「因果倶時」身を引き締め

鳥羽博道(2009年2月 日経新聞文化面)

2009/02/28読了、2009/03/04メモ

夢とロマン、忘れずに

鳥羽版「私の履歴書」メモ、ラスト。

久しぶりに胸を打たれたのは、「熱さ」、「人情」、「夢」、「ロマン」・・・といった最近、大言されることのないモードが連載中ずっとストレートに表出されていたから。

ともすれば昨今の風潮は、熱くならず、クールで、抑制が利いていて、うまく空気を読んで、要領よく、最小限の労力で最大の利益を得るべく最良効率を探して・・・といったもの。資格を取ったり利殖を指南したり自分を高めるためのハウツー、ノウハウ、スキル論といったビジネス本の類ばかりが幅を効かせている中で、後回しにされている──という以上に排除されている感さえある──道徳的な視点、倫理観についての強いメッセージが連載の根底を終始、流れていた。

実篤がつくった理想郷に打たれて氏も理想高い会社を目指したことや、「人の不幸を作らない」といったスケールの大きさや。世知辛い世の中、不況の時世、考えが社会全体よりも個人に、外向きでなく内に内に、と縮ぢこまってゆきがちな中、夢やロマンを忘れず、強い信念で理想の会社、幸せに住める社会の実現に向かい合ってゆく姿が新鮮だった。

同様にずっと以前の「履歴書」シリーズで今なお強く印象に残っているヤマトの小倉昌男氏の著作も「経営はロマンだ」であり、障害者雇用の改善と福祉の現場に第二の人生を捧げた。

自分の、でなく、他人の、社会の幸せをも考えてゆける、思いをはせられる余裕と度量が個人にも大事だね。

好きな言葉を自席に飾る
好きな言葉を自席に飾る

数多の言葉の中で、一つ座右の銘を挙げるなら「因果倶時」になる。原因と結果というものは必ず一致するという釈迦の言葉だ。現在の果を知らんと欲すれば過去の因を見よ、未来の果を知らんと欲すれば現在の因を見よ。この言葉を知った時、身の引き締まる思いがした。現在の自分は過去の積み重ねの中にあり、将来の自分がどのようになるかと考えながら、一日一日の積み重ねの中に将来の自分がある、と理解した。


人生の真理をこれほど厳しく、短く突いている言葉は無い。この言葉を知った時、恐ろしい思いがし、一日一日を真剣に生きよう、いや一日どころか一分一秒もおろそかにできない、と息の詰まる思いがした。私はこの言葉を忘れないよう紙に「因果倶時」と書き、会社の机の横に貼り、出社する度に「今日一日が将来につながるのだ」と自分に言い聞かせ、仕事に打ち込んできた。


2009/02/26 第25回



 

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