憑依・木乃伊・文字禍

中島 敦(2008年刊 ちくま日本文学012)

2009/04/04一部読了、2009/04/04メモ

ほろびない日本語

2008年刊講談社

時々、漱石や鴎外や中島敦の文語体に近い小説、漢学、漢語を存分に駆使した文体が無性に読みたくなる。身体が欲する。水村早苗の「日本語が亡びるとき」の話題もきいていたから余計に。

中島敦というと「山月記」と「李陵」にとどめを刺す、加えるならそれに「弟子」「名人伝」。最初の二作で近代文学の最高峰として充分すぎるのだけれど、書店で見かけた本書が他の作品も併録しているのに興味を惹かれて買ってみた。

先の四作がいずれも中国の古典に題材をとっているのに対し、この3作はギリシャ、ペルシャといった西洋古典をふんでいるところが初めて知る意外さでもあったのだけれど、ラテン語、ギリシャ語や西洋の歴史といった方面の勉強も熱心だったらしい。

漱石の英語、鴎外のドイツ語がそうなように、やはりバイリンガル、マルチリンガルであればこその日本語の巧さだなと納得する。

本書の最大の価値?は池澤夏樹による解説。

ゆるぎなく美しい文章で知的に構築された中島敦の小説はめったなことでは摩滅しないし、錆びもしない。

世界に向かって開かれていて風とおしがいい。『文字禍』はボルヘスが書いてもおかしくない作品だと先に書いたのは、この二人が共に知識と知性に依る作家だからである。彼らは国境を超えて一つの知的な共和国に属する。そういう理由からぼくは中島敦を高く評価し、愛読し、範ともするのだ。

今回、挙げた3編は正直、面白味には欠けるのだけれど、他の収録作品を楽しみにしたい。

満足度:★★★


 

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 comment
  1. あっき~☆ より:

    羊さんはやはり凄いねっ☆
    ↑読んだことない・・・
    羊の本棚を参考にしてるので(笑)、呼んでみようかなぁ
    でも今はそんな余裕ないけど・・・

  2. より:

    今回は単にあげているだけで、オススメというほどではないよ。
    本や映画は個人の嗜好が大きいので、あまり人にはすすめにくいのだけれど、
    例えば中島敦なら僕はやはり「李陵」が一番だね。
    1李陵、2山月記、3弟子、4名人伝といったところかな。
    たいていは1冊に四作とも含まれているしね。
    「李陵」と「山月記」はこれからも時に読みたいと思っています。

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