老いてこそ人生

石原慎太郎(2003年刊 幻冬舎文庫)

2010/01/16読了、2010/04/12メモ

肉体の郷愁

老いてこそ人生 (幻冬舎文庫) (文庫)
老いてこそ人生

2001年頃、雑誌『PRESIDENT』に「肉体の哲学」として連載されていたエッセイ。振り返るに当時はよくまあ大仰なタイトルのビジネス誌を読んでいたものだ。雑誌そのものの指向にはついてゆけなかったが、この連載の方は非常に印象強く、その後も時々、当時のメモを思い出していた。

昨年末からの坐骨神経痛治療の合間用に、また突然、思い出すように読み返したくなって文庫で購入。

都知事として年中、今また新党の立ち上げ指南役として注目される石原氏も毀誉褒貶相半ばする代表的人物だろう。僕自身も十年以上前は抵抗感、反発心が強かったが、どういう変化か、これも自分が年をとったせいか、今はその氏独特の文体や主張や、に好んで身を委ねている。

その物騒な物言いの内容は支持しきれないが、やはり氏でしか云いようのない事柄があるのは事実であり、また同時期の著書「わが人生の時の人々」にもあるようにとことん特権階級ぶりをひけらかすような強すぎる主張の高慢さに反感も引き起こすが、こういう人物も一人二人いないと、という気にさせる。

それだけの強い物言いのできる裏打ちされた経験や、氏の肉体、身体に対する強い意識、それはとりもなおさず氏の人生観であり、がまさに氏らしい自由闊達な筆致で存分に語り尽くされている。人生の後半を走り始めた自分にとって非常に教えられることも大きく、また氏のような特権的階級という言い方も変だが、そうでなければ経験できない(と本人も常々、言い切ることの多い)世界を見せてくれて興味が尽きない。

女性や高齢者や障害者や・・・には余計に不人気な著者であるけれど、本書中の病や怪我や老いや・・・への対処、心の持ち方などを読むと、それは自分にとっては他ならぬ障害との付き合いであり関わりであり、それらが人生を起伏に満ち、彩りの濃いものとしてくれるのだと励みにもさせてくれる。

今回、9年ぶりに再読した形になった、当時と今とでまた印象が違ったように、きっと5年後、10年後にまた手に取っていそうに思う。

かつての花形も年をとればただの人というケースも多いが、彼(稲尾和久)の場合はかつての栄光、そのための精神的、肉体的なさまざまな刻苦がこの男をここまで成熟させたのだなあ、と改めて感心し共感もさせられたものだった。第一、私とほぼ同年のかつての名選手が体重も増え白髪も目立ち、眉などすっかり薄くなり垂れ下がって見えるが、しかしその年齢に応じた成熟を遂げて、野球以外の局面でも人の心を捉える魅力を育み培っているのにしみじみ心を打たれたものでした。


彼の場合なぞ鍛えられた強い肉体が、当人の後年の人生に何をもたらしてくれたかのいい例だと思う。


若い頃強い、素晴らしい肉体を誇ったことのある人間ほど、後年それが肉体として凋落していった時往時を振り返り、かつて素晴らしかった肉体への郷愁に襲われるものでしょう。それはいかにも人間的なことだが、しかしそれにかまけていてはどうなるものでもありはしない。それに代わる何か別の主題を人生の中でみつけていかぬ限り、誰も時間のもたらす老いに勝てるものではない。

満足度:★★★★★


 

  Related Entries


 comment
  1. あっき~☆ より:

    お疲れ様☆
    今度読んで見るよ^^

  2. より:

    異動先はどう?
    石原氏のよくいう、余人にうかがいしれない世界が記されていて興味深く、読みがいはあると思うよ(^^)

Message

メールアドレスが公開されることはありません。