レインツリーの国

有川 浩(2009年新潮文庫)

2011/09/07読了、2011/09/08メモ

青春菌満載

5年前の刊行当時からこの方面の世界では有名だった話題作を今頃になってやっと手に取る。評判に違わず見事な出来映えだった。著者の作品も僕には初めて。

難聴の女の子を主人公に、聴覚障害というと、とかく手話に焦点をあてた、かつ、ともすれば現実とはまるで違う荒唐無稽な内容になりがちだったこれまでのTVドラマなどと違い、手話とは少し距離を置いた、難聴という、白でも黒でもない、幅広いグレーゾーンの説明のしにくさ、理解のされにくさ、それゆえに小説や映画や、のテーマには向きにくい対象に真面目に向かい合ってくれた作者にまずは敬意を表したい。

「障害ものはウザイ」という人にはどこまでも面白くないだろうし、どうしても障害についての説明を避けて通れない(=「見えない」がゆえの理解の難しさが大きな特性だから)ゆえ、くどくなりがちなところもあるけれど、設定や展開はとても自然な物語になってくれている。

僕自身も軽度~中度~重度~失聴~全聾という過程を経てきた、経験がないのは健聴のところだけ(笑)である身なので、いずれの段階の難聴者の思いもよく分かる、自分自身のこととしても主人公の彼女の思いに深く共感し、また、なんだかんだと僕もそうした女の子の多くを知ってきたので、もちろん、難聴に対して男には男の悩みや不安もあるのだけれど、性差も大きいだろう女の子特有の思いに途中、涙しつつ、自分の若かりし頃も思い出されていた。

そうだよね、障害を持っているとはいっても、それが全てではない。障害があっても普通に恋はする。でもしかし、そこにはやはり「普通」にはゆかない壁の数々。特に聴覚の場合──

いや、しかしともに二十代半ばの男女二人の、青春菌さらけ出しのぶつかりあいが気恥ずかしくもすがすがしい。

5年遅れで、もうとっくにサイト上では御用済みとは思うけれど、細部に突っ込むなよ、と思いつつも、せっかくの好材料なので、僕ももうちょっと書いてみたい。恋の始まるメールがくることは期待してない、というか、このサイトには今はアドレスを載せてない、この機に載せよう・・・。


 

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