野村ノート

野村克也(2009年刊 小学館文庫)

2010/01/25読了、2010/04/10メモ

人間学、人生論

野村ノート (小学館文庫) (文庫)
野村ノート

年始から読んだ本を数冊、そのままにしているので簡単にメモ。

1月、坐骨神経痛治療の通院で電車に乗っていたとき、治療を受けていたときに読んでいた本。野球を通してのリーダー論、組織論、人材育成論。どんな選手が成長していったか、実例を挙げられるのがたくさんの選手を見てきた監督ならではの利点で、非常に興味深く読める。

僕の記憶にある野村監督は南海時代のプレーイングマネージャー(選手兼監督)の頃のことで、当時は今ほどに好意的に世間に受け入れられていなかったと思う。何かというと王、長嶋へのライバル心を剥き出しにして、というより、明るいヒーローの2人に対比して自らを「月見草」と名乗る、ひがみ根性ぶりだけが際立っているようにみえた。

ヤクルト監督時代もまだそうだったけれど、その後の阪神監督のあたりから年をとったことや監督業として王、長嶋両氏に勝る実績を挙げたことからの余裕か、何となしに力や意地が抜けてきた。楽天ではもう完全にいいおじいちゃん、好々爺ぶりを見せてくれて好感度も大きく上がってきた。すっかり人が変わったかと思うくらいにユーモアをもったぼやきが楽しかっただけに、解任されたときはオーナーの無神経、野暮さにがっかりした。

そういう意味では本書の内容とは全く無関係で著者の狙いにもそぐわないだろうけれど、人間、年をとっても変われるのだ、というのが僕の一番の感想である。

かつてのヤクルトの教え子、古田や石井が年賀状をよこさない、挨拶しに来ない、特に古田のように超一流の選手になった者ほど「全身全霊の力を込めて育ててやったのに・・・」という恨みがましさを本の上でネチネチと攻撃しているところに教師や監督や、といった立場の人間ほど恩を着せたがる弊害が出ているところもあったり、また、「○○の選手はこうだ」と決め付けている点など、それは野村監督に比べれば選手としても監督としても引けを取ろうけれど、その選手とて自らの生き方を貫いた(貫いている)わけで、すべてを野村監督の基準で断罪するのはどうかと思う、ファンが読むとちょっとがっかりするだろう、素直に肯定できない点もある。

まあそれはあるにせよ、本書に書かれている選手の成長もさることながら、監督自身が ──意識した、意図したわけでは決してないと思うが── 一番に変わっている、いい大人として大きく成長していることが本書に説得力を持たせている、とみるのは変な見方だろうか。

もちろん、それは監督の冷静な観察力、豊富な読書量、そして多くの著作を出しているように書く力、表現力を選手時代からずっと努力し続けているからに他ならないのだろう。

満足度:★★★★


 

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