雨の降る日曜は幸福について考えよう

橘 玲(2009年幻冬舎文庫)

2011/07/16読了、2011/08/30メモ

幸福な生き方

日経新聞日曜版に連載されたコラムに書き下ろし等が追加された文庫本は「知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語」と改題されたが、タイトルは当初の方が良かった。

「お金持ちになれる──」で有名な(=僕自身は読んでいないが)著者の作品は、人生の目的が利殖にあるわけではないけれど、生きる上でお金の問題を避けては通れないのだから、より意識的に経済基盤の確保に注力するべきというのが共通する大体のところだろうか。

その手段として資産運用のテクニックや不動産、教育、年金、生命保険・・・についての指南が多い。本書ではそれらの根本に当たる制度論や国家のあり方なども論じながら人生を語っている点で、最初のタイトルにあったような少し幸福論的な内容となっている。

確かに特に今の現役層以下──若ければ若いほど──は将来を含めてよりシビアにお金のことを考えざるを得ない。そして実際に今の若い人は、社会人になった後の一番のお金の使い道が「貯金」で、主な目的は「結婚資金」という(=つい昨日のニュース)、そのためのインデックス投資や海外投資等々、とてもしっかりと堅実な経済感覚を持っている。

それも間違いでなかろう一方で、でも僕がこの本を読んで思ったのは、本書に語られているような長い住宅ローンを抱えてマイホームを持ち、当たらぬ宝くじに資金を注ぎ、不必要な生命保険を人並みにかけ(たのに保険金は請求せず)、資産運用は定期預金以外の存在を知らない・・・のある意味、市場経済のいいカモにされた自分の親の方がそれでもずっと幸せだということ。生きた時代が良かった、といえばそうだが。

卑近な例ながら、父も母も経済観念がほとんどない。著者橘氏のテーマの多くになるような、ソンをしない、トクする生き方とは正反対の、子ども心にも平気で損ばかりしているような人間。ついでにいうと妻の両親も特に母親の方がよく似ているとは最初から気付いていたが、後に、父親の方も、ともに当たらぬ賭けに一所懸命になっている点なども似ていることに気付かされた。家庭環境をつくる両親の経済観念が似ていたから自分達も案外、合っているのだろう。

幸せについて考えるのは難しくも面白い。

人は誰も幸福に生きたいと願う。だが幸福を定義するのは思いのほか難しい。


自由や富が幸福な人生を約束するわけではない。それは未知の世界を旅する通行証のようなものではないだろうか。

満足度:★★★

幸福度指標

そういえば、同じく今日のニュースで「幸福度指標」の試案を内閣府が公表したという。国内総生産(GDP)と異なる尺度で、経済成長だけでは表現しきれない豊かさを測るという。ちなみにGDPの地域版をつくるというのが僕の長く携わっている仕事であり(長くても必ずしも通じている訳ではないが・・・)、先日、関心を持ってエントリした「子どもの貧困」も考慮されるという。

「幸福度」 子供の貧困率など指標に 内閣府試案 - SankeiBiz(サンケイビズ)


 

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