幾千の夜、昨日の月

言葉を交わすことで人と出会うことがあると、十七歳の夏にわたしははじめて知った

延岡行き道中用にと新山口駅キヨスクのわずかな選択肢から「お、これなら」と喜々として選んでみた最新刊。

夜についてのエッセイ、エピソード24編。子どもの頃に夜はなかった、という記憶の冒頭から女子校での毎年の林間学校の夜、学生時代の思い出、また多くは旅先、特に異国の地での夜の追憶がおさめられている。

エッセイなのでいつもの角田作品(小説)の迫力はなく軽くさっと頁も進み、大分発にちりんの佐伯にも行かないほんの一時間足らずで読み終える。

林間学校の話や引越しに感じる孤独な夜、それにラストの携帯電話にからめた編が、エッセイの中でも角田さんの小説に通じるところがある、そのまま小説になりそうな「らしさ」あるなと思えて印象に残るが、全体的には車中の友としてもう少し読み応えを求めたかったので物足りない。持参した鷗外で埋め合わせた(笑)。

角川文庫「女を読む。女が読む。2015」フェアということなので、それで僕にはあまり響かなかったか。ガイドブックによく出るナイトスポットという言葉には一度たりともわくわくさせられたことがない、その言葉に「わくっ」とくるのは男だけでは、などと的確な指摘がなされてるのに笑うしかない。

手が伸びるのは同い年の親近感というのもあるのだが、作中、コンビニに毒された生活でやたらとコンビニ依存の日々だった若いときの話がある。きっと若い頃ほど誰にもそういうところ、そういう時期があると思うが、昼夜逆転生活を送っていた二十代の頃、二種類の青年漫画誌を愛読していた、というのに「お? 何かな」と引かれた。早朝4時に並べられるのを心待ちにしていた毎週月曜発売と木曜発売のもの、とあって「それは『ビッグコミックスピリッツ』と『モーニング』じゃないかな」(笑)と、2誌がとりわけ隆盛を示していた四半期世紀以上前、僕自身も似たようにその日を楽しみにしていた当時が懐かしい。

だからあの、心細い気分は、旅先で味わうしかない。はじめて泊まる宿で、ちいさなナップザックを見て、心細く外の闇を見つめ、そうしてあらためて知るしかない。

角田 光代(角川文庫)

2015/02/07読了、2015/02/07メモ


 

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