知にして愚

樋口廣太郎(1998年刊 詳伝社)

2007/05/19読了、2007/05/20メモ

夢を持て、心のダイナモを回転させよ

知にして愚
1998年刊詳伝社

住友銀行から転じてアサヒビールを再生させた有名な著者。昭和末期、バブル時代の"ドライ戦争"が懐かしい。

日経「私の履歴書」にも6年前(2001年1月)に登場。「私の履歴書」はその人の半生が興味深いだけでなく、本人がどう自分を語るのか、という点、伝記手法も面白い。生まれてから現在に至るまでを年表的に記す人、また、現在から書き始めて過去に遡る人等々。

年月まではっきりと憶えているのは、氏が最終日、若い人に向けたメッセージの何ともすがすがしく晴れやかだったことが特に印象深くて感銘させられたから。毎日の連載が面白かったのは無論、最後の「締め」方が見事だった。

若い頃は僕もこうしたビジネス書、成功者の語る啓発本の類をよく読んでいたのだが、最近は全く。それでも、週末、ふと古書店で目に入り、元気になれるかなと思い購入。本書はだいぶ以前の1993年のもの。

読まなくなった、興味が別の方向に向いていった、というのは、仕事を通して、組織の中で、どうしても自分には当てはまらないなあ、違うなあ、と感じられて、響くものがなくなっていたせい。言ってることはまさしくそのとおりと理解できるのだけれど、もっと根源的なところ、本質的なところでやっぱり埋められないものがあるなあ、と思うことが少なくないから。

それは「うつ」の人に向かって、「ガンバレ!」「チャレンジ!」「ポジティブ!」、「きっとできる!」と励ますこと、けしかけることが逆効果になるのとも似ているのかな。ポジティブばかりでは疲れてしまう。

知に溺れず、愚であれ

それでも本書の、著者のエネルギッシュな姿勢にだいぶ元気と勇気をもらうことができた。中で、最後、これまでに受けた恩に報いるため、創業100周年にむけての3つの誓いというのが面白かった。

  1. 先人の碑を建て供養する
  2. 身障者の雇用を拡大する
  3. 腰痛治療センターをつくる

瓶の破損、中身の容量不足のチェックなど、相当な根気の要る仕事を身障者がやってくれている、ということ。逆にいうと、エリートがやりたがらない陰の作業。願わくば、やりがいと光とをもっと・・・。

腰痛、は酒販店他、この業界が重い荷物を運ぶゆえ、ということでこれにも感心させられた。

ビジネス云々の話よりも、先人を祀り供養すること、それが精神の支え、心の拠り所になる、というところに一番、共感させられた。僕も自分を省みるに、今、現世の出来事、目前のことばかりに目がゆきがちだけれども、家族や友やのおかげで、ご恩で生かされていること、また、心ならずこの世を去った人の分まで生きていかないといけないと思い直した。

本書の意図とはだいぶそれているかもしれないけれど。

学生時代、著者は改宗した。また少し、逸れるが、「私の履歴書」を読んでいると、政財界トップの人がよく改宗されているのも興味深い。日本人はやや宗教心に薄く、どちらかというとタブー視するところがあるけれど、やはり強い人ほど神仏の力を借りて、心を強くできるのかなと思う。

満足度:★★★★

キリスト教を学んでいるうちに

「神よ、われらに与えたまえ。変えることのできないものを受け入れる冷静さと、変えるべきものについて、それを変える勇気と、この両者を識別することのできる知恵とを」

という感動的な言葉に出会った。

また、私が聖書の中で最も好きな言葉は、

「主に対して愛を、己が悪徳に対して憎しみを、他人に対して熱意を」

というもので、特に「他人に対して熱意を」ということに、自分も努力しようと思った。


 

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