森に眠る魚

角田光代(2008年刊双葉社)

2010/04/23読了、2010/05/29メモ

ママ友たちの戦場

森に眠る魚
森に眠る魚

角田光代の作品は代表作「八日目の蝉」を読んだだけで、もう読むこともないだろうと思っていたが、vogelさんのところの紹介に興味を引かれて先月、図書館で借りる。読み始めると、うわ、これは面白い。すぐに引き込まれる。普段、平日にはあまり本を読むことのない僕が時間を惜しむように寝る前のひとときを利用して読み継いだ。

ふとしたきっかけで知り合った5人の母親だが、我が子達の小学校受験を機にママ友たちのバトルが繰り広げられてゆく。これがまたミステリアスでサスペンスで、血の気の引くような展開まで用意されていて恐ろしい。でも面白い。2年前の推理月刊誌に1年間、連載されていたようで、当時、次号を一ヶ月待たされるのはかなり辛かったんじゃないかな。衝撃が大きかったのでAmazonマーケットプレイスで購入し直した。

疑心暗鬼の探り合い

人が最初、知り合う、親しくなるのは相手への好意や尊敬や期待や・・・を持って近付くが、5人も最初はそれがうまく、AはBを、BはCを・・・と滑らかに回転していた。ところが、些細なことから軋みを見せると今度は嫉妬や猜疑心や反感や・・・が恐ろしい勢いで歯車を逆方向に回らせる。そしてまた人間のエネルギーはえてしてその負の執念や憎悪の方がとても強くて、いったん火がつくと容易に断ち切れない。

そうした女の微細な感情の揺れから、激しい嫉妬や泥沼のような嫌悪感や醜さやを見せつける、残さず書き切ってしまう、5人の女の心理を見事に同時に書き分ける作者の筆力にただただ脱帽。やっぱりこの人、売れる、次々と物語を紡ぎ続けられる能力のある人だな、と二作目にして深く納得させられた。

しかしまあ、買い直してはみたが、再読しようという気は起こりそうにない。いつか感動を懐かしむ、という類のものでもない。二度とは通過しないが、一度見た衝撃がすごかった、忘れられない、という作品になるだろうか。

満足度:★★★★★


 

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