スコールの夜

芦崎 笙(日本経済新聞出版社)

2014/04/19読了、2014/04/21メモ

期待外れ

スコールの夜

スコールの夜
著者:芦崎笙
価格:1,620円(税込、送料込)
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メガバンクを舞台に、女性総合職でいて、初の女性管理職に抜擢された東大法学部出身の主人公が苦悩しながらも組織の中で自己実現を目指している、といったストーリー。日経の小説大賞ということで誌面で大きく紹介された選考委員(辻原登、高樹のぶ子、伊集院静)らの評を興味深く読んでいたのだが、内容は今ひとつ。

僕自身は昨今、女性が輝く国づくりとか、役職比率のアップ(ポジティブアクション)とか声高に叫ばれるような、それがなくとも、昭和の拡大成長路線から大きく舵も切っている今のような社会には当然にもっと女性が昇進して管理職になるべきと思う。本書で語られるまでもなく、この話題にはよくついてくるような、女性上司だからといって抵抗があるわけでなく、然るべき能力が認められるなら問題なく望ましい(でもそうでないケースがあるのは男の上司とどこまでも同様)。これは僕自身の職場で実際に思うことで、採用時のデータ以外に確たる判断基準がなく、決まってゆく昇進の、年をとるほど頭も思考も硬くなるオジサン男性より、今のような時代には柔軟性を持ち合わせた女性の方がずっと適職だと思う。

── であるのだが、この作品は期待させたほどにメガバンクという舞台も、キャリア女性の生き方ということも、新味はまるで感じられなかった。ここで描かれているくらいのことは、あえて設定したメガバンクのような立派な企業でなくとも、また、殊更に女性でなくても珍しくはない、どこにでも転がっているような題材だと思う。

ストーリーもいかにも陳腐に漫画的な派閥抗争があったり、リストラの経緯、それにラストも優等生の模範解答のような、どれもがよく安心して使い回されるパターンの連続。

自身も経産省キャリア官僚の作者は、あえて主人公を東大法学部の女性にしたというけれど、それにしては尊敬する上司や気のある年下男性との飲みの場で吐露する悩みが随分と幼稚な会話で、こんなことで東大法学部、メガバンクの抜擢管理職が大丈夫かな、と心配してしまう。作中の年齢は5歳下だが、設定上、僕と同い年になるはずの、20年以上働いていてこれはないだろう、という感じ。

僕自身のことでいうと、聴覚に障害を抱えて組織で(というより社会で)生きる苦悩や困難や、には終わりも限度もなく立ちはだかり遮る壁があるのだが、そんな自分からみると、主人公の悩む内容は、こんなことで? と思うような、子どものような甘えの連続。そんなことで悩めること、また、メガバンクの管理職に昇進できることは何とも幸せな世界だな、と言うほかない内容であった。

その意味では女だから関与できないという話ではないのかもしれない。だが環に言わせれば、女はそもそも選ばれる対象として認識もされていないという点で、男たちよりさらに一段高い壁が立ちはだかっている。何より不満なのは、こうした仲間内による組織支配がルールのない非公然とした形で男たちによって独占されていることであった。そもそもルールがないためルール違反という状態が生じえないというずるい仕組みだ。

満足度:★★


 

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 comment
  1. Hiro より:

    こんばんは。
    厳しいですね。
    羊さん、いつか本出しませんか?
    私、読んでみたいです。

  2. より:

    すみません。公開がうまくされていませんでした。
    本の予定はないです。。。
    ブログで充分に赤面ものですので。

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