繰り返される人生論

姜尚中(2008年刊 集英社新書)

2008/07/26 読了、2008/07/27メモ


2008年集英社新書

内容自体は特に目新しいことが書かれているものでもなく、平易な文体ゆえ1時間もあればさっと読み切れるはず。それでも考えさせられることは多く、章ごとに立ち止まって記したこのメモも2ヶ月にわたり計6回に及んだ。


新潮文庫

章ごとのテーマが愛、青春、労働、死・・・とよくある人生論的な展開。古くには三木清の「人生論ノート」(や「読書と人生」)の類がある、それらを好んでいた20年前も思い出した。発行から2ヶ月で20万部と本書も非常な売れゆきのようで、生きにくさが話題になる世相を反映しているようだ。


かいつまんでいえば、悩むことを肯定してよいというのが本書の主旨。悩んでいる人に対し、

  • くよくよ悩むなよ
  • めそめそするな
  • 悲観的に考えちゃダメだ
  • 何でもポジティブにとらえなきゃ

というのが一般には良しとされる世の中、でも考えてみれば成長しよう、向上しよう、よりよい状態であろうと真面目に考えていて、それがうまくできずに逡巡している状態の人に「悩むな」の一言で片付けるのも無責任なアドバイスである。振り返ってみると自分も無責任なアドバイスをたくさんしてきた・・・(反省)。

例えば同じような境遇(悲境)にあって、別の誰かは悩んでなどいない、「○○さんを見習って」という他者の例を持ち出すことが多いけれど、それもよくよく問い詰めてみると単に目の前の現実的トラブルから目をそらしている、回避しているだけで本質は何も解決していないというケースが多い。

もちろん、悩まないで明るく、晴れやかな気分で人生を送れることが望ましいのは論を待たないけれど、真面目に考えて壁にぶつかることは必ずあるもので、時には逃げることも有効だけれど、いつも回避してばかりではうまい逃げ癖だけが身に付いてしまう。

悩みを抱えながら外には明るく、決して心の内にかき消すのでなく、成長の肥やしとして消化する、仮に消化できなくてもその努力は放棄しない、というのが理想かな。

一ヶ月分の朝日新聞をまとめて読んでいたら、先月末の読書欄に著者が登場していた。「たいせつな本」として漱石の「こころ」を挙げている。夏になると読みたくなる本。最近では2年前、わずか2年でも今読めばまた感慨も大きく違ってきそうだ。

悩むこと大いにけっこうで、確信できるまで大いに悩んだらいい。中途半端にしないで、まじめに悩み抜く。そこに、その人なりの何らかの解答があると私は信じている。

満足度:★★★★


 

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