

ポール・オースター/柴田元幸訳(2008年刊 新潮文庫)

2008/03/22読了、2008/03/22メモ

赤いノートブック  The Red Notebook

2008年刊新潮文庫

日本独自編集というエッセイ集。最初に掲げられたのが「嘘のような本当の話」を集めた「赤いノートブック」。お伽話のような、ショートショートのような、13編の面白い話が並んでいる。

村上春樹の『東京奇譚集』の序がまさにそうであったのに触発されて、続けて読んでみた。『東京奇譚集』の5編の物語のうち、最初に登場する「偶然の旅人」の「序」の部分──といっていいような、本文とは直接には関係ない箇所は、きっとこのポール・オースターの作品を意識したのか、念頭にあったか、なのだろう。

偶然と呼んでは片付けられないような事実、奇跡的な確率、不思議な出来事、偶然の一致。

実のところ僕はオカルト的な現象には関心をほとんど持たない人間である。占いに心を惹かれたこともない。・・・超能力についても無関心だ。・・・しかしそれにもかかわらず、少なからざる数の不思議な現象が、僕のささやかな人生のところどころに彩りを添えることになる。

それについて僕は何か積極的な分析をするか? しない。ただそれらの出来事をとりあえずあるがままに受け入れて、あとはごく普通に生きているだけだ。

「東京奇譚集/偶然の旅人」

不思議な出来事、偶然の一致・・・などというのは、誰の人生にも多かれ少なかれあることだ。愉快な話題として、時に奇妙で恐ろしい話題として、世界中の至るところで会話として交わされているだろう。あえて小説家が語らなくても、というくらいに。

もちろん小説家の手によるさばき方、語られ方の見事さにため息をつくと同時に、無尽蔵にあるはずの、けれども語られ尽くせていない「不思議な出来事」、「愉快な偶然」をもっと知りたい。

幸いに今は全世界で誰もがブログを通じて共有できる時代だ。僕自身も春樹がいうように「人生のところどころに彩りを添える」不思議な現象や偶然が大好きな人間だ。「分析」まではしなくても、感動を忘れぬように書き残しておきたいと思う方だ。

誰かのブログを読んでまたそうした偶然が広がり、つながることも多い。ネット(ブログ)の持つ力は、個人のただの日記が、どこかで誰かの偶然や必然に結び付くような、思わぬ可能性の芽をはらんでいるところにもある。

満足度:★★★★

Cの人生はいまや二つの人生になった。バージョンAと、バージョンB。どちらもが彼の物語なのだ。彼はその両方を同時に生きてきたのである。たがいに打ち消し合う二つの真実。自分でも知らないうちに、両者の中間に座礁していたのだ。

なぜ書くか  Why Write?

むぅ・・・。ぐうの音も出ない。

第1章、あるいは第1編(と名付けられてはいないのだけれど)に続き、本章も「嘘のような本当の話」が5編ほど。

つい先ほど「作家でなくとも」なんて不埒な口を叩いた自分を強烈に恥じ入らせてくれる。これは作家でなくては、名手でなくては書けないものだ。まるで第1章からの流れを周到に計算し尽くしているかのように、5編が5編とも唸らせてくれる。

タイトルの「なぜ書くか」の答えは読めば分かる。最後に種明かしが待っている。哲学的な話などでなく、とても笑える、そして同時に「いい話だね」と身に沁みる素敵な答えである。

それとは別に、このタイトルが問うように、僕らも大いに書くべきだと、これも先ほどに重ねて強調したい。著者ほどの見事な腕さばきは無理でも、職業的に対価を得るほどの名文でなくても、人生にしばしば起こる「不思議な話」は自分だけでなく、きっと誰かも少し幸せにするだろうから。

満足度:★★★★★

そういったこと自体は重要ではない。ただ単に、十四歳という年齢がいかに無防備な時期かを強調しておきたいだけである。もう子供ではないが、まだ大人でもなく、これまでの自分と、これからなろうとしている自分とのあいだを揺れ動いている年頃。私自身、自分が大リーグの選手になるチャンスがあると思うくらいまだ幼く、神の存在を疑うくらい大人だった。


・・・・・・


この事実を理解しようと努めながら、もう僕にとって人生は二度と同じに思えないだろうと自分に語りかけたことを覚えている。



 

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